静嘉堂文庫美術館「漆工名品展」17
これは『源氏物語』の中核をなす重要なストーリーですが、恋愛の陰翳、有り体にいえば恋の苦しみをモチーフにしています。僕は永六輔・中村八大・水原弘による名曲「黒い花びら」の一節「俺は知ってる 恋の悲しさ 恋の苦しさ だからだからもう恋なんか したくない したくないのさ~~」を思い出さずにはいられません!? つまり「羯鼓催花・紅葉賀密陀絵屏風」は、恋愛の光と影を対照的に描いていることになります。もっとも、楊貴妃は玄宗が子の寿王が愛していた寵妃を奪い取ったものですから、羯鼓催花にも恋愛の陰翳が感じられないわけではないのですが……。 いずれにせよ、この密陀絵屏風のような大作を制作させたのは、当然のことながら、高位貴顕、もしくは経済的に恵まれた家柄の当主であったと思われます。その周辺における和漢の教養にあふれた学者や趣味人の存在がなければ、上に述べたような洗練をきわめる構成は決して生まれなかったでしょう。 *ずっと「漆工名品展」と書いてきましたが、正しくは「漆芸名品展」でした。自分がつとめる美術館の特別展名を間違えるなんて……。「立ち上がり目的忘れまた座る」という名川柳以上に、ボケが進んでいるようです!?