カテゴリ:読書
タイトルが『小林一三の知的冒険』となっているとおり、ここでクローズアップされるのは、小説家としての一三、俳人としての蝶左(一三の俳号)、多くの知識人や画家と交流する文化人としての逸翁です。当然、伊井さんは『曽根崎艶話』の紹介と分析に一章を割いています。 すでにアップしたように、昭和23年再刊された『曽根崎艶話』には逸翁の序文があって、それによると、大正5年に出た初版は、風俗壊乱として告発され、即席裁判で罰金刑に処せられたので絶版にしたそうです。 僕が読んだのは再刊本ですが、どこを読んでも特にエロティックな表現は見つからないので、中嶋光一の解説にしたがって、「イ菱大尽」がほとんど実名小説であったために、このような問題が起こったのだろうと想像しました。 ところが伊井さんによると、逸翁の『日記』昭和21年5月3日の条に、次のように書かれているのです。
この「紅梅の蕾」は、かつて風情壊乱で即席裁判罰金をとられた問題の小説であるが、今、再読して見るとその風俗壊乱と目せられた部分は欠落になっているから現在記憶はないが、二、三行位で、なんでも乳房をいじって、一寸口づけて「まるで紅梅の蕾だとつぶやいた」というような文句だと思う。
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最終更新日
2016.08.31 07:24:06
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