カテゴリ:美術
これが二行書きだったらどうでしょうか。行きつ戻りつしなければ、とても理解できるものではありません。行きつ戻りつしているうちに、何が何だか分からなくなってしまうでしょう。 もちろん王朝貴族は、二行書きでも瞬時に理解したことでしょう。しかし散し書きの方が、視覚的に、あるいは直感的に楽しむことができたにちがいありません。そして何よりも、それは漢詩の謹直な縦書きの伝統に比べて、美しく、やさしく、やわらかく、王朝貴族の美意識にかなう書法でした。 漢字の模倣から始まった我が国の書芸が、日本独自とも誇れる書の地平がここに拓かれたのです。それはやまとうたの完成でもありました。 しかしそれは、あまりにも可憐な花でした。やがてその花が造花になり、飾られ、因習的な型となりそうになったとき、また新しいムーブメントが起こったことをも、この特別展は教えてくれるのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.01.04 09:39:17
[美術] カテゴリの最新記事
|