西部劇とグレート・ギャッツビー オールド・ヴァイン・ジンファンデル 2003 セゲシオ カリフォルニア・ソノマ郡 2007/4/22
透きとおった濃い紫、ミルキーな黒色果実のアロマ、スパイシーで活力のあるブーケ、そしてまるであの2003年のオート・コート・ド・ボーヌのようなジュース感たっぷりの黒色果実の風味、しかしこの液体の醍醐味は、中盤からの口の中がひりひりするようなアルコール感と、まるでバーボン(ワイルド・ターキー)でもあおったかのような後味。 一瞬にして、西部劇のほこりっぽい酒場にタイムスリップした気分。 アルコール度数も15.3%とワインの発酵ではほとんど限界の高さ。 「凝縮した果実味」とはいってもボルドーのような緻密さはなく、やっぱりアメリカン。 以前飲んだケンウッドは、南北戦争くらいの北部の白い邸宅風なエレガンスがあったが、これは、まさに西部劇。ボルドーやブルゴーニュのように、ちびちび、勿体ぶって飲むというよりは、荒くれ男が一気にガブ飲みすると様になりそうなそんなスタイル。 時間が経ち、ボトルの液面が下がってくると、アルコールの刺激と後味のバーボン感は変わらないものの風味がこなれてきたせいか、西部劇の酒場の雰囲気は消えたとはいえ、なにか翳りが。 その翳りは、どことなく20世紀初頭のアメリカの小説『グレート・ギャッツビー(華麗なるギャッツビー)』(フィツジェラルド)が秘めているあの暗さ。恐慌をシステムを正常に維持するための一過程として抱え込んでいる資本主義世界が本質的に内包せざるをえない、そしてその社会で成功したものがつねに抱え込まなければならない、あの暗さと不安。 **** 村上春樹訳のが06/11に発行されてるようだが、僕が読んだのは別の訳者の文庫本だった。タイトルも『華麗なるギャッツビー』。映画も見たけど、なかなかよかった。切ない物語。 村上春樹は『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を最後に読まなくなった。初期の三部作(風・ピンボール・羊)、今の僕からすると文章がギザすぎて、顔から火が出るほど恥ずかしい^_^; 大学の頃、ハルキの初版本をすべて集めるといっていた友人がいたが、今頃どこで何をやっているだろう・・・? ほんとにすべて集めたんだろうか? ハルキの作品の売れ具合が「資本主義化した社会の指標」といった評論家(誰か忘れた~、評論家さん、ごめん)がいたが、僕もその通りという気がする。だから、逆に『ハードボイルド』以降、興味を無くした。また、『ハードボイルド』までで作家としての資質と可能性のすべてが示されているような気もした。