【無冠の帝王】辻　雲仙画伯の作品紹介(祖父の紹介と独り言)

辻　雲仙(善富)　プロフィール

辻　雲仙は、父武一郎・母らくの長男として、明治20年11月1日大藤村に生まれた。
本名　辻　善富(つじ　よしとみ)。幼少の頃から画を好み、技術を磨いたと思われる練習画帳にはあらゆる分野のスケッチが描かれている。
そこには、童人とは思えないほどの技量で描かれている作品が多くみられ、非凡さを伺いしうる事ができる。
尋常小学校を卒業後、十代半ばで本格的に画の勉強をすべく上京。
都会での生活は苦しく、路上に描いた絵などにより、僅かな収入を得ていたとも言われている。
また、養蚕の収入の中から精一杯の仕送りを続けた母らくの努力も、忘れてはならない親子愛として胸熱く伝えられている。
明治40年頃(20歳)、生家の事情により、通っていた東京の美術学校(東京芸術大学前身)をやめて帰郷。その後、十年以上主として家業の農業に従事しており、この間の作品は極めて少ししか残されていない。
大正12年(36歳)から恵林寺のほうがく老師【元鎌倉円覚寺館長】と交友を深め、同寺に逗留し、創作三昧の生活を送った。
この間に、傑出した作品群となった「観音図百体」を描いている。
この「観音図百体」の讃は、全て同老師によるものであり、親交の深さが伺えると共に画に趣を添えている。
画の師匠は、甲州市勝沼町岩崎の上野一雲と言われており、雅号にそのつながりを見ることができる。
当時の峡東地方の文化人の一員として活躍する傍ら、昭和4年(42歳)には大藤村の三枝富重村長の下、助役を歴任、さらに昭和15年頃(53歳)には、三か村恩賜林組合長を務め、治山治水対策にも貢献した。
画の才能は、周囲が早くから認めていた所だが、書についても多くの秀作をのこしている。
独学で漢文等の習得に努め、華道教師の資格をも取得し、山梨里仁中学校の教授の経験を持つ、(明治40年から在職18年の久しきに亘り地方農村の中堅人を養成した)
全ての事に対して日々努力の人との人物評が口伝されている。
晩年になってからも、画力は衰えることなく、活発な創作活動を行っていたが、昭和39年3月29日脳溢血で倒れ、家族に見守られる中、77歳で没した。