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"菜翁が旨"さんのほほ~ぇむ健康ペ~ジ

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ガリバーIBMに先んじた、菜翁が旨さんの歴史の一端

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ガリバーIBMに先んじたことがある菜翁が旨さんの歴史の一端の物語である。

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IBMとは、International Business Machines Corporation. のことで、1911年ごろ、NCRのセールスマンであった、トーマス・J・ワトソンが創立した会社である。

NCRとは、The National Cash Resistor Co.,と呼ばれていた店頭で金銭の精算と金銭の管理をする金銭登録機(レジスター)の老舗会社である。

今では「レジ」という言葉がすっかり独立して馴染みになってしまっているが…

トーマス・j・ワトソンの有名な言葉の一つに、「河原にころがっている石ころでも、高い値段で売ってみせる」というのがあるほどの有能なセールスマンでだったそうだ。

IBM社は、ホレリスが発明したパンチ・カード・システムで80蘭式カード・システムを開発して、世界各地の米軍の倉庫の在庫管理や給与計算に採用されて、90蘭式カード・システムで席巻していたレミントン・ランド社を圧倒した。

80蘭式ホレリス・カードをIBMカードとさえ呼ばれるようになった。

その後、パンチ・カード・システムは真空管による電子計算機が開発されて、それに取って代わられた。

電子計算機はIBMのほかにも、90蘭カード・システムのスペリーランド・ユニバックをはじめ、NCR,ハネウエル、バロース、CDC,GEやRCAなどの会社が開発・発売していた。

そのなかでも、80蘭式ホレリス・カード・システムを電子計算機に置換えたIBM社が圧倒的な優位にたって、IBMという言葉は、コンピュータの代名詞としてさえ、日本では使われていた。

電子計算機はその後、トランジスタ化、IC(集積回路)化、LSI化、超LSI化そして、この頃からパーソナル・コンピュータが始まった。

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コンピュータがトランジスタ化された頃の事である。

菜翁が旨さんも、OKITAC5090という日本国内でのベスト・セラー・コンピュータの設計から検査・顧客先での保守サービスまで全般にわたってかかわっていたことがある。

そして、東京・日本橋から目黒の碑文谷に完成した新しい事務センターにコンピュータ・センターを移した安田信託銀行のコンピュータ室で顧客サービスに当たっていた昭和40年頃の事である。

菜翁が旨さんは、この安田信託銀行の碑文谷事務センターでOKITAC5090コンピュータでプログラムを組んで、世界で初めて電子音楽を演奏させ、新設されたこの事務センターを訪れる安田信託銀行の見学者に同行のコンピュータによる日常作業の中断を指示した事務センター責任者の依頼により、「さくらさくら」とか、「荒城の月」や同行のコマーシャル・ソングであった「やっぱりやすだ」などを演奏させて、一般の人たちに難しいもの思われていたコンピュータのイメージをささやかながら払拭する一翼をになっていた。

すぐ傍では、パッチボードに組み込まれたプログラムの指示で動くIBMのP.C.S.や、バロースの陳腐化した真空管式電子計算機がまだまだ元気に稼動していた。

伝え聞いたところによると、当時のIBMでは、ドラム式ラインプリンタの印字音を利用して音楽を演奏させるプログラムを組んで演奏させていたそうである。

即ち、一行120(または132)字全てを同じ文字を印字させるだけでも、0~9そしてA~Zまで36音階の音を得ることが出来る。
そこに異なる文字と置き換えることにより無限に近い音階を得ることが出来る。

しかし、IBMの方式では、一行120字あるいは132字の印字させる文字の組み合わせによるドラム上の活字に印刷用紙とタイプリボンを接触・印字させるためのハンマー装置の接触音を利用したもので、それは電子音ではなかった。

従って、菜翁が旨さんの方式が、巨人IBMに先立って世界初の電子計算機の電子音による演奏であった、といえる。

そのプログラム作成のための設計仕様の詳細は世界で初めて電子音楽を演奏した電子計算機!として公開している。

当時は「コンピュータ・ソフトウエアの著作権」はまだ存在しなかった時代であり、このように公開することにより、誰でもがこの手法を利用してコンピュータ・プログラムを作成することが出来るようになった。

現に、菜翁が旨さんが、沖電気がコンピュータの開発・製造から手を引いて、スペリーランド社(ユニバック)と提携する(その後OUK社が設立された)という話を耳にして、日本電気株式会社に転職してこの仕様を見せた同僚がプログラムを作成してNEACシリーズ2200で演奏させることに成功している。

「コンピュータ・ソフトウエアの著作権」に関しては、IBMのシステム360のOS(オペーレーテイング・システム)に関して、互換機メーカーであった日立製作所や三菱電機などのコンピュータ技術者が産業スパイ容疑で米国・ロスの飛行場から日本への出国直前に身柄を拘束される事件や、IBM機と完全コンパチメーカーであった富士通との紛争事件とその「AAA裁定」などが有名である。

菜翁が旨さんは、このIBM/S360の英文解説書を、NEC社員の時代に目を通す機会に恵まれたことがある。

NECはIBMとはアーキテクチュアーが異なるハニウエル(H.W.)社から技術導入してNEAC2200シリーズを発売していたその頃である。
(IBMのハードウエアは、ワード・マシンで、ハニウエル(H.W.)社はキャラクター・マシンであった。従ってソフトウエアも全く異なる設計思想であった。

(ワード・マシンは1ワード(語)のキャラクタ数が固定長であるが、ハニウエル(H.W.)社のキャラクター・マシンは1ワード(語)の長さは可変長であった。各キャラクタには2ビットのパンクチュエーション・ビットがあり、それぞれワード・マークとレコード・マークとして割り当てられて、ワードの区切りやレコードの区切りに使用する。マシン命令にはこれらのワード・マークやレコード・マークのセットやリセット命令が用意されていた。レコード・マークは主に周辺装置とのデータ転送に利用するものであった。したがって、IBM社などのワード・マシン方式に比べて貴重な主記憶を大幅に節約・効率的に使用することができ、外部記録装置も同様である。)

IBM社のコンピュータとは、全く異なるアーキテクチャーであるにもかかわらず、ハネウエル社製のコンピュータは世界中のベストセラーマシン、IBM1401を完全にエミュレートすることが出来た。
エミュレートすることが出来た、とは、IBMコンピュータのユーザのプログラムを一切手を加えずに、そのままハネウエル社のコンピュータ上でハネウエル社製のプログラムを介して動作させることが出来た、ということである。)
従って、日本電気は日立・三菱・富士通のようにIBM社の「コンピュータ・ソフトウエアの著作権」の侵害にもならなかったのである。

それでも、当時の社内では機密書類として、上層部の推薦が無ければ入手出来ないものであった。

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後日、菜翁が旨さんの、この「OKITAC5090による電子音楽演奏プログラム」の論文を読んだ理化学研究所の研究員の一人が、優秀な弁理士などの専門家の手を経て特許取得しておれば、電子楽器の基本特許を押えることが出来たかも…と、取らぬ狸の皮算用をしてくれたことがある。

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ドラム式ラインプリンタの印字方式:ドラム上の活字・インクリボン・印字用紙・印字ハンマー、これらが接触して印字が行われる。1行132(120)字が全て同じ文字なら、殆ど同時にハンマーが動いて印字され、異なる文字があれば数ミリ秒ずつずれてハンマーが動いて印字される。
このときの印字音を音階に当てはめて、そのときの一行132(120)字ぶんの文字列をその音階に定めて、数オクターヴ分の音階を決定して、曲目の音符に合わせて選択して印字するプログラムを組んでRUNすれば任意の曲目を演奏することが出来る。

ドラムには、横一列に132(120)字の同じ活字が埋め込まれている。
次の列には、別の活字が埋め込まれている。
こうやって、0~9、そしてA~Z及び$(通貨記号)や%などの特殊文字の活字の列がドラム上に埋め込まれる。
アルファベットの小文字がオプションで組み込まれたものもある。
日本語のドラムなら、さらにア~ン、゛(濁音記号)、゜(半濁音記号)、¥(円記号)などが組み込まれる。
この回転するドラム上の文字を小さなハンマーで叩いて印字する。

組み込まれる文字数が増えるほど、印字速度は遅くなる。
従ってカナ文字の組み込まれた日本語ドラムでは印字速度が格段に遅くなる。
また、横に印字された一行の文字列は微妙にそしてランダムに上下にぶれるので、読みずらいという欠点を持っていた。

このドラム式印字方式は沖電気のOKITACコンピュータ以外の日本を含む世界の全てのコンピュータで使われていた。

沖電気は世界で唯一の、横に印字された一行の文字列にぶれがない、タイプベルト式のラインプリンタを採用していた。
これは、数センチ巾ほどの金属のエンドレスのベルト上に活字を組み込んで、これを回転させて、この活字をハンマーで叩いて印字する。
ドラム式に比べて、横一列に印字された文字には上下のブレがないので、読みやすかった。
また、0(ゼロ)をはじめとする数字などの非常に使用頻度の高い活字は、摩耗が早く、ベルト式では、摩耗した活字一つを交換するだけでよいが、ドラム式では、ドラム全体を交換する必要があった。
メンテナンスのコストや時間の比較では、ベルト式が圧倒的に優位であった。

タイプベルト式は、ベルトの活字の下に、ホームポジションとして活字列の最初の文字を示す穴と各活字毎にそれぞれ小さな穴を設け、この穴を磁気センサー(開発・稼働当初はランプとフォト・セルによる光学センサーであったが、ラインプリンタ用紙の微塵などのタイプベルトへの付着による誤動作・誤印字の発生を排除するために磁気センサー方式に変更された)で検知してカウンター回路を制御して、プログラムが指示した文字が自分の前に来たハンマーがベルト上の文字を叩く、という仕組みである。

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文選工が鉛の活字を一つ一つ拾って、時折、誤字が混ざりながら、新聞や本が出来上がっていた時代に、その誤字を発見すると、人が作りあげた文章のぬくもりを感じて嬉しかった、懐かしい頃を思い出した。


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