2011/09/27(火)22:13
おにいちゃぁ~ん お母ちゃんがいないよぉ~(5)
しっかり戸締りは出来た。
足元を照らす明かりの提灯にも、ローソクの火を灯(とも)した。
しかし、行くあては、思いつかなかった。
弟に聞いてみた。
「どこへ、行きたい?」
「お宮のそばの、おじいちゃん家(ち)へ行ってみようよ。」
氏神様の隣の、おやじの実家である。
このお宮の秋祭りには、馬力をひく馬が鳥居から境内を口輪を引かれて歩き、子供相撲が奉納され、舞台からは賑やかに唄や踊りが奉納され、舞台からの餅巻きが楽しめる。
これは、半世紀前から、今も続いている行事であり、氏子のだれもが、一度は舞台の上から、餅をまく楽しさを味わうことが出来、また、最近まで全く気もつかなかった、明治11年や13年の絵馬が奉納されているお宮である。
冷たい冬の夜の冷気でかじかむ手をこすりながら、提灯の明かりを頼りに「おじいちゃん家(ち)」にたどりつた。
雨戸の隙間からは、期待したあかりが漏れてはいなかった。
寒い夜更けに、人が起きている気配は全く感じることは出来なかった。
静かな気配に、雨戸を叩いて起して、父や母の行方を尋ねる気にもならないほどの静けさであった。
いわずもがに、弟も、同じ気配を感じているように思えた。
気がつけば、同じ思いの二人の足は、帰り道をトボトボと歩んでいた。
よろしければ『ポチーッ』とお願いします。