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愈々庵気まぐれ日記

モーゼル下り

前話でのライン下りと同じ夏ドイツでの仕事が終わり、
一ヶ月近くKarlsruheに滞在したときの話。


土曜日の朝早く目が覚めたので開都2000年祭が行われてい
Trierを訪れた。ローマ皇帝ネロの母アグリッパの領地である。
町はモーゼルの上流にあり、見物するところも多い。
一通り見物し、80近い老婦人とテーブルを共有し、木陰のカフェで
休憩していた。例によって私のつたないドイツ語による会話が始まった。

「この飲み物が終わったら帰るところだ」「それは良くない、
今日は特別な日で開都2000年記念花火大会がある。あなたは今晩
ここに泊まるべきだ。この日を逃すなんてあなたの恥だ」
「そんなこと言っても今日はホテルは満員ですよ」「私が何とかしよう」

自宅に泊めてくれるのかと思いきや、紙にメモを書いて、
あるホテルのシェフを頼れと言う。
訪ねてみると困惑した様子、「おばあちゃん、また無茶を言うわい。
年寄りは困ったものだ」といってしばらく待つように言って引っ込んだ。
ややあって「ひどい部屋だけどまあ我慢しな」「Danke shoen」

その夜、モーゼル河畔は子供の遊園地と化し、アベックや家族ずれで
大賑わい。だが花火は一向に始まらない。やっと12時近くになって
対岸で始まったが、1時間近くかかって10発くらいで終わり。

翌朝ゆっくり起きて、街は見てしまったしどうしようかと思って
ふとモーゼルの船下りがこの町から始まることを思い出した。
急いで船着場に急いだ。なにしろ三ヶ月のユーレイルパスを持っているので
変幻自在だ。それにこのクルーズはユーレイルでカバーされている。

早速乗り込んでみるとライン下りとは大違い、小さな船だ。
何箇所か水位調節ロックを通るので大型船は無理。
乗り込んでみると、乗客は私と中年のアメリカ人一人
それに地元の農協らしき十数人の団体客だけだ。

ラインと違って両岸のブドウ畑は急坂で川に迫り、
モーゼルワインの町も岸に沿って近い。
アメリカ人とワインを飲みながらその日の幸運を喜んだ。

出航前からワインを飲んでいた農協の叔父さんたち、40歳くらいの
若手のギターで民謡の大合唱が始まった。しばらくすると全員が
完全な酔っ払い。テーブルもブリキバケツも箒もコップも空き瓶も
全て打楽器と化した。多勢に無勢、私とアメリカ人も打楽器担当と
化した。

こうして船はたっぷり一日近くかかってKoblenzの街へと着き、
我々と肩を抱き合って分かれた農協連は団体バスに乗って
いずれかへ去った。

歴史を想い、田舎の夜祭、モーゼル岸の静寂な風景、狭い空間の
ドンちゃん騒ぎ大変な週末であった。

それにしてもモーゼル川下りをする人は少ない。時間がかかりすぎて
日本の団体客には嫌われるのかもしれないが、私的にはお勧めだ。


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