東北雪見旅 磐越西線 続々
磐越西線 3 磐越西線沿線の雪景色は際限なく続き、山も里も完全に水墨画の世界である。 レトロ調の駅名版もガス灯も埋もれて何も表現できないでいる。 列車の進路もこの雪では殆ど見えない、この辺りになるとレール跡も黒くは無く、ただ雪にくぼみがあるだけである。分かりにくいが下の写真石垣の黒い線右側は駅の乗降ホームなのだが使い物にならない。 実はこの列車には運転手のほかに3人の路線保安員が運転席横で勤務していた。二人は常に前方を凝視して運転手と3人で前途確認しながら前進している。そして3人目の人はひっきりなしにデジタルカメラに状態を記録している。しばらく観察してみるとトンネルの入口では必ずパチリ、線路が曲がっている所も大抵パチリ、後続の運行や運転ダイヤの確保の並々ならぬ努力が読み取れる。 駅ではラッセル者が待機しているがこれも雪に埋まっている。 雪国で列車を動かすことの大変さとその陰で働く人の努力に頭が下がる。そのお陰で我々の乗った窓に氷が張り詰めた乗客のまばらな汽車は殆どダイヤどおりに運行されたいた。 外の雪景色、氷の張った窓ガラスの外を流れる阿賀野川沿いの集落が流れる。 そして美しい水墨画の世界を堪能している間に時々は単線の対向列車待ちでゆったり流れる時間が訪れる。 そんな時は上の窓を開けて景色を見ると白黒のコントラストは深くなる。暖かい車内からこんな景観を眺めていると時間が止まったように感じる。 こんな光景を楽しみながら列車は新潟に達する。 新潟で上越新幹線MAXトキの2階席に乗り換えた、新潟は雪は少ないが程なく長岡、浦佐、越後湯沢とまた豪雪地帯を通るが今度は新幹線である。窓の景色も流れが速すぎて雪景色を愛でる雰囲気は出ない。乗客も殆どがビジネスマンで書類を見ているか、本を読んでいるか、パソコンに向かっているか、あるいは鼾をかいているかである。誰も窓外など見る人はいない。磐越西線とはなんと言う違いだろうか。そして長い長いトンネルを出るとそこは上州、赤城の山も上部は雲に隠れていたが新幹線の走る平野部はからりと晴れた関東平野が始まっていた。 昔は山の反対側にそれぞれ理想郷を夢見たものだが今はトンネル効果で何の余韻も無くなった。 カール・ブッセ(上田敏訳) "山のあなたの空遠く 幸い住むと人のいう ああわれ一人 尋(と)めゆきて 涙さしぐみ かえりきぬ 山のあなたはなほ遠く 幸い住むと ひとのいう" Über den Bergen Karl Busse Über den Bergen weit zu wandern Sagen die Leute, wohnt das Glück. Ach, und ich ging im Schwarme der andern, kam mit verweinten Augen zurück. Über den Bergen weit weit drüben, Sagen die Leute, wohnt das Glück. ( 山の向こうにはきっと幸が待ってる と聞いたので行ってみたがそんなものは無く涙して帰ってきた そしたら 幸せが待っているのはもっともっと向こうの山だ と教えてくれた) 高校の教科書で新体詩として習い、60年近く過ぎても大好きな詩である。