手塚治虫の「火の鳥」と「ガイア理論」




         「 火の鳥とガイア理論 」




NHKのアニメ「火の鳥」の第一話を見ました。


http://www3.nhk.or.jp/anime/hinotori


やはり、原作と比べてしまうとアニメ化の関係上、省略されて
しまう所や、漫画独特の面白みがなくなってしまう所があったり
して、少し残念なところもありますが、


映像がきれいさや、多くの人が見れて、入りやすいアニメの
良さが出てくれれば、そして、これで多くの人が手塚作品や
原作の「火の鳥」に興味をもって見てくれれば、良いなあと
思います。




私が原作の「火の鳥」で一番好きな編は未来編です。



そこでは時間や空間を越えて、さらに、極大から極小の世界、
死後の輪廻する世界までが描かれていて、手塚治虫がいかに
高度な世界観・宇宙観を持っていたのかが、わかります。


それは、現在の科学ではまだまだ、証明されていない分野
ですが、かなりの核心をついていると思います。これを読んだ
時は、震えるほどの感動を覚えたことを今でもしっかりと
覚えています。



永遠の生命を与えらて、生命・人類の進化の過程をすべて
見届けるという過酷な使命を告げられたマサトは火の鳥に
連れられて極大から極小の世界に連れられていきます。


そして、原子・素粒子・さらにもっと小さなものから、
地球・銀河・宇宙・宇宙が集まってできたさらにもっと
大きなものまで、すべてのものが互いに影響を与えながら
「生命」をもって活動していることを教えられます。


これを手塚治虫は「宇宙生命」(コスモゾーン)と名付け
ました。



これは以前紹介したジェームズ・ラブロックが提唱する
「ガイア理論」とそっくりではないかと読んだときに
私は思いました。


「母なる星地球は、それ自体が一つの巨大な生命体としての
仕組みを持っており、私達人類もまた、その人智を越えた
複雑、精緻な生命の仕組みの一部分として生かされている」
             J・ラブロック「ガイア理論」

http://www.hotwired.co.jp/ecowire/interview/010123/


未来編が出版され始めたのが1967年。ガイア理論が
仮説として世に出され始めたのが60年代後半らしいです。
手塚治虫はガイア理論を知っていたのでしょうか?




そして、最後に使命を果たしたマサトは大きなすべての
生命の命の塊・「宇宙生命」に還っていきます。


未来編は黎明編につながる。未来は過去につながる。
極大は極小につながる。すべての生き物は永遠の魂を
持っていて生死を繰り返して輪廻している。


手塚治虫はすべてのものは環のようにつながっていて
すべてのものは「宇宙生命」によって生かされている
と伝えたかったのではないでしょうか。


「宇宙生命」を人によっては神、大いなるもの、と呼ぶ人も
いるかもしれません。手塚治虫はその象徴として「火の鳥」を
描いたのです。



そして、未来編の最後にこの輪廻する世界で命を粗末にし、
何度も大きな間違いを起こしてしまう人類に対して、


神としての火の鳥の願いとして、

手塚治虫の祈りとして、


「火の鳥」という作品、すべてで
伝えようとしているメッセージが私たちに問いかけられます。





「でも、今度こそ、今度こそ信じたい。今度の人類こそ、
きっとどこかで間違いに気がついて、生命を正しく使って
くれるようになるだろうと」





現在の私たちは、いまだに戦争を繰り返し、自然を破壊し、
食べ物=生き物を粗末にし、生命の尊さを理解できていない
のかもしれません。


敬虔な仏教徒は小さな虫、ひとつでも踏みつけたり、殺して
しまうのを拒むといいます。


日々の生活の中で命の重さを本当に理解し、そうした行動を
しているか?と自分に反省するとともに、私はそういう価値観で
生きていきたいと切に思います。



偉大な作品「火の鳥」。私たちが多くの間違いを起こして
しまっている今だからこそ、多くの人々がこの作品を読んで
くれたらなあと思います。







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