2008/09/09(火)13:16
「ローマ人の物語33 迷走する帝国(中)」 塩野七生
カラカラ帝が東方遠征の最前線で、警護隊長の手によって殺害されるという事件が起こって以降、
兵士たちによる皇帝謀殺が相次ぎ、元老院に議席を持たない将官出身の「軍人皇帝」が次々に現れては消える、危機の時代が続く。
かくしてローマは政略面での継続性を失い、ついにはペルシアとの戦いの先頭に立っていた皇帝ヴァレリアヌスが敵国に捕縛されるという、前代未聞の不祥事がローマを襲う。
帝国の衰亡はもはや誰の眼にも明らかだった。
ローマ人の物語(33)
アレクサンドル・セヴェルスが殺された後、
皇帝になったのは、兵士たちに人気のあった軍人のマクシミヌス・トラクス。
ゲルマン人との戦いに積極戦法を取り、幾度もローマ軍に勝利をもたらしますが、
如何せんこの人は、皇帝としては血筋に正統性がなく、
トラクス(トラキア人)と呼ばれたように、家柄も半蛮族と見られていたので、
品位が低いと元老院に嫌悪され、
元老院は勝手にマクシミヌスを国家の敵とし、家柄では申し分のないゴルディアヌスを推挙。
内乱が起こってしまいます。
その後の皇帝の入れ替わりはいちいち書くと大変なので省略。。。
もう無茶苦茶ですね。。
「哲学や芸術面ではギリシア人に及ばず、体力では肉食民族のガリアやゲルマンの民に劣り、
技術でさえもエトルリア民族の教えを受けることで、
あれほどのインフラストラクチャーの完備を可能にした技術立国になり、
経済の才能でもカルタゴやユダヤの人々にはるかに及ばなかったのがラテン民族だったが、
そのローマ人がこれらの諸民族を傘下に収める大帝国を築き上げ、
しかも長期にわたってその維持に成功してきた真因は、
実にこの、持てる力の合理的で徹底した活用への執着、にあったのだった。」 (P83)
というのがローマ人の長所だったのに、
コロコロと皇帝が替わるゆえに、政略面での継続性を失い、
だんだんとローマ人はローマ人でなくなってしまったというのもわかる気がします。。
…日本、大丈夫?? (-_-;)
そして紀元250年には、ゲルマン民族のゴート族、ヴァンダル族がローマ領へ大挙して侵入。
さらに252~253年にかけても、三十万もの蛮族が、地中海沿岸まで侵入してくる事態が。
そしてまた、260年には、ササン朝ペルシアとの交戦中に、
皇帝ヴァレリアヌスが、ペルシアの捕虜になってしまうという、前代未聞の出来事が起こってしまいます…。
ローマの迷走はまだまだ止まりません。。。