八重泉酒造を訪ね、座喜味社長と、しばしゆんたくをさせていただいた。
酒造り一筋で生きてきた座喜味社長。無口だが、少ない言葉の中から酒に対するこだわりがひしひしと伝わってくる。
「苗木に愛情を注ぎながら毎日ささやきつづけると、きれいな花が咲くと言われています。」
「また、泡盛に音楽を聞かせると、熟成が進み円やかで豊饒な味に仕上がるとも言われており、多良川酒造ではクラシックを、神谷酒造では沖縄の音楽を聴かせながら、時の旅を続けています。」
「酒に魂があるのか、声や音を聞くことができるのかは分かりませんが、いい環境で造り熟成のときを過ごす泡盛はきっと素晴らしいものになるに違いない。
そう思って工場を南向きの山の中腹に移しました。」
と、座喜味社長は静かに語った。
台湾坊主と呼ばれる冬の北風を防ぐ山に抱かれ、夏は心地よい南風が吹き抜けていくので、年間を通して温度が安定する。山の恵み、豊富な湧水が八重泉の酒の源となっている。さらに酒造所からは八重山の美しい島々が見渡せ、その絶景にまばたきすることを忘れるほどだ。
恵まれた環境の中で造られる泡盛。造り手の思いを受け取り、魂が宿る泡盛。その酔いがゆったりと体の隅々に届き、島との同化をいざなう。そのゆるやかな心地よさに目を閉じて浸る。
眩い陽射、風にゆれる木々、離島へ向かう高速船、まぶたの裏側に八重山の風景が浮かんできた。
Japan Transocean Air
編集部 森山 卓さん