スコットランドへの旅(その5)アイラ島(3)
前日に続き、蒸留所巡りだ。まず、ラフロイグ蒸留所へ。ここのビジター・センターはなかなかに立派だ。受付でまず、ドライバーかどうか聞かれ、ドライバーであると告げると、試飲の代わりに、持ち帰り用の小瓶をあらかじめ用意してくれる。こうした蒸留所巡りでは、飲みながら車で回ることが半ば当然の前提となっているところがあり、またイギリスでは多少の飲酒運転は違法ではないのだが、ここは意外にきっちりとしている。ラフロイグの親会社が日本のサントリーであることも影響しているのだろうか。ラフロイグで特筆すべきは、Friends of Laphroaig(ラフロイグ友の会)というシステムだ。これに入会すると、この蒸留所近くにある土地の、30センチ四方の一角を所有することができるというのである。入会要件として、ラフロイグのボトルを買うと、その中にパスコードがあり、それを入力することで登録できるらしい。今回、旅行前にそうした手続きを行うことを失念してしまっていたが、この蒸留所のビジター・センター内に、友の会のコーナーがあり、そこの端末からその場で入会することができた。なお、ラフロイグはイギリスのチャールズ皇太子の愛飲する銘柄であり、彼自身この蒸留所を訪れ、Royal Warrant(王室御用達)のステータスを与えているが、友の会の会員第一号はチャールズ皇太子であるという。会員になると、この蒸留所で証明書を発行してもらうことができ、その中に自分の「所有地」の緯度と経度が記されている。友の会コーナーには、長靴と、様々な国旗が用意されている。ここから、自分の所有地を実際に訪れて、自分の国旗を立てることができるようになっているのである。さて、その敷地の場所に行ってみると、単なる野原の中に、様々な旗が雑多に立てられている。本来、各人の所有地が緯度と経度で指定されており、携帯のGPS機能などを使って特定できるらしいのだが、この状態ではあまり意味はなさそうだ。とりあえず、適当な場所に日の丸の旗を立てていく。何はともあれ、アイラ島に自分の土地を持っているというのはなかなか感慨深いことだ。ラフロイグの蒸留器友の会会員への「分譲地」様々な国旗が雑多に置かれている日の丸を立てる最後は、お膝元のボウモアである。ここのビジター・センターは、これまで訪れた中でも最も充実している。この中にあるバーでは、ボウモアの様々な銘柄を一杯から味わうことができる。折角なので、25年物を含む3杯のテイスティング・セットを注文した。ボウモアは、熟成にバーボン樽とシェリー樽の両方を使っており、前者では黄金色の、後者では褐色のウィスキーができる。テイスティング・セットは、Tempest、Devil’s Casks、そして25 years oldの3銘柄から成り、Tempestはバーボン樽、後の2つはシェリー樽だ。Tempest、Devil’s Casksはそれぞれ、その名が示すように刺激的な風味であるのに対し、25年物はさすが、円熟した、複雑かつ深みのある味わいだ。ボウモア蒸留所周囲の海岸沿いは手頃なウォーキング・コースとなっている熟成庫ビジター・センター2階のバーでは、海を眺めながら試飲をすることができる1957年に樽詰めされた、54年物のボウモア・ウィスキーが展示されている。このボトルは12本しか存在せず、オークションでは10万ポンド以上の値がついたという。テイスティング・セット