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高尾山のふもとから

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高尾すみれ

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緑と清流 神秘家の庵さん

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2009.12.05
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カテゴリ:今昔物語
伴大納言の夢

 今は昔、伴大納言善男という男が居た。
 善男がまだ佐渡の地方官の従者だった頃、平安京の東寺と西寺を股に架けて立っている夢を見た。
 このことを妻に話すと、
「あなたの股は、そのうち裂けてしまうでしょう」
と言ったので、善男は驚いて、つまらぬことを話してしまったと思った。
 主の地方官の家へ行き、その話をすると、この地方官は人相見や夢解きをする人だったので、話を聞いたとたんに善男を座敷に上げ、座布団まで勧めるので、善男は驚いて、妻が言ったように、私の股を裂く気ではないかと思った。
 地方官は、
「お前、末は高い身分の人になる夢を見たが、それを妻に語ってしまったので、高貴な地位についても、事件が起こって無実の罪を蒙るかもしれない」
と言った。
 善男はその後、縁があって都へ上り、大納言にまで出世したが、政治的ライバルによって、応天門放火の罪を被せられた。


夢2 
夢を盗んだ人

 備中の国の豪族の息子に、吉備真備(きびのまきび)という若い人が居た。
 ある時、夢を見たので夢解きの女の所へ行った。
 夢を解いてもらった所へ、国司の長男の太郎が、お供を引き連れてやって来た。太郎は17歳ぐらいで、気性は分からないが見かけの良い男だった。
「ここが夢解きの女の家か?」
「はい、左様でございます」
 真備は隣の部屋に隠れて、太郎の話を聞いていた。
 太郎の夢の内容を聞いた夢解きの女は、
「素晴しい夢でございますよ、将来は大臣にまでなれるでしょう、おめでとうございます」
と言った。
 太郎が嬉しそうに帰ってしまうと、真備は女に、
「夢は盗ったり売ったりできるそうだな、あの太郎の君の夢を私に盗らせてくれませんか、国司は四年の任期が過ぎれば都へ帰ってしまうが、私はこの地の豪族だから、いつまでも長くここに住み続ける、私の方がお前にとっては大事な者だ」
と言った。女は、
「仰る通りです、では太郎の君がしたのと同じ事をして、同じ話を少しも異わずに話してください」
と言うので、真備はさっき太郎が来た時と同じように家に入り、同じ話をした。
 その後真備は、都へ上り勉強して目覚しく上達し、学識のある立派な人になった。
 帝は真備の噂を聞いて呼び、まことに才深くあると思い、
「唐へ行って、様々なことを勉強して来なさい」
と言って、官職を昇級させ、唐へ留学させた。
 真備は、後に大臣になった。
 夢を盗られた太郎は、大臣どころか官職さえなかった。
おわり






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Last updated  2009.12.07 07:04:00
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