他界のお気楽アナザーワールド

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劇台本でござ~い2金の花さく木

 「金のなる木」シナリオ
                      
  ○落語家・定吉 →        ○おしょう  →
  ○小僧さん・幕引き1→
  ○番頭   →          ○庄屋さん・幕引き2  →
  ○熊    →          ○熊かみ・幕引き3 →
  ○けちべい・幕引き4→          ○けちかみ  →
  ○寅かみ・幕引き5→          

・構 成

 幕 前 「あいさつ」   まく引き
「劇紹介」    落語家

 第一幕 「定吉のぼけ」  定吉・番頭・熊さんのかみさん・寅さんのかみさん

 第二幕 「夫婦げんか」  番頭・熊・定吉・けちべいのかみさん・けちべい(声)
八さん

 幕 間 「つなぎ」    幕引き

 第三幕 「庄屋とおしょうの対決」  庄屋・おしょう・小僧

     「考えるおしょう」 番頭・熊・定吉・けちべいのかみさん・おしょう

 第四幕 「おしょうのとんち」番頭・熊・定吉・けちべいのかみさん・おしょう
               けちべい

 終わり 「落とし話」    落語家

    
   (舞台は幕がおりている。)
   (上手からまくひき登場)
ま1「いまから演劇クラブの劇が始まります。」
ま2「今日の劇は、金のなる木というお話です。」
ま1「このお話は、静岡県の昔話(きんの花さく木)というとんち話をもとに新しく作っ   たものです。」
ま2「今回の劇は、落語げきです。」
ま1「落語といっても最近では、あまり知らない人も多くなってきました。」
ま2「落語というものは、江戸時代からあって、明治に完成した話芸、お話をする芸の    ことです。」
ま2「今も昔もいろいろな人がいます。」
ま1「落語によく登場するのが、けちに、うっかりもの、ずるがしこい人だったりしま    す。」
ま2「今日の劇の中にも、うっかり者の定吉や、けちのけちべいさんなど、ユニークな人   が登場します。」
ま1「わたしたちが、いつまでも長話をしていては、劇も始まりません。」
ま2「まずは、うっかり者の定吉どんの登場です。」
ま1「どうぞ、ゆっくりごらんください。」
  (まくひき2、かんばんの紙をめくる。)
あ1「それでは、はじまりはじまりー。」(ひょうしぎをならす。)(まくがあく。)



場面二(セット1)

(まくがあく。)
(舞台上手、定吉が店の前で、ぼやいている。)
定「あーあ。朝から、店番、店番て番頭さんに言われて。宿題忘れたのび太君やカツオ君  じゃあるまいし、一日中立たされっぱなし、いやだねえ。」
定「おまけに、時間があるときは、そうじをやれ、そうじをしろ。そうじはまだかって。
言われるし、。番頭さん。ありゃ鬼だね。」
定「鬼ー。番頭さんの鬼ー。おにーっ。番頭のおにーっ。」(ほうきでばしばし)
 (番頭さん上手から出てくる)
番「だれが鬼なんだい。」
定「いえ。そのー。わたくし定吉は、番頭さんをお兄さんみたいに慕っているでありま   す。」(定吉敬礼)
番「何を馬鹿なことやってんだい。」
番「そうそう、定吉や、あたしゃちょいと、でかけてくるからね。」
定「そうですか。わかりました。じゃあ、、番頭さん。いってきまーす。」
番「定吉ーっ。」
定「へいっ、番頭さん。」
番「定吉。お前じゃなくて、私が出かけるんだよ。」
定「へいっ、番頭さん。・・で、どちらへおでかけで。」
番「お寺のおしょうさんとこだよ。」
定「へいっ、番頭さん。いってきまーす。」
番「定吉ーっ。」
定「へーい。番頭さん。」
番「定吉。いいかげんにしなよ。お前は留守番だよ。」
番「出かけるのは、私。」
定「また、留守番。たまには、連れてってくださいよ。」
番「だめだめ。お前は、店番だよ。」
(ごちゃごちゃ言っている。)
(そこへ、下手より、寅五郎のおかみさん登場。)
寅か「こんにちは。」
番「あっ、これはこれは寅五郎さんとこのおかみさん、きょうは、なにがお入り用で。」
寅か「ええ、しょうゆを3合ばかりもらおうとおもってね。」
番「それはそれは・・・。毎度ありがとうございます。しかし、おかみさんはいつもおき  れいで。」
寅か「いやだよう。番頭さん。」(はでなアクション)
番「ほんと、大根みたいに色がお白いし、」
寅か「いやだよう。番頭さん。」(はでなアクション)
番「手足もまるでごぼうみたいにほそうございますから。」
寅か「いやだよう。番頭さん。」(はでなアクション)
定「番頭さん。番頭さん。いやがってますよ。」
番「ばかだね、あれはよろこんでるんだよ。」
寅か「それじゃあ。おしょうゆ、5合ばかりもらおうかね。」
定「あれっ。さっきは、3合って言ってましたよ。」
番「よぶんなことをいうんじゃないよ。お前は黙ってなさい。」
(定吉口にチャックのまね。)
番「毎度、ありがとうございました。・・・じゃあ、あたしはいってくるからね。みせば   んたのんだよ。」 (寅かみが下手に去り、つづいて番頭も下手へ去る。)
定「へえーっ。たいしたもんだ。あれがあきないのコツってもんなんだろうねえ。」
 (下手より、熊のかみさん登場。)
熊か「ちょいと、ごめんよ。」
定「あれっ、くまのかみさんだ、なんだい、なにしにきた。」
熊か「用があるから、きたんだよ、おしょうゆ3合、分けてちょうだいな。」
定「おっ、きましたよ、きました。あきない、あきない。商売、商売」(客席に向かい。)
定「おきれいですね、に。」「大根に、こぼう。」「きれい、大根、こぼう。」
(客席に繰り返す)
定「おかみさんは、なんだい、そのー、いつもきれいだね。」
熊か「いやだねえ。定吉さん。」
定「おっ、いやがってるよ。」 (喜んで)
 「おかみさんは、まるで大根だね。」              
熊か「えっ何が」
定「えっ、何がってえっ、いやあ、何でしょう。えー。その足が。」
(じーっとみて、足で目を止め。)
熊か「悪かったねえ、どうせわたしは、大根足だよ。」
定「それに、手足なんかまるで、ごぼうだ。」(あわてて、見回し)
熊か「んまっ、どうせ、あたしゃ 色がくろいよ、わるかったね。」
定「いやがってます?」
熊か「あたりまえだよ。」
定「で、しょうゆは何合入り用ですか。5合買いたくなったでしょ。」
熊か「もういらないよ。だれが、あんたなんかの店で買うもんかい。」
定「えっ。いらない。・・・ばいばーい。」 (下手へ去る熊かみへ。)
定「やっ、いやがらせかたが足りなかったかな。トマト、きゅうりー、なすびに、レンコ  ン。へちまー。」
 (下手に消えた、熊かみへ)
定「あれれ。怒って行っちゃったよ。商売ってのは、むずかしいもんだね。」
(定吉上手へ去る。)


場面二

 (下手から、番頭さん歩いてでてくる。ぐるっと歩いたところで、下手からけちべいさ  んの声が)
け「おまえのようなやつは、でていけ。」 (声だけ)
けか「うえーん。  うえーん。」 (大声でなきながら、下手から、けちべいのかみさ                  んが登場。)
番「どうしたんです。けちべいさんとこのおかみさん。」
けか「うえーん。」(なきつづける。)
 (下手から、はっさん、登場。)
八「あれーー。番頭さん。・・・・いーけないんだ。いけないんだ。泣かしちゃった。な   かしちゃった。」(手をたたき、はやしたてる。)
番「そうじゃありませんよ。」(こまって手をふる。)
八「けちべいさんとこのおかみさん、いったい、どうしたんでか。」
けか「うえーん。うえーん。・・・それがね、ちょっときいておくれよ。あたしが、さっ    き、うちの人のいつもの長話しをきいていたときのことなんだ。」
番八「ふん、ふん。それで、それで。」(二人、そろえてくびをふり相づちをうつ。)
けか「あんまり話が長いんで、ついあくびをしたら、」
番八「ふん、ふん。それで、それで。」(二人、そろえてくびをふり相づちをうつ。)
けか「うちの人ったら、あくびをするような女は、かかあでもなんでもない。でていけっ   て。け と ば す ん だよーー、うえーん。うえーん。」(うたうように)
  (下手から、熊さん、登場。)
熊「どうしたんでい。あーーっ、番頭さん。いーけないんだ。いけないんだ。せーんせい  にいってやろ。」
番「もういい加減にしとくれ。わたしは、知らないよ。」
八「おう、それがよっ、けちべいさんのあくびが、おかみさんをながばなしして、おん   だされちまって、おしょうさんはちえがあるからって、おかみさんはなくは、なく   はで、けちべいさんはけちだねえ。・・・わかったかい。」
番「それじやわからないよ。実は、おかみさんがあくびをしたからって、けちべいさんが  おこって、おかみさんをおいだしたんだって。」
熊「そりゃいけないや。けちべいさんは一度言い出したら、絶対いうことなんかききゃあ  しない。かみさんはもうおしめいだねえ。」
けか「うえーーーーーーーーん。」
 (なきくずれる。)
八「おいおい、熊さん。」
番「そうだ。おしょうさんのところへ、いくところだった。」
熊「おい、番頭、おめえにげる気かよ。」
番「そうじゃありませんよ。おしょうさんなら何かいい知恵が、あるはずだから、」
八「ちげえねえや。おしょうさんは、おれよりちょっと頭いいもんね。」
熊「そんじゃあ、さっそくいこうや。どーせ、だめでもともとだ。」
けか「うえーん。」
番「熊さん、あまり泣かさないでくださいよ。」
(幕しまる。)
ま3「夫婦げんかというと、いろいろあるものですねえ。」
ま4「けちべいさんとこは、あくびしただけで、おかみさんをおいだしちゃったしね。」
ま3「わたしたちは、そういうわけにはいきませんねえ。」
ま4「そうそう、みてるお客さんが、あくびしても追い出すわけにはいきませんからね。ま3「おきゃくさまは、かみさまです。」
ま4「そうそう、おきゃくさまは、ほとけさまです。」「なむなむなむ」
ま3「おいおい。ちがうでしょ。」
ま4「さあて、したくはできたでしょうか。」
ま全「(うしろのようすをみて)もういいかーい。」返事 
ま3「それでは、したくも整ったようで。」
ま4「けちべいさんのおかみさんの運命やいかにといったところでしょうか。」
ま3「それではつづきをごらんください。」


場面三(セット2)

(幕開く。)
(下手にお寺、下手より順に、小僧、おしょう、庄屋、下男がすわっている。)
おし「でっ、庄屋さん、今日はどのようなごようでまいられたかな。」
庄屋「えっ、やっ、別にごようというほどのもんじゃないんですよ。」
小僧「おしょうさんが、知恵があって尊敬されてるものだからって。どうせ、またいや    みをいいにきたんですよ。」
おし「これこれ、こぼうず、失礼なことをいうでない。」
庄屋「おしょうさん、たしかにあなたはなかなか知恵をもっておられる。そして、庄屋の   わしより、村のもんに尊敬されている。」
小僧「そのとおりー。」
庄屋「しかし、わたしは、大金持ち、あんたにはないものをもっている。金はうなるほど   あるから、しまいきれなくなって、床の間につみあげてあるくらいですよ。へーっ   へっへっへっっへっ・・・。」
小僧「うーん。うちは貧乏寺だーっ。」
おし「かねですか。・・・やー、この寺の鐘は、あまりの大鐘ゆえ、お堂のなかにも入り
   きりませんので、そとにつるしてありますがね。」
小僧「そうだそうだ。この寺の鐘はここいらじゃいちばんの大鐘だ。ごーん。」
庄屋「鐘。釣り鐘か。いや、わしは、ほかにも色々持ってますぞ。わしのうちの庭には、   名のある庭石が20と3もありますよ。おっほっほっほっ・・・すごいでしょ。」
小僧「うーん。くやしいがおっかねもちー。」
おし「いやいや、わが寺にはひとつひとつにていねいに名前まで書いてある石が、5・6   0ほど、あったかのう。
庄屋「えっ、そんな石が・・。」
おし「墓石ですよ。」
小僧全「おしょうさん、かしこい。」
庄屋「うっ、わしのきているのは、昨日仕立てたばかりのきものですぞ。」
おし「わたしのはけさです。」
庄屋「なに、うちの金魚は一尺もある大金魚、おまけにじょうぶで十年もいきてる。」
おし「てらの木魚は二尺三寸、40年もたたきつづけておるが、どうしてどうしてじょう   ぶなものです。」
庄屋「わっ、わしの わしの・・・。おーわしゃかえる。」
  (庄屋、下手へ去る。)
小僧「わーい。わーい。庄屋のいばりんぼう。」
おし「これこれ、ばかなことをいっていないで本堂のぞうきんがけでもしてきなさい。」 (小僧上手へさる。)


場面四

 (上手より、番頭・八・熊・けちかみが登場。)
番頭「ごめんください。」
熊 「おしょうさんいます。」
おし「ああ、これはこれは番頭さん。おや、みなさんおそろいで。」
けか「うえーん。」
おし「どうかなさったんですか。」
八 「おう、それがよっ、けちべいさんのあくびが、おかみさんをながばなしして、おん   だされちまって、おしょうさんはちえがあるからって、おかみさんはなくは、なく   はで、けちべいさんはけちだねえ。・・・わかったかい。」
おし「わからないよ。」
番頭「それが、かくかくしかじかってわけでして・・・。」
おし「そりゃ、たいへんだ。しかし、けちべえさんも短気なことで」
熊「そいで、なんかいい知恵は浮かんだかい。」
けか「おしょうさん。助けてください。」
おし「そうですなあ。」
   (おしょう腕を組んで、考える。みんなも、遅れて、八真似して考える。)
八「よし、わかった。」
熊「なにが、わかったんだよ。」
八「けちべいさんのかみさんは、おんだされちまったんだ。わかるわかる。みんなわかっ  てる。」
番熊「わかってないのは、おまえだけだよ。」
おし「わかりました。それじゃ、こうしましょ。・・八さんうらの梅の木のえだを一本、
   おってもってきてくださらんか。」
八「へっ?へいっ。」
番「おしょうさん、どうなさる気ですか。」
おし「うむ。じつはな、こういうことじゃ。・・・・・・・。」
全「えーっ。金のなる木ー。」
八「えっ、どこどこ、どこにあんの、ちょうだい、ちょうだい。ぼくも見せて。どこどこ。  ちょうだい・・・。」

 (幕閉まる。)


場面五(セット1)

 (幕の外、上手より、梅のえだをもったおしょうが登場。番頭・熊・八・熊かみ、寅か  みも)
おし「それじゃあ、てはずどおりやってくださいよ。」
熊 「へえーっ。これが金のなる木のなえですか。」
番 「大判、小判がざくざくとみをつけるっていう。」
八「やーっすごいもんですねえ。金のなる木ですかー。」
 (幕が開く。)

 (けちべい下手から登場。)
け「なっなに、かねのなる木だー。」
 (おしょうさんをかこんで、けちべいにはみせない。)
番「百両も、千両もなるんですか。」
熊「ふしぎな木だねえ。」
け「わっわしにも、みせろ。」
おし「おや、けちべいさん。」
け「そりゃあ、ほんとうに金のなる木なのか。」
おし「もちろん。」
け「いったい。いくらなんでい。」
八「一億円。」
け「えーっ。」
番「高すぎますよ。」(八をつっつく。)
八「いえ、えーと五円です。」
け「五、五円。」
番「安すぎますよ。」
 (けちべい、すこしはなれて、客席に)
け「うーん。たとえ五円でも金をだすのはもったいない。だがまてよ。お金は後払いにし  て、木に金がなってから払えばいいんだ。」

け「おしょう、その木、わしが買おう。」
おし「どうぞどうぞ。・・・・。」
(けちべい、木をみがく。)
け「本当にその木には、かねがなるんだろうね。」
おし「それは、もちろん、・・・かならず、金がなります。ただし。」
け 「ただしー。」
おし「ただし、、けっして、あくびをしない人がうえなければ、金はなりません。」
け「なにーっ。あくびをしない人がうえなければだめーっ。あくびをしない人間なんて、  この世の中にいるもんかい。」
おし「本当に、そうおおもいかな。」
け「ああ、だれでもあくびくらいするもんだ・・・・。」
 (けちかみ、下手より。)
け「おっおまえ。」
けちかみ「おまえさん。」
け「そうか。わかったよ。みんな、このために芝居をしてくれたんだ。」
け「おしょうさん、わしがまちがっていた。・・すまなかったな、おまえ。あくびくらいで  短気おこしちまって。
けか「いいんですよ。わたしのほうこそ。」

番「やーっ、よかったねえ。」
八「ほんに、ほんに。」
けか「みなさん、ほんとうにありがとうございました。」
けち「ほんとうに、ごめいわくをおかけしました。これからは、夫婦仲良く」
                           けちかみ「びぇーくしょん。」
けち「おまえーっ。ていしゅがだいじな話をしているときに、くしゃみなんぞしやがって   くしゃみなんざあする女は、かみさんでもなんでもない。でてけーっ。」
けか「うえーん。」
番「おいおい。またやりなおしだよ。」
(まくがしまる。)


場面四

(上手よりまくひき5がさぶとんをもってでてくる。かんばんをめくって上手へさる。)
(上手から名人登場。おはやし。)
名人「(間)えー、夫婦げんかといいますと、いぬもくわないともうしますが、もとをた   だせば、なにかとささいなことではじまるもんでございます。おとしをめした夫婦   たでも、つまらぬことでけんかが始まることもあります。あるとき、おじいさんと   おばあさんがふたりなかよく茶をすすっておりましたら、かべの穴から、ねずみが   ちょろっと顔を出しました。
   ばあさん、みたかね。今のはおおきなねずみだったねえ。
   なにをいってるんですよ。おじいさん。ずいぶんちいさな、ねずみでしたよ。
   ばあさんはどこをみてるんじゃ、おおきなねずみじゃったよ。
   いいえ、ちいさなねずみです。
   いいや、おおきい、おおねずみじゃ
   いいえ、ちいさい、こねずみ
   おおきい、
   ちいさい、
   大じゃ。
   小です。
   大
   小
   大
   小
   そこへ、さきほどのねずみがかおをだして
   ちゅう。(おじぎ)」
  (おはやしとともに下手へ)
  (下手からまくひきが出てくる。)
ま5「これをもちまして、おしまい、おしまいー。」
(登場人物、舞台裏に整列し、まくが開くとさいごのあいさつ)


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