他界のお気楽アナザーワールド

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劇台本でござ~い3「お化け長屋」

「お化け長屋」                 
                     
                          作  他界 
 登場人物

 幕引き兼ナレーター1(拍子木・口上)

幕引き兼ナレーター2(ご隠居)

     落語家1(まくらの話・最後の落語)    

     落語家2               

     けちべい(長屋のオーナー)        

     けちべいのかみさん            

     熊(大工、いやみで暴れん坊。実は)    

寅吉

竹庵(目医者)

     八さんのかみさん               

     八さん 

     浪人さん  

     定吉(丁稚どん)

     番頭(番頭さん)   

ご隠居

場面一 場面二 場面三
定吉・八かみ 熊・八・けちべい・寅
定吉・番頭 熊・八・けちべい・寅・番頭
定吉・けちかみ
定吉・番頭
定吉・竹庵
定吉・番頭

1定吉ぼけ 2熊いばり 3医者相談  4熊だまし  5実は熊は




場面一(幕前)                           
                                     1
   (上手からまくひき登場)  
ま1「今から劇が始まりますが、落語劇も今回でパート3ということになります。」  
ま2「今回は、去年の三軒長屋に続く、長屋ものの第2段ということになります。」
ま1「○○さん。じゃあ、今回もなんとか長屋ってつくんですか。」           
ま2「そうです。そうです。そうなんです。」
ま1「何長屋なんですか。」
ま2「今回は・・・おばけ長屋です。」(うらめしやーのかっこう)
ま1「おっお化けーっ。おばけこわーい。」(まるくなる)
ま2「○○さんってけっこうこわがりなんですね。」
ま2「それでは、まずは、落語家の登場です。」(上手へ去りながら看板をめくる。)
ま1「おおーい。まってくれー。」(ま2うらめしやーで振り向く。)
ま1「ぎゃーっ。」(二人上手へさる。)
   (上手よりおはやしにのって落語家12がでてくる。)
落1「えーっ、まいどばかばかしいお笑いを一席。」
落2「えーっ、おばけでございまして、おばけと申しますとこわいものと相場が決まって    おります。」
落1「そうは申しましても、こわいもの全部がお化けというわけではありません。地震やか   みなり様は自然のものですし、こわい先生やこわいお母さんなんかは一応人間の仲間   でございます。」
落2「人がうらみで出てくるのは、ゆうれいのたぐいでして。お化けというともう少しかわ   いい連中になります。」
落1「からかさ、ちょうちん、大入道。一つ目小僧に、ろくろくび。」
落2「ミイラ男に、フランケン、ドラキュラ伯爵、オオカミ男。」
落1「いったん木綿に、ゲゲゲの鬼太郎、かっぱえびせん食べたいな。」
落2「とまあ、いろいろなお化けがおります。」
落1「さあて、私どもがいつまでも説明していても話はすすみません。」
落2「さてさてどんなお化けが登場するか。まずは、いつもの定吉どんの登場で。それで    は、」
落全「おあとがよろしいようで。」
  (落語家、下手へさる。)
  (まくひき、かんばんの紙をめくる。)
ま1「それでは、はじまりはじまりー。」(ひょうしぎをならす。)(まくがあく。)

場面二(セットA)

(まくがあく。)
(舞台上手、定吉が店の前でそうじをしている。)
定「あーあ。やんなっちゃうな。そうじばっかりさせられて。」
(そこへ下手から、八かみが登場する。)
八か「ちょいとごめんよ。」
定「あれ、八さんのかみさんだ。何しにきた!」
八か「何しにきたって、お酒を五合ほどもらおうと思ってね。」
定「お酒え?」
八か「だってあんたんとこは酒屋でしょ。」
(定吉の後ろ、上手から番頭登場)
定「おおーっ。そかあ。うちは、サッカー屋だったんだ。サッカーボールはいかがですかあ。  ゴン中山のサイン入りジュビログッズもあるよ。」
八か「もう、定吉さん。いつまでもボケてないで、さっさとお酒を売っておくれよ。」
定「お酒ねえ。売ってやってもいいがねえ。まあ、うちには売るほどあるからねえ。」
番「定吉ーっ。」
定「ひえーっ。ばっ番頭さん。」
番「八べいさんとこのおかみさん失礼いたしました。お酒をおもちくださいませ。」
八か「それじゃ失礼するよ。」(八か下手へ)
番「またおこしください。」(定吉逃げようとする。)
番「おまちっ。」
定「ひっ。」
番「定吉。お前ここに奉公にきて、何年になるんだね。未だに店番もできないのかい。」
定「へい。」
番「お客様のいうことは何だってはいはいって素直に聞くもんだ。売ってやっても良いなん  て生意気な。商売人はおもちいただけるんですか。ありがとうございますって言うんだ  よ。」 
定「へっへい。」
番「いいかい。お客様には失礼のないようにするんだよ。」
 (番頭おこりながら上手へ。)
定「へいっ。へい。まーったく番頭さんてば。いつも怒ってばっかり。ありゃ鬼だ。」
(定吉一人でぶつぶつ。)
 (下手から、けちかみ登場。)
けか「あれまっ。なんだかくも行きがあやしいねえ。こりゃ一雨くるねえ。」
定「あっ。けちべいさんのかみさん。」
けか「あっ。定きっちゃんじゃないかい。」
けか「あっ。そうだ。一雨きそうなんだけど。かさかしてくんないかい。」
定「かさですかあ。かさなんかあったかなあ。」
けか「どっかさがせばあるよ。・・・。だってあんたんところかさやなんでしょ。」
(さかやの看板を指さして。)
定「か・さ・や。おーっ。あーっ。うちはかさやだったんだ。知らなかった。」
定「えーっと。かさかさかさ、っと。かさあった。」
けか「かさがあっらた。かさはある。かさないわけじやないから。かさかさないわけじゃな   いって。だから、かさかしてもらうよ。ありがとよ。定きっちゃんておりこうだね    え。」 (けか下手へ去る)
定「へーいっ。どうぞおもちください。ありがとうございました。」
定「いやあ。おりこうだなんて。てれちゃうなあ。いやあ、前からぼくって天才かなあ。な  んて思っちゃったりなんかりしちゃったりして。いやあ、おりこう・・・。」
 (と言っているあいだに上手から番頭さんが)
番「定吉、何だかそうぞうしいけどお客さんかい?」
定「へい。けちべえさんとこのかみさんが・・。」
番「ほうめずらしいねえ。あのけちのけちべえさんとこのけちけちのかみさんが酒を買いに  きたのかい。」
定「いえ。かさをかりにきたんです。でお客さんに失礼がないよう。素直に貸しました。」
定「でね。ぼくのことおりこうだなんていっちゃったりなんかりしちゃって・・くっくっく  っ・・。」
番「定吉っ。うちは酒屋だよ。かさのレンタルショップじゃないんだよ。」
定「だけどあそこにかさやって・・・かいてあるし・・。」(とぶつぶつ言っている間に番頭  が自分のかさがないことに気が付き)
番「定吉っ。お前よりにもよって私のお気に入りのかさを・・・。けちべいさんとこに貸   したらもう返ってこないよ。あーっ。もーっ。」
番「いいかい。定吉よく聞くんだよ。今後金輪際。だれが来ても何も貸しちゃいけないよ。
  傘かしてくんないって言われたら、もう皮がはがれてボロボロですって。言うんだ。そ  れでも借りたいって言ったら、そうさねえ。骨がボキボキであっちこっちから飛び出し  ていて、とてもお見せできるようなもんじゃありません。っていうんだよ。あたしゃ頭  が痛くなってきた奥で休ませてもらうよ。」
 (番頭上手に去る)
定「ちえっ。またおこられちった。」
(下手から竹庵登場)
竹「ごめんください。ごめんください。」
定「ごめんください。ごめんください。ってうちはお面屋じゃないよ。なんだ目医者の先   生のちくわだ。」
竹「これこれ定吉さん。ちくわではない竹庵だ。・・・それはそうと、番頭さんは」
定「番頭さんは、奥で寝ているよ。」
竹「おかげんでも悪いのかな。申し訳ないが長屋の寄り合いがあって、番頭さんをお借りし  たいのだが。」
定「番頭さんを借りる?」
竹「いやいや、番頭さんのお顔をお借りしたいということですよ。」
定「顔を借りる・・・・。・・・・・。かさないよ。」
竹「そんなことを言わないでぜひ、番頭さんも承知の上ですから、」
定「えーっと、ちよっと待っててね。えーっと。番頭さんは体中の皮がはがれてぼろぼろで  とてもお貸しできません。」
竹「うえっ。そりゃ大変だ。私も医者のはしくれ。見てみましょう。」
定「だめだめ、骨もボキボキで体のあっちこっから飛び出しているんですよ。」
竹「うーっ。うえっ。なんだか気持ちが悪くなってきました。」
定「番頭さんはいばり過ぎですからね。いっつも角だして怒ってねえ。ありゃあ、きっと怒  り病だね。だいたいぼくのようなおりこうをばかだばかだって・・。」
(番頭上手から登場し、定吉の後ろに)
竹「定吉さん。後ろ後ろ。」
定「へっ。後ろ?」(大きな動作で振り向く。番頭それに合わせて移動。)
(タイミングを合わせて正面を向き合う。)
定「わーっ。お化けーっ。」番「わあーっ。」
番「定吉ーっ。お前ってやつは。」
竹「番頭さん。お体は?」
番「どうも竹庵先生。わざわざお迎えに来てくださったんですか。」
竹「あっ。まあ。」
番「おっと、寄り合いの時刻に遅れてしまいます。まいりましょう。」
竹「はっはい。わかりました。」
(定吉おこられないと胸をなでおろすが)
番「定吉さん。私が帰ったら・・・・わかっていますね。・・・。」(指をボキボキ)
(番竹、下手に去る。)
定「わあどうしよう。どうしよう。こまったぞーっ。だれかたすけてよーっ。」
「どうしよう。・・・・・。・・・・。」
(幕が降りる)



場面三 幕の前
(下手から、寅、熊、八、浪人が登場。)
八「ひゃーっ。こわかったねえ。」
寅「ああ。浪人さんが子どもだましだっていうから。」
浪人「いやあ。寅どの申し訳ない。」
八「おいら金輪際お化け屋敷なんか。入らないぜ。」
寅「八さんの言うとおり。井戸の中から幽霊がでてきたとき少しちびっちまったい。」
浪人「見せ物小屋のおおいたちやろくろ首はいかにも作り物でしたが、あとのお化け屋敷は  なかなかでしたな。」
熊「あーあ。くだらない。見せ物小屋もお化け屋敷も少しもこわかねえ。」
八「えーっ。熊さんは怖くなかったのかい。」
寅「そう言えば、怖がってぎゃあぎゃあ騒いでいたのは。」
浪人「せっしゃ浪人さんと。」
八「おれっち八さんと。」
寅「おいら寅さん。」
寅「熊さんはと言えば・・・。」
浪人「何だかやけに静かでしたね。」
熊「あったりまえだ。おまえら見たいな臆病者といっしょにするない。」
浪「熊どの。いくらなんでも臆病ものはぶれいであろう。」
八「そうだいそうだい。熊さんのいばりんぼう。」
寅「そうだ。こわいのが普通でお前の方が変わってんだい。」
熊「ばーか。俺様が優秀でおまえらみたいのを唐変木っていうんだ。」
(熊さん、走り出し上手へ。振り向いて)
熊「ばーか。弱虫。」(上手へ)
寅「生意気な野郎だねえ。」
八「おいら、頭にきた。」
浪「ああいう人を協調性がないというか。自己中というか。ああーっ。・・そうだ寄り合いの  時刻です。」
寅「おうっ。そう言えば長屋の寄り合いがあったっけな。」
八「遅れるとけちべいさんがぐーちぐちぐーちぐち。いうよ。急ぎましょう。」
寅「がってん。」
寅「そーれ。えっほっえっほっ。」
八「えっほっえっほっ。」(上手へ去る)
 (同時に幕が開く。)

場面四(セットB)
(舞台やや下手にはけちべいさんとかみさん。やや上手には、番頭さんと竹庵先生、ご隠居 さん。)
隠「それにしても、浪人さん方おそうございますな。」
竹「八さん、熊さん、寅さんも。」
け「なんでも、みんなで見せ物小屋に行くとか。」
けか「お化け屋敷にも行くんだって、なかなか怖いって評判だよ。」
番「物好きですねえ。」
竹「私は医者ですからね。お化けなんて非科学的なものは信じません。」
け「わたしゃお化けがいたら、つかまえたいもんですなあ。お化けなら飯も食わないし、夏  はエアコンの代わりになるし、冬は火の玉で暖房してもらえるし。」
けか「おまえさん。けちなことを考えてんじゃないよ。お化けがいたら見せ物にして儲ける   のが一番さね。」
隠「相変わらず、けちな夫婦ですなあ。」
(上手から、浪人。八。寅。)
浪「もうしわけござらん。」
八「遅くなってごめんなさい。」
番「何です。みんなそろって遅れてきて。」
寅「それが、かくかくしかじかってわけで。」
八「もう熊さんてば、私らを臆病者とかばかとか。」
浪「作り物を怖がってると、拙者まで愚弄したでござる。」
け「熊さんは、なんだかいつもひねくれてるねえ。」
けか「一度がつんといってやんなさいよ。」
番「熊さんは口で言ったくらいで聞くような人じゃありませんよ。」
隠「確かに。」
けか「藪の先生なんか良い知恵はないんですか。」
寅「熊の奴、こらしめてやりましょうよ。」
隠「おおっ。竹庵先生なら、何かお考えが。」
八「竹庵先生は学者先生だからね。」
竹「いやいや私はただの目医者。熊さんをおどろかすようなことは・・・目医者。
  そうだ。みなさんちょっと待っててくださいよ。」(竹庵後ろを向いて何か。)
け「藪先生何してるんです。」
八「学者先生。」
竹「八さん私を呼んだかい。」(竹庵振り向く。額に目玉がついている。)
八「わあ。おばけー。」
寅「わーっ。三目小僧だーっ。」
けか「ひえーっ。」
竹「はっはっはっ。」(言いながら、額の目をはがす。)
竹「これは義眼と言ってな。目医者で使う偽物の目だよ。」
けか「ほんとだ。よーく見れば。」
八「なーんだ。おどろいて損しちゃった。」
番「でっ。それをどうするんです。」
竹「これをみんなのおでこにつけるんですよ。」
け「なるほど。そいつで熊の奴をおどかして、がつーんですな。」
寅「こいつあ。おもしろいや。みんなで三つ目お化けになって熊さんをとっちめるってわけ  か。」
八「でも熊さんこんなんで、おどろくかなあ。」
隠「見せ物やお化け屋敷と違って、良く知っている人間が化けるってのは怖いものですよ。」
竹「それでは、みなさん。熊さんが来る前に。」
寅「熊公のぶったまげるすがたを想像すると・・・うひょひょひょっ。」
番「どうです。似合います。」
け「おっ、なかなかのもんだ。」
けか「おまいさん。」(うまく目がつかない。)
け「わあーっ。化け物ーっ。」
けか「失礼しちゃうよ。まだすっぴんだよ。」
隠「静かに・・・。」
竹「熊さんが来ますね。」
寅「よーしみんな準備だ。」
(それぞれちらばり、後ろ向きに。)(上手から熊が)
熊「おくれてごめんよ。」
熊「あれみんなどうしたい。」
熊「背中なんか向けちまって。」
熊「おいっ寅なんなんでえ。(肩に手を)こっちをむきゃああがれっ。」
寅「ばーっ。」
熊「わあーっ。ばっばけもんだあ。」
熊「てえへんだ。番頭。寅のばかが、三目のばけもんに。」
番「こんな顔かい。」
熊「わあ、みんな番頭も三目お化けになっちまってるぞう。」
全「こんな顔かい。」
熊「わあーっ。信じられない。」
熊「みんな三つ目のばけもんだったのかあ。」
けか「すごい効果だね。」
竹「これほど、うまくいくとは。」
八「熊さんこわがっているよ。」
熊「わあーっ。・・・うえーん。うえーん。」
寅「熊公ついに泣き出しちまったよ。」
八「ちょっとやりすぎたかなあ。」
けか「ちょいとかわいそうになってきたね。」
熊「うえーん。うえーん。そうだったのか。みんな三目だったのか。」
け「おいおい熊さん。」
熊「そうか。そうとは知らず。」
竹「いえ、ちがうんですよ。」
熊「そうとは、知らず今までかくしていたけれど、」
番「なんです。」
熊「おれも三つ目だったんだあ。(熊はちまきをとる。なかから目が。)」
寅「わあーっ。本物の三目だあ。」
け「わあー。ばけものだあ。」
八「おれらの目は作り物だーい。」
寅「みんなにげろーっ。」
全「わあーっ。」(それぞれ上手下手へ引っ込む。)
(真ん中にぽつんと残された熊。)
熊「とんでもないことになっちまった。今までずっと秘密にしてきたのに。」
熊「なんでえなんでえ。どうせおれはお化けさ。どうやったって人間と仲良くなれるわけが  ない。」
熊「この長屋の連中は、みんないいやつばかりだった。ずっとここでくらしたかったなあ。」
熊「今までいばっていたのも。お化けのおれは、人間にはきらわれるってわかってからだ  い。もうここにはいられないなあ。」
(上手下手のそでからのぞくみんな)
八「熊さん・・・。」
浪「熊殿。」
けか「熊ちゃん。」
熊「みんなおれはお化けなんだぞ。こわがってにげろい。」
竹「熊さんは熊さんですよ。」
寅「そうだい。三目になっても熊公は熊公だい。」
隠「ひとはもともと、それぞれみんなちがうんですよ。」
八「でも目が三つあるのはめずらしい。」
け「ばかよけいなことをいうんじゃない。」
番「そうだよ。みんなそれぞれなんですよ。うちの定吉なんか頭の中が変わっているけど、
  やることなすことどじばかりだけど、毎日おねしょもするけど、どうしてかわいいやつ  なんですよ。」
寅「そうだよ。けちべいさんだって、けちでいやみでいばりで、鬼のような人ですけど一応  長屋のオーナーだし。」
け「なんだ寅。お前に言われたかないね。お前だって意地汚いは、不潔だわ。性格はねじ曲  がってるわ。でべそだわ。」
隠「まあまあ。あんたらがもめてどうする。」
竹「そういうことだから。熊さん。みんなあんたが三目だってきにしませんよ。」
浪「さきほどは、びっくりしただけです。申し訳ござらん。」
熊「みんなすまねえ。こんなおいらでも仲間にしてくれるのかあ。」
寅「あたぼうよ。友達に三目お化けがいるなんて、粋じゃねえか。」
八「そいつあいいや。」
(みんなで笑い合う。)
熊「みんな、ありがとう。本当にありがとう。」
 (幕閉まる)
(下手から、けちべい登場。上手からまくひき1が。)
け「しかし、熊さんが三目お化けだったとは、見せ物小屋を作って商売すれば、本当にもう  かるかも。・・・・。ねえ、まくひきさん。」
(まくひき看板をめくっている)
ま「ばあーっ。」
(まくひき、ふりむくとのっぺらぼう。)
け「わあーっ。のっぺらぼー。今のは冗談です。ごめんなさい。」
(けちべい下手へさる)
(まくひき1は上手へさる。)
(上手から名人登場。)
落一「(間)えー、今日のお話は、お化けのお話でした。」
落二「世の中には科学だけではわからない不思議なこともございます。」
落一「UFO、超能力、神隠しに、オーパなどなど。」
落二「でもやっぱりお化けや幽霊が一番こわいですね。」
落一「わたくしどもの知り合いに、こわーい体験をした人がおります。」
落二「仮に小原英雄さんとしておきましょうか。」
落一「英雄さんのお父さんは、いつもおみあげを買ってくる人で。その日も子ども達に、シ   ュウマイを一箱。」
落二「晩御飯にみんなでつまもうと、台所においておきました。」
落一「晩御飯の時間になりまして、小原さんのお父さんシュウマイのふたを開けてみますと、   なぜか一個たりない。」           
落二「英雄ちょっと来なさい。」
落一「何です。お父さん。お前このシュウマイ、つまみ食いしたな。」
落二「ぼくつまみぐいなんかしてないよ。」
落一「そんなこというなら。見て見ろ。」
落二「お父さんが、ふたを開けますと今度は二個。へっています。」
落一「こっこれは、どうしたことだ。」
落二「お父さんはぞぞぞーっ。としてふたをしました。」
落一「英雄。これはお化けシュウマイだ。お前開けてみて見ろ。」
落二「英雄さんは受け取ったシュウマイの箱のふたを一息に開けました。」
落一「わあーっ。からっぽだあ。お化けしゅうまいだあ。」
落二「お父さん。落ち着いて。」
落一「何だ英雄。」
落二「シュウマイが全部ふたに張り付いているよ。」
(二人おじぎ)
(名人一二下手へ)
   (上手からまくひきが出てくる。)
まく1「おしまい、おしまいー。」
まく2(拍子木を打つ)(登場人物、舞台裏に整列し、まくが開くとさいごのあいさつ)


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