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テーマ:テレビドラマ
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ドラマ『グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』を見た。刃牙については自分も思うところがあるので、自分語りもしつつ、本作の感想を書いていきたい。 ![]() WOWOWオリジナルドラマ グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ DVD-BOX [ 松本穂香 ] このブログに来る人のほとんどは検索で来るのだろう。わざわざ検索窓に「刃牙 ボーイズラブ」とか「刃牙 腐女子 やおい」等と打ち込んで来る人なんだろうから、いまさら刃牙についての説明は不要だろう。 自分語りをすると、僕が刃牙に出会ったのは中学2年のとき、ちょうど最大トーナメントが終わったころである。ちょうど、クラスに熱心な刃牙信者がいて熱心に布教活動をしていたのだ。 僕も試しに読んでみて・・・ハマった。 死刑囚編の開始をコンビニで立読んだ記憶があるから、たぶん、1か月もたたないうちに40冊近くの単行本を読んだのだろう。暇な中学生だったというのを抜きにしても、それだけに刃牙は面白かった。 ![]() グラップラー刃牙(1)【電子書籍】[ 板垣恵介 ] さて、ドラマ『グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』であるが、BL、つまりボーイズラブが好きな腐女子の主人公(28歳)が、これまで敬遠していた刃牙を読み始め、どっぷりハマる…という内容になっている。 主人公が刃牙の話をし続けるだけでも十分以上に面白いのだが、それだとドラマにならないので、主人公の勤務先での人間関係、特に主人公に思いを寄せる後輩男子との交流なんかが描かれている。 このドラマにおける見どころは、当然ながら刃牙を語る主人公なので、ほぼ僕の感想部分は腐女子から見た刃牙について共感できる部分、解釈違いとしか思えない部分を指摘していきたい。 まず、第1に刃牙について主人公は「ジルベール」と評している(ドラマ第2話)。 俺は知らなかったが、ジルベールと言うのは昔の少女漫画『風と木の詩』に登場する、悪魔的美少年のことだそうだ。転じて、ジルベールというのはBL業界で魅力的な、男にモテモテのキャラと言うことなんだろう。 ![]() 風と木の詩 (1)【電子書籍】[ 竹宮惠子 ] 確かに、刃牙の世界には思わせぶりな描写がないではない。第1話で刃牙が愚地独歩の拳に「CHU」と口づけするシーンや、戦いの興奮を性的興奮に置き換えて説明する場面なんかがそうだ。 ただ、それは違うと思う。刃牙が独歩の拳に口づけするシーンは、「それほどの余裕がある」があるという以上の意味はないだろうし、戦いの興奮を性的興奮のように説明するのも、読者に対する説明の工夫以上の物はない。 そして、登場人物がみな刃牙に夢中なのは、別に刃牙が性的に魅力的だからではない。刃牙は地下格闘技のチャンピオンなのだから、刃牙に勝つことは最強という称号の特急券みたいなものだからだ。 なので、作中のキャラが刃牙を性的な目で見ているとか、そういうのは解釈違いなのだろう。 どうしてこんな発想になるのだろうと思っていたが、かなり象徴的なシーンがある。 それは第3話である。 刃牙が自分語りをするシーンがある。 「男子はね__。誰でも一生のうち一回は地上最強ってのを夢見る」 ![]() グラップラー刃牙(38)【電子書籍】[ 板垣恵介 ] これに対し主人公は、「この一般化する感じが苦手…」と評するのだ。 僕にとってこれは衝撃だった。 この刃牙の発言は、なんどか作中で語られている。人として生まれ、男として生まれたからには、誰だって最強を目指す。ただ、みんなそれを諦めてしまうのだ。それは、幼いころガキ大将に負けたき、親父のゲンコツを受けたときかもしれない。もしかして、格闘技系の部活動を始め、みじめに敗退したときかもしれない。いやいや、タイトルマッチで敗退したときかもしれない。 ハッキリ言うが、僕だって最強になりたいと思ったことは1度なんかではきかない。何度も考えたことがあるし、行動もしている。 僕は今でこそ平均身長くらいだが、小学校のときはクラスで2番目に身長が高く、小学校のころは柔道では市内で2番目の強さだった。強くなりたい、金メダルを取る妄想をして楽しんだことだってある。 中学・高校では柔道部がなかったので剣道をやり、二段まで取った。柔道ほど才能はなかったのだろう、さほど強くはなれず、悔しい思いをしたものだ。それで、大学以降は剣道をやっていない。 強くなれないとあきらめたのだな。 こういう僕だからこそ、「最強になりたい」という思いは理解できる。刃牙の「男子はね__。誰でも一生のうち一回は地上最強ってのを夢見る」というセリフには強い共感を覚えるし、最強になるため訓練を続け、そして地下格闘技のチャンピオンにまでになった刃牙には尊敬の念すら覚える。 それを、このドラマの主人公は「一般化するのが苦手」などと言ってしまう。要するに、この刃牙のセリフに共感できないのだろう。 そういえば、僕が中3のころ、進研ゼミをやっていた。進研ゼミでは勉強ばかりではなく、娯楽的な冊子も配られたのだが、その中に「中3男子に少女漫画を、中3女子に少女漫画を読ませて感想を言い合わせる」といいう企画があった。その中に、刃牙があった。 確か、刃牙を読んだ中3女子の感想は散々なもので、「主人公の動機や考えが分からない」、「戦ってばかりでつまらない」というものだった。 僕は思わず笑ってしまったものだ。「最強になりたい」という思いについて、男ならばそれ以上の動機の説明は不要である。もう、「お金が欲しい」とか「SNSでいいね、が欲しい」という気持ちと似たようなもので、これ以上分かりやすい動機はない。そして「戦ってばかりでつまらない」も論外である。戦っているから面白いのだ。 僕は言わせれば、刃牙という作品の魅力は、その没入感にあると思う。 刃牙を読んでいるときだけ、僕は刃牙になって、誰よりも強くなることができるのだ。 現実世界では貧弱な体しか持っていなくても、刃牙を読んでいる時だけ、僕の体は鋼鉄となり、無敵の力を手に入れることができる。 また、大人になると「成長する」、「昨日より優れた自分になる」ということはひどく難しいのだが、刃牙を読んでいる時だけ、僕は刃牙といっしょに強くなっている、成長の喜びのおすそ分けを味わうことができる。 思えば、刃牙の身長は168センチだから、日本人の平均くらいで、格闘家としては小柄である。だからこそ、平均身長の読者は刃牙に自分を重ねて、投影して快感を得ているのだろう。 もちろん、自分の分身として刃牙の物語に投影させるキャラは、刃牙でなくてもいい。範馬勇次郎でも烈海王でもいいが、とにかく強いキャラクターがいい。だって、投影する対象は僕の代わりに暴れてくれるのだから。だから、とにかく強いキャラに人気が出る。 恐らくは、ドラマの主人公は、というか女性たちはこういう楽しみ方ができていないだろう。 過度な一般化と言われればそれまでだが、男の子(かつて男の子だった場合も含む)は、だいたいこんな風に刃牙を楽しんでいると思う。 そうしてみると、ボーイズラブ的な楽しみ方と言うのは、恐らくは作者も想定していないのだろうが、なんとも面白いものがある。 そういえば結構笑ったのが、推しキャラの私服がダサいことで主人公がかなりのショックを受けるシーン。 僕としては、正直言って私服のカッコいいとかダサいとかは、心の底からどうでもいい。そのキャラが強いのか、弱いのか。カッコいい必殺技があるのかないのか、というところが大事なのであって、ファッションセンスはどうでもいい。 こうしてみると、同じ作品を読んでいても、感性と言うものは全然違うものなんだな…。 ![]() WOWOWオリジナルドラマ グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ DVD-BOX [ 松本穂香 ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.01.17 16:41:34
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