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2019.01.03
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カテゴリ:歴史

物語 ウェールズ抗戦史 ケルトの民とアーサー王伝説 集英社新書 / 桜井俊彰 【新書】

サブタイトルの「ケルトの民とアーサー王伝説」につられて手を出した。
アーサー王はけっこう好きなので。

本書では、アングロ・サクソン人のイングランド侵攻から、デューダー朝の成立まで。およそ1000年をケルト人(混血も進んで途中からウェールズ人)の視線で描いてる。
ウェールズは、アングロ・サクソンやノルマン人によって追いやられていて、何人もの英雄が武力や政治力で戦うのだが、どうしても負けてしまう。アングロ・サクソンと戦ったアーサー王なんかがまさにそうだ。いや、アーサー王という人物は現実にはいなかったとすれば、アーサー王はウェールズ人にとっての抗戦のシンボルなのだ。

本書では何人ものウェールズ人の英雄を描いているのが、大きく3人を取り上げると、ジェラルド・ウェールズ、オワイン・グリンドール、最後にヘンリー7世だ。

ジェラルドは、武力を持って戦ったという英雄ではなく、宗教上のポストを巡って争ったという感じ。僕は正直、読んでいてあまり読んでて感情移入はできない。ただ、著者はジェラルドをテーマに本を出しているので、思い入れがあるのだろう。

次に、オワイン・グリンドールだ。彼はシェイクスピアの『ヘンリー四世』のやられ役だ。
実は、シェイクスピアは一時期読んでいたのだけど、当時はそれほど印象に残っていなかった。ただ、彼もまたアーサー王とも肩を並べる英雄だという。負けたことは間違いないにせよ、死体が見つかってない、希望は残ってるというのがアーサー王っぽい。

最後に、ヘンリー7世ことヘンリー・デューダーだ。ウェールズから出て、ついにはイングランド王になった彼を、著者はアーサー王の再臨として、特に熱を入れて書いている。彼について書く前に、ウェールズの赤い龍の伝説まで丁寧に解説して、彼こそが赤い龍、アーサー王の再臨なのだと。
ヘンリーを見ていく上で大事なのは血筋だ。祖父のオワイン・デューダーが滅んだウェールズ王家の血筋を引いているのは別にいい。イングランドに対する力はさほどないから。だが、このオワインが、ヘンリー5世の未亡人と結婚してしまう。これで生まれたのがエドモンド。ヘンリー5世の未亡人は、フランス王女だったから、血統的な価値は跳ね上がる。
で、エドモンドはイングランド王家の女性と結婚して、ヘンリー・デューダーが生まれる。女系とはいえ、ヘンリー・デューダーはエンドワード3世の玄孫になってるわけ。
薔薇戦争のごたごたで王族が死んでいき、最終的に、王位継承権を持ってるのはリチャード3世とヘンリー・デューダーだけ。リチャード3世はシェイクスピアが大悪人として描く人物ではあるが、最終的にヘンリーはフランス王家の力も借りて、ついにはイングランド王になってデューダー朝を開く。

著者は、ヘンリー7世を、ウェールズからイングランド王になったわけで、アーサー王の再臨として描いている。実際、ウェールズ人気が高かったというし、そう見た人もいたのだろう。
だが、ヘンリー7世は、ウェールズの学校や議会でウェールズ語の使用を禁止していたりする。著者は、ウェールズ人気が高いヘンリー7世だから、ウェールズ人も「ヘンリーがやるなら仕方ない」となったわけで、他の王ではできなかった政策だ、と評しているが、ウェールズの力が衰えたことは間違いないだろう。
それに、イングランド人たちが、ウェールズに支配された、と思ったかどうか…。父方の祖父のオワインを生粋のウェールズ人としても、父方の祖母はフランス人。父のエドモンドはウェールズのハーフでしかないし、母親はイングランド王家の人間だからヘンリー7世はウェールズとフランスの血がそれぞれ4分の1、残りの半分はイングランドだから。
この辺は、興味を持ったので、他の文献も見て考えていきたい。

読み終えてつらつら思うのが、シェイクスピアの影響力だ。
もう、リチャード3世といえば大悪人だというふうに反射的に考えてしまうし、オワイン・グリンドールと言われると、「あぁ、シェイクスピアで出てきたやられ役だね」くらいに思ってしまう。
僕でさえこの程度だから、本国イギリスではこの影響はもっと強いのだろう。

佐藤賢一の『英仏百年戦争』では、「シェイクスピアの影響で、イギリス人は百年戦争で勝利したのはイギリスだと考えている人がかなりの割合でいる」という状態を指してシェイクスピア症候群と評していたが、日本で言う司馬遼太郎で歴史を学んだという感じだろう。
正月レベルの余裕があれば、シェイクスピアも読みたいものだ。


英仏百年戦争 (集英社新書) [ 佐藤賢一 ]






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最終更新日  2019.01.03 11:46:00
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