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2019.03.29
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カテゴリ:歴史
上巻に引き続いて感想を書いていく。
すでにペルシア帝国に勝ってしまっているわけで,下巻はインド編である。


アレクサンドロス大王東征記(下) (岩波文庫) [ アリアノス ]

さて,このインド編は上巻の感想でもチラリと触れたけど,著者アッリアノスのインドを分かっていない感が半端ではない。
ギリシア神話の英雄ヘラクレスだとか,ワインの神,ディオニュソスが攻めてきたという話なんかが紹介されていて,「嘘だろ…」と思ったが,Wikipediaでを見る限り,ディオニュソスの方はどうもマジっぽいですね。
といっても,アッリアノスもこのへんには懐疑的で,「インドのヘラクレス」とギリシアのヘラクレスとは別人なんじゃないかという表記したりしてはいるのだけれど。

色々と見どころはあると思う。戦記ものなわけだし,例のごとく最前線で戦うアレクサンドロスは瀕死の重傷を負ってしまう場面なんかもある。
ただ,僕が気にして読んでしまうのは,マケドニア兵がついに帰りたいと主張してボイコットを始めるところ。
このへんは,アッリアノスも詳細に記述している。そして,古参兵のコイノスの諫言を受けて,ようやくマケドニアに帰ることになるのだが,コイノスは諫言から3日後に死んでしまうのだ。
これ,本当に病死なんですかね。暗殺されていませんよね,と思わないでもない。むしろ,死期が近いと思ったからこそ命がけで諫言をしたとみるべきなのかどうなのか。アッリアノスは「3日後に死んだ」という事実を記載しているだけだし,Wikipediaにも特に何も書いていないが,僕としては気になるところではあるのだ。

そして,ガドロシア砂漠の横断である。この砂漠の横断には60日かかり,凄まじいまでの死者が出た。
アッリアノスは,「史家の伝えるところでは,彼のひきいる軍勢がアジアの地で耐え忍んだ苦難という苦難もそれらを全部足してさえ,この地で彼らが嘗めた艱難辛苦と比較するにはとうてい足りないということだ」(6巻24)と紹介している。
過去の英雄を見るにせよ,軍勢はみな壊滅し,砂漠を突破した際にセミラミスが20人だけ,キュロスも7人だけしか生き残らなかったという。これを聞いたうえで砂漠に入るのだから,アレクサンドロスはどうかしていると思う。英雄へのあこがれというにも,ちょっと無茶だ。
で,結局軍勢はかなりの打撃を受けている。
アッリアノスはかなりの人数が死んだ,としか書いていない。しかし,阿刀田高の小説だと,4万人で砂漠に入り,突破できたのは1万5000人,半数以上は死んでいたはずだ。春秋の筆法というやつで,アレクサンドロスファンのアッリアノスが人数を書くのをやめたのかもしれない。

また,この砂漠のエピソードとして,部下が1人ぶんだけの水を発見し,アレクサンドロスに献上したものの,アレクサンドロスが1人だけ飲むわけにはいけない,と水を捨てた話が美談として書かれている。
このエピソードを初めて目にしたのは,学研の歴史漫画だったと思う。当時小学生の僕も,なんか釈然としなかったものだ。
ちなみに,田中芳樹は『アルスラーン戦記』において,智将ナルサスの口を借りて「全く美談ではない。兵站をおろそかにして兵を危機的状況にしている時点でダメだ」というようなことを言わせていたはずだ。
なお,アッリアノスは普通に美談として扱っているが,僕は田中芳樹説に票を投じたい。

さて,どうもアレクサンドロスについて批判がましい事ばかり書いてしまったが,なんというか,ダレイオスを倒したあたりでもう絶頂を過ぎている感がしないでもない。下り坂の状況でもなお,インドに攻め入るだけのことができるので,やはり大英雄だとは思うのだけど,欠点も多く,まさに暴君的なところがある。
英雄というものは,知れば知るほどダメなところも見えてきてしまって,たとえば三国志中級者あたりがしきりに諸葛孔明の無能論を唱えたりするようなところもあるのかもしれないけどね。

付録的な感じでついている『インド誌』は,これもファンタジーの世界が入ってて面白いが割愛。
個人的に,インドのヘラクレスとやらの活躍は本当に気になるところ。こいつ,『インド誌』によると老境に入ってから,自分の娘と子ども作っているとか,僕の知ってるヘラクレスとずいぶんと違うのだ。
気が向いたら,インドのヘラクレスにういて簡単なまとめでも書いてみようかな。誰もこんなんまとめてないみたいだし。





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最終更新日  2019.03.29 16:08:21
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