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2019.06.07
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カテゴリ:漫画の研究
漫画の主人公というのはたいてい必殺技を持っているものだ。だが,必殺技を身に着けたからといって本当に強くなれるのだろうか。現実にそんな必殺技を持ってるスポーツ選手だとか格闘家がいるだろうか。
この辺についていろいろと考えることもあったので考えたことをまとめていく。

必殺技というのは文字通り必殺の威力がなければならない。必殺技があたれば、それで勝負が決まるか、それに近い状況になるものだと定義しよう。なお,ビームを撃つとか,人間に絶対できないようなものは除く。
さて,そんな必殺技といえばいろいろあるが,名作『あしたのジョー』の主人公である矢吹丈の必殺技といえばクロスカウンターだ。これは相手の力を利用して、超強力なパンチを叩き込む技だ。
しかし、相手だって,当然にジョーのクロスカウンターへの対策をしてくる。


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まず、1つの対策が、「必殺技を破る技」の開発だ。
特にそれが顕著だったのはウルフ金串戦だ。ウルフはダブルクロスという技を使い、ジョーのクロスカウンター を破ってみせる。これに対しジョーはさらにダブルクロスをやぶる,トリプルクロスという新しい必殺技を使い,ウルフを倒すのだ。


(『あしたのジョー』電子版7巻,127/227)


こんな風に漫画では,「必殺技A」が登場すると,これを破る技が登場し,結果として「必殺技A」は使えなくなる。
そこで新しい「必殺技B」が生み出されるのだが,この「必殺技B」もいつか破れる。そして次は…と,この流れはキリなく続けられることになる。『巨人の星』なんかがそうだ。

また第2の対策として、地味だが、「必殺技を打たせない」というのがあるだろう。
ジョーのクロスカウンターの場合、相手が左ストレートを打ってこないと成立しないのだから、左ストレートを打たなきゃいい。のちに力石徹はアッパーカット主体に戦うなんて方法を取ってきた。

これほど対策をされると、ジョーとしてもクロスカウンター を決め技にはできない。実際、中盤以降のジョーはクロスカウンターも使うけど,基本的には普通に戦い,普通のパンチで対戦相手をマットに沈めている。

こういう必殺技の最大の問題点は、必殺技を破られれば,使い手は大ピンチに陥る,という点だ。
第2の方法、「必殺技を打たせない」ならば他の技で戦うことはできるが、第1の方法、「必殺技を破る技」が出てくると、場合よっては即敗北につながる。

いろいろ考えた結果,最後にたどり着くのは必殺技の否定というか,必殺技に頼ってはいけないということになる。いや,どの技でも相手を倒せるよう,ひとつひとつの技の完成度を高めると言い換えてもいい。
ここで、梶原一騎は『あしたのジョー』の連載が終了後に『紅の挑戦者』という漫画を始めたが,その漫画の最終決戦を前にこんなシーンがある(『紅の挑戦者』10巻,147ページ)


そして,実際に最終決戦は普通に,一切の必殺技なしで戦うことになる。
(同243ページ)。



字面を見ればわかる通り,「オーバヘッド・キック」だとか「人間風車キック」はかなり荒唐無稽な技だ。一撃必殺の威力はあったが、「必殺技を破る技」だとか「必殺技を打たせない」の対策をされるため,主人公は一気にピンチに陥ってしまうことが多かった。
似た展開は同じく梶原一騎の野球漫画『おれとカネやん』にもある。
「2段ホップ」という魔球を投げる主人公はこの魔球を攻略されたが、最終的には本格派の投手として復活して物語は完結する。別に、豪速球を狙ったコースに投げられればそれで三振は取れるのだ。
さらに似た展開は『斬殺者』にもある。梶原一騎は必殺技を使わない方向にシフトしたのかもしれない。

ここでスポーツの世界から将棋の世界に目を移す。
将棋ラノベ,『りゅうおうのおしごと』で,居飛車からの相掛り戦法を最強と信じる弟子を,主人公が諭すシーンがある。

りゅうおうのおしごと!3【電子書籍】[ 白鳥 士郎 ]

男ならだれでも,たった一つの,究極の必殺技を極めたいと思うだろう。
けれどその戦法を手にした瞬間,プロの世界でそれは無用の長物と化す。
そして最強になったはずのその男は,一つしかない武器を取り上げられ最弱の存在に転落するのだ。
(『りゅうおうのおしごと』3巻第2譜,「振り飛車」より)
そのうえで,主人公は相掛かり戦法にこだわらず、どの戦法でも勝てるように,弟子を指導する。その名のとおり、「相掛かり」は相手が応じないと成立しないから、「必殺技を打たせない」対策はかなり容易なのだ。
現実の将棋の世界を見ても,羽生善治はオールラウンダーで,どの戦法でも使える。そんな羽生の恐ろしいところは「棋風由来のあだ名がない」というところだ。例えば米長邦雄の「泥沼流」とか谷川浩司の「光速流」がある。これが羽生にはない。なんでもできるからだ。

最後に,金庸の武侠小説『笑傲江湖』における最強の剣法は「独孤九剣」だ。
この「独孤九剣」の極意は「技なしが技ありに勝つ」であって,決まった型がない。肉を切るには肉がなければならない。技がなければ技を破ることはできない。自由自在,融通無碍に繰り出す剣法こそが最強なのだ。


秘曲笑傲江湖 2/金庸/小島瑞紀





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最終更新日  2019.06.08 09:09:08
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