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カテゴリ:法律
「当職は、保全・執行事件が大好きです」という、ヘルシングに登場する少佐みたいなはしがきから始まるのがこの、『失敗事例でわかる! 民事保全・執行のゴールデンルール30』である。
こんな、保全・執行が好きなんて、これはよほど変わった方ではないかな、と思う。僕なんて保全・執行は大嫌いだもん。多分、たいていの弁護士は嫌いだよ…。 失敗事例でわかる! 民事保全・執行のゴールデンルール30 [ 野村創 ] そもそもなんで保全・執行が嫌いな弁護士が多いのだろう? 僕の場合は端的に経験不足というのがあるかもしれない。保全・執行なんて年に1件あるかないかだもの。たぶん、経験不足は僕以外の弁護士のほとんどがそうだと思う。 保全は必要があればやるしかないけど、執行は努力で避けることができる。例えば、執行の前提には債務名義、つまり判決を取らなきゃならないのだけど、たいていの事件では和解で終わらせてしまうからなぁ…。 なので、いつまでたっても保全・執行には苦手意識がある。 本書の特徴はサブタイトルに「失敗事例でわかる!」とあるとおり、失敗事例をつけてくれるところ。 例によって目次を書き出すとこんな感じになる。 第1章 保全事件の申立てにまつわる失敗 第2章 不動産の仮差押え、競売事件にまつわる失敗 第3章 債権等の仮差押え、執行事件にまつわる失敗 第4章 仮処分、明渡執行事件にまつわる失敗 怒涛の失敗ラッシュで、1人の弁護士として読んでて辛くなる…。 冒頭失敗事例の1で、全面勝訴したものの被告の破産で判決が紙屑になった事案、クライアントからのクレームに対し弁護士が心の中で、「取れるとか言ってない。勝てると言っただけだ」とつぶやくシーン(12ページ)なんかは笑いとともに、激しい共感をさせられる…。 また、失敗事例22の添付命令が飛んでしまうという事案は、背筋がヒヤリとする。 僕の個人的な経験だと、不動産の保全・執行はほぼ経験がないので、この部分は非常に興味深く読めた。 座右に置いておいて、保全・執行事件が来たときに該当部分を軽く読み返す感じにしようかな、と思う。もちろん、保全・執行が嫌いな弁護士としては、なるべくお世話になりたくはないのだけれど…。 一方で、著者も「架空の事例だから…」とはしがきで断っているが、「これを失敗例といのは酷だよ」というものや、「こんな失敗例、あるか?」というのもある。 例えば、失敗例19の、債権差押えの割付の失敗例、「単純割付はするな」という形になってるけれど、これを失敗というのは言い過ぎではないか…。決して、僕がこの失敗をしたから私情でケチをつけるわけではない…。そうだとも、僕もこれで悲しい失敗をしたけれど、諦めずに2度目の執行で全額回収したという経験がある。 同様に後半の仮処分の失敗は、ほぼ仮処分を怠って漫然と訴訟やったケースが多くて、それはダメだろ、という気持ちになる。そうは言っても、失敗例で学ぶ体裁になってるから仕方はないんだけれど。 ところで、事例が30も掲載されているのだけれど、意外にも養育費の差押え事案は1つも載っていない。 養育費の差押えは第三者からの情報提供というシステムができて、民事執行法の改正で大きく変わるところだ。 これから僕は養育費の回収には力を入れたいと思ってるんで、執行の勉強は続けていきたいかなぁ。 失敗事例でわかる! 民事保全・執行のゴールデンルール30 [ 野村創 ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.03.12 23:39:14
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