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2020.09.08
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カテゴリ:歴史
「あれは歴史書ではない,小説だ」という批判は大きいものの,恐らく「塩野七生の『ローマ人の物語』で古代ローマを学んだ」という日本人は少なくないだろう。
カエサルの時代やらネロの時代やら,飛び地のようにして古代ローマに触れる機会はあるものの,日本人が書いたものだと塩野七生の著書以外で全編通してローマ史に触れられる書籍というのはあんまりないように思う。
僕も,『ローマ人の物語』は,全巻読んだ,とまではいえないものの,10巻かそこらまでは読んでいる。だが,途中で挫折してしまったので,そのあたりの話をしていきたい。


ローマは一日にして成らず──ローマ人の物語[電子版]I【電子書籍】[ 塩野七生 ]

色々と理由はある。全15巻と長すぎる。冗長だ。また,隙あらばインフラ話をするのだが,第10巻の1冊をまるごと使って延々とインフラの話をする巻はどうも辛かった記憶が大きい。
ただ,最大の理由はローマ人至上主義とも言える歴史観がどうも肌に合わないからである。
塩野七生はどうやらローマ人が好きなんだなぁ,というのが行間から読み取れるし,ローマ人を最高の民族だと思っている節がある。そのあたりは別にいいのだが,それ以外の民族をかなり下に見ている傾向が強い。
僕が色々と我慢できなかったのは,「蛮族」という表現である。

『ローマ人の物語』は,塩野七生の言う「蛮族」との抗争の歴史という側面がある。
塩野七生はどうも,地の文で「蛮族」という言葉を連発しているし,どうもこの「蛮族」が好きじゃないようだ。
適当に『ローマ人の物語』を手に取って,適当に開いた頁をみるとこうだ。

「また,蛮族やペルシアという強力な外敵への対処に集中せざるをえなく,国内の治安にまで手が回らなかった時期が長く続いたことも,盗賊集団の横行を許した原因の一つであった」(塩野七生,『ローマ人の物語13,最後の努力』新潮社25頁)」

北方蛮族の侵略が激化した三世紀からすでに,騎馬戦力を主とする蛮族に対抗するためにローマ軍も,伝統であった重装歩兵から騎兵に,軍の主戦力を転換せざるをえなくなった(塩野七生,『ローマ人の物語13,最後の努力』新潮社234頁)」

この「蛮族」という呼称には2つの面から問題があると思う。

1つは差別的ではないか,とういこと。
蛮族というのは要するに,文化的な程度が低い,野蛮な民族の意味だ。
たとえば,テレビニュースでキャスターがお隣の国の人を「蛮族」と言おうものなら炎上は避けられない。蔑称だし,差別の意思がありませんでした,は通用しないだろう。
別に,小説の中でカエサルがガリア人に対し,「あの蛮族どもめ・・・!」と発言するというのはそれはいい。そういう差別意識が当然の世界観なのだし,キャラクターの個性も出る。でも,地の文でいちいち蛮族呼ばわりする必要はないだろう。
だいたいにおいて,ローマ人がそれほど文化的で素晴らしい民族なのか?
なんか好戦的で戦争にはやたら強く,どんどん領土の拡大をしてくる。剣闘士が殺し合う見世物を楽しんだり,嘔吐してまで美食を腹に詰め込んだりする。これも野蛮ではなかろうか。

2つは,この「蛮族」というのがどの民族のことを指しているのか,一読してわかりにくくなること。
1つ目の引用を見て分るとおり,塩野七生はペルシアやカルタゴなんかを蛮族とは基本的に言わない。傾向を見る限り,塩野七生が「蛮族」という呼称を使うのはケルト人やゲルマン人だ。恐らく,著者から見てこれらの民族は文化的な程度が低いというのだろう。著者には文脈によって「蛮族」というのが分るのだろうが,読者にとってそのへんは明確ににならず,どの民族か読み取れない。

こんなことを言うと,言葉狩りだと言われるだろうかもしれない。
「鮮卑」だとか「蒙古」だとか,中国人は異民族の名前に対し,マイナスイメージのある漢字を当ててきていたし,日本語にも「南蛮」という言葉が残っている。こういった歴史的な用語も差別的だから使うな,ということにもなりかねない。
ただ,塩野七生が「蛮族」という言葉を使うのは,そもそも必要性が感じられない。素直にゲルマン族だのケルト人だの,もっと適切で明確な言葉を使えばいいだけである。
そんなわけで,読んでストレスがたまるため,『ローマ人の物語』は途中で挫折してしまった。気にしなければ良かったような気もするのだけれど。



最後の努力──ローマ人の物語[電子版]XIII【電子書籍】[ 塩野七生 ]





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最終更新日  2020.09.09 09:26:54
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