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カテゴリ:歴史
ヘロドトスの中巻を読んだ。この辺から,メインのペルシア戦争の話が展開し,その関連で少しずつギリシアの話がなされていくのだな。
![]() 歴史(中)改版 (岩波文庫) [ ヘロドトス ] この岩波版だと,4~6巻が収録されているのだが,内容的にはおおよそこうだ。 4巻 スキタイの話 5巻 イオニア反乱 6巻 マラトンの戦い あまり重要ではないのだろうけれど,『ヒストリエ』的に気になるのが4巻のスキタイの話である。 うさんくさい話も,真実かもしれない話もごちゃぐちゃに語られている。 ちょっと気になったのが,女戦士アマゾン族の話である。 スキタイ系のサウロマタイ人たち,僕はてっきり蛮族だろうと思っていたのだが,たまたま流れ着いたアマゾンたちを妻にするため,言葉も通じないのに徐々に距離感を詰めていくのだ。 ついに「お前たちを妻にしたら,もう他の女とは結婚しない」という,一夫一婦制のプロポーズをしたところ,アマゾンたちが「親と同居はイヤ」というので親から生前に遺産分けをしてもらい,自分たちの国を捨ててアマゾンたちと生活を始めるというのだ。 きっと,これは史実じゃないだろう。女戦士アマゾン族なんて神話の中の話だろう。 恐らくは,サウロマタイ人の女たちが男同様に馬に乗って,狩猟をしたり戦場に行くということの説明付けにアマゾン族を持ち出したんだろうけれど。 このエピソードはヘロドトス的にはさほど重要な話じゃないのだろう。本筋はあくまでペルシア戦争だから。 ただ,この点はエウメネウスを主役にした漫画『ヒストリエ』的にはひっかかるとこもあるのだ。 エウメネウスはもともとスキタイ人の両親から生まれ,幼いころに親と引き離されてカルディアに来たという設定だった。 なのでエウメネウスも序盤はスキタイと何かと縁があり,アレクサンダー大王の東方遠征の際に自身のルーツも辿ることになるのか,と思ったが・・・。連載がそこまでいくのだろうか,疑問である。 ![]() ヒストリエ(1)【電子書籍】[ 岩明均 ] 話は変わるのだが,ちょっと気になったのがヘロドトスにおける古代中国との関連性である。 まず,1つめは臥薪嘗胆である。 ペルシア王ダレイオス1世はサルディスがアテナイ・イオニア連合に占領された際に報復を誓い,食事のたびに給仕に「王よ,アテナイ人を忘れるな!」と言わせたそうな。 これはまさに呉越の王たちが報復を誓うため,あえて苦痛と屈辱に耐えて雪辱をはたした臥薪嘗胆の故事とそっくりである。なお,呉越の王たちと違って,別にダレイオス1世は雪辱を果たすということもなかったというのは差異を感じる。 2つめに背水の陣である。 ペルシア戦争でカリア王マウソロスが「川を背にしてペルシア軍と戦えば,退却できない兵たちは持って生まれた以上の勇気を発揮するに違いない」と進言するも,これが退けられて大敗してしまうのだ。 背水の陣という危険性の高い作戦が忌避されたのは分らんでもないが,この作戦が受け入れられて大勝した韓信との対比を感じさせる。 一応,ヘロドトスもこの背水の陣については肯定的で,「この作戦が最も良かったのではなかろうか」と評していた。 ![]() 小説十八史略(一)【電子書籍】[ 陳舜臣 ] この2つの類似性については,別にどっちがどっちのパクりというわけでもないだろう。 洋の東西を問わず,大望を果たすためあえて屈辱を受けるとか,勝利のためにあえて危険性の高い作戦を採用するというのはありそうなことだ。 しかし,いずれも中国では成功したのにペルシア戦争ではうまくいかなかったというのは考えさせられる。 安易に英雄のマネをしてもうまくはいかんだろうなぁ・・・。 ![]() 歴史(中)改版 (岩波文庫) [ ヘロドトス ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.07.06 15:41:31
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