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2021.08.17
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カテゴリ:歴史
司馬遼太郎ほどの国民作家になると,盗作被害にも遭ったりする。
20年ほど前,2002年に『覇王の家』の一部を丸写ししたとして,『遁げろ家康』という小説が絶版・回収の憂き目に遭うという事件が起きた。当時の僕は高校生。このとき,いつか『覇王の家』を読もう,と思ったが,あれから約20年が経過したわけだな。


覇王の家(上)(新潮文庫)【電子書籍】[ 司馬遼太郎 ]

自分語りはここまでにして,『覇王の家』の話をしよう。
司馬遼太郎作品は,実写化したものも多く,Wikipediaなんかを見ると詳細に登場人物やあらすじを解説していたりもするのだが,本作はほとんど何も語られていない。さほど評価が高くないのかもしれない。
最近,司馬遼太郎を読んでいて思うのだが,登場人物を生き生きと描く小説がある一方,史実を淡々と描く史伝というものがあるとすれば,司馬遼太郎は異なる2つの作風を持っているように思う。
例えば,『燃えよ剣』や『竜馬がゆく』なら小説で,この『覇王の家』なら史伝だろうか。
読んでいて,さほど心が躍るシーンはない。淡々と流れていく感じである。

本書のamazonのレビューを見ていても,「ガバナンス論や人心掌握論としても読める名著」と,自己啓発書ならともかく,とても小説に対する評価と思えないものがトップに出てくる。
やはり,本書は楽しみのために読む小説と言うより史伝であって,著者の歴史観を知るためのものなんだろうな,と思う。

いまひとつ,僕が夢中になれなかった理由としては,司馬遼太郎が読者の感情を揺さぶると言うよりも,淡々と描いていくいくというところもあるが,主人公の家康という人物をあまり格好良く描いていないからだとも言える。
一言でいえば,司馬遼太郎が描く家康は,ひどくケチで,派手な立ち振る舞いを好まず,地味でとにかく保身に長けているといった感じである。
せっかく今川義元が討ち取られ,人質の身から解放されたかと思いきや,この機に攻め入る前に「今川家のために・・・」と行動をするわけで律儀というより,保身に汲々としているようだし,信長に指示されたからと言って長男を切腹させるというのは保身の最たるものだ。
タイトルが『覇王の家』となっているところ,本書を読んでいる限り,家康にあまり英雄の気概というものを感じない。例外的なのは武田信玄と戦った三方原の戦いくらいのものだ。
この辺は書き方の問題で,たとえば「韓信の股くぐり」のように,大望がある人物があえて屈辱的な状況を受け入れるような描き方もできたと思うのだが,司馬遼太郎はそうしない。
なんかこう,保身に汲々としているうちに天下を取ったように感じさせられる。

終わり方はいつもの司馬遼太郎ように,唐突である。
小牧長久手の戦いが終わった後,突然に大坂夏の陣終了まで時間がぶっ飛ぶ。家康は74歳。そして死亡して終わりである。
年数で言うのならば,小牧長久手の戦いが1584年で大坂夏の陣終了が1616年なのでざっと30年くらいをぶっ飛ばすわけだ。
ここの30年についても,「韓信の股くぐり」のように,情熱を燃やしながら秀吉が取った天下を虎視眈々と狙い続けるようにだとかいくらでも書けたと思うのだ。
そこらは司馬遼太郎の興味の外だったのかもしれない。


覇王の家(下)(新潮文庫)【電子書籍】[ 司馬遼太郎 ]





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最終更新日  2021.08.17 17:29:06
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