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法律と漫画のブログ

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ラノベ

2020.02.15
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カテゴリ:ラノベ
本編のアニメは終わってしまい,藤井聡太ブームも落ち着いてきたものの,りゅうおうのおしごとに新刊が出た。また感想などを書いていく。


りゅうおうのおしごと!12【電子書籍】[ 白鳥 士郎 ]

12巻は大きく2つの話を交差的に,同時並行で進めていくことになる。
1つが,姉弟子である空銀子の三段リーグ編。
2つが,主人公・九頭竜八一の帝位編。
あとは箸休めみたいな感覚でロリ話なり,恋愛描写なりが入っていく。

まず,順番を入れ替えて九頭竜八一の帝位挑戦編。
架空のタイトルだけど,八一は帝位のタイトル保持者,於鬼頭曜(おきと・よう)に挑むのだ。
この於鬼頭帝位は昨今のソフト将棋で研究している棋士である。
経歴を見ると,初めてソフトに負けた棋士で,四段昇格の祝勝会に来なかった最初の棋士で,丸刈りにする盤外戦術なんかもしれくるから,誰かなとは思うけど,特定はできないかな。
ここは,主役である八一がすさまじい才能を見せるという,いつもどおりの展開になる。

次に,空銀子の三段リーグ編。
この話が思いのほか長くて,だいたい10巻くらいからやっているから3巻分は使っているわけだ。将棋漫画は『五五の竜』だとかだとか『ものの歩』だとか色々あるものの,たいていはこの三段リーグを大きく扱う物が多い気がする。この三段リーグ編を突破して四段になるとプロ棋士になるわけだから,三段と四段の間には大きな壁があるわけだ。『月下の棋士』くらいだろか,この三段リーグをあまりやらなかったのは・・・。

以前から指摘していたが,この『りゅうおうのおしごと』は負ける側,才能のない側に強い感情移入をさせられてしまう。
誰もが必死ではあるのだけど,今回の三段リーグだと,年齢制限で今回で昇段できなければ後がない青年だとかもいる。
このあたり,12巻のあとがきを読むと,著者の挫折体験がそうさせているのかもしれないと思う。
弁護士になろうと思って法学部に入り,12年間勉強して,それでも弁護士になれなかったという。僕は弁護士をやっているので,このあたりの気持ちはなんとなく分かる。僕は逆で,作家になりたかったけど才能になりたかったから弁護士になるため勉強をしだけど,色々と考えさせられるところ。

はっきり言って,主人公である八一の対局より,三段リーグのほうが圧倒的に盛り上がる。
それを思わせるシーンではないが,於鬼頭がこんなことを言っている。

「もし,あいつ(八一)の視点で書かれた物語なんてものがあったら,それはきっと・・・どんな壁でも努力で越えられるという,さぞ希望に満ち溢れたお話なんでしょうね。でも,書いている本人は気づいていないんだ。一番高い壁が自分自身だってことに。最高の喜劇ですよ。最高に残酷な」(「感想戦」より)

まるで『りゅうおうのおしごと』を否定するかのような台詞ではないか。昨今は異世界転生ものでチートな,ずば抜けた才能を持つ主人公が増えたものの,八一はまさにそういうタイプの主人公だ。
本人はもちろん血を吐くような努力をしているのだろうけれど,そんな努力なんてみんなしているのである。報われない努力というのはいくらでもあるわけだ。
もしやすると,作者は八一のことを嫌い・・・・・・は言い過ぎとしても,ほかの「才能がない」とされている負けてしまったキャラたちほど好きではないのではないかとすら思えてくる。たとえば,今回三段リーグ編で活躍した鏡州飛馬や,女流を目指していたころの桂花は心理描写が深くて,まるで作者が自分を投影させているのではないか,と思えたものだ。
そういえば,前巻から八一は幼なじみだった銀子と両思いになり,交際が始まるわけだが,銀子って「才能がない」ことになっているキャラなんですよね。たとえば,才能のあふれる雛鶴あいを選ばないあたり,作者の好みや嗜好があるのならと,色々考えてしまう。

ところで,あとがきを読んでいると著者は挫折の体験として弁護士になれなかった経験を語りつつ,執筆したラノベにたいし,「流行の二番煎じ以下の物し書けず,作家として呼べるほどのものではありません」と言っている。
これは少し悲しかった。この二番煎じ以下の作品というのは商業デビューした『らじかるエレメンツ』のことを言っているのか,2作目の『蒼海ガールズ』のことを言っているのか,もしやするとアニメ化までした3作目『のうりん』のことを言っているのか?
僕はこの全ての作品を読んできたけれど,どれも味があって好きだった。司法試験の勉強の合間,息抜きに読んだ『蒼海ガールズ』に癒やされたものである。あの時期に読んだ小説なり漫画にはずいぶん助けられた。リンク張っておくから,せめて『蒼海ガールズ』くらいは各自買って読んで欲しい。


蒼海ガールズ!【電子書籍】[ 白鳥 士郎 ]


らじかるエレメンツ【電子書籍】[ 白鳥 士郎 ]


りゅうおうのおしごと!12【電子書籍】[ 白鳥 士郎 ]






最終更新日  2020.02.15 14:54:59
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2020.01.22
カテゴリ:ラノベ
異種族レビュアーズですが,アニメの方も好調のようですね。今のところ,放映禁止になったとかBPOに苦情が入ったという話は聞かない
そんな問題ありありの異種族レビュアーズなんだけど,漫画だけじゃなくて小説の方も結構面白い。この期に感想を書いていこう。


異種族レビュアーズ まりおねっと・くらいしす【電子書籍】[ 葉原鉄 ]

小説版の特徴というのは,第1にサキュバス店描写の所だろう。なにせ,漫画版は大人の事情でエッチなシーンを描写できないため,基本的にサキュバス店は受付でのやりとりの後,プレイ描写は省略されてレビューでプレイ内容を想像させるという内容になっている。そのため,漫画版では受付嬢に人気が集中したりするのだけど,その最たるはフェアリー店だろう。人気投票でサキュバス嬢ではなくて,受付嬢が人気№1になってしまうのだ。
そんな中,プレイシーンをしっかり描写できるのは小説版の利点だろう。
しかし,個人的にはエロシーンよりむしろ,小説版の最大の面白さはサキュバス店以外のダンジョン攻略だとかスタンクたちの冒険シーンやキャラの掘り下げがされているところかな。


内容だけど小説版はメインストーリーとして,漫画版2巻で登場したゴーレム専門店の外伝というか,後日談になっている。
どういう話かというと,ゴーレム専門店は自作でエロ人形を作り,プレイできるという店なのだ。シロウトが行くと「抱けないブス」しか作れないが,レビュアーズのカンチャルのような手先が器用な者ならば,どんな美女でも,また知り合いでも思うさまプレイできるというのだ。
レビュアーズは行きつけの酒場の看板娘,メイドリーさんゴーレムを作ってプレイしてしまったのだが,後日談としては,彼らが作ったメイドリーさんのゴーレムが自我を持ってしまうという物語。
そんなメイドリーさんゴーレムの捜索なんかをしながら,情報収集だったり,スタンクの呪いを解除するためだったり,寄り道だったりしながらサキュバス店に行く・・・。というのがおおざっぱなあらすじ。

個人的に,最大の見どころは新キャラ,アシュラ族のヴィルチャナだな。
このヴィルチャナは「男として生まれた以上,剣の高みを目指したい」と言って,ことあるごとにスタンクに決闘を挑むのだ。ただ,スタンクの方は戦闘に興味がないから適当にあしらうのだが。
それでも,6本腕の特性を活用した剣術と戦うスタンクはかっこいいですね。興味深いのが,「6本の腕があっても,互いの肩が干渉をしあって間合いは狭い」とスタンクが戦闘中に見破るシーンですね。
なんとなく,説得力がある。この小説が異種族レビュアーズだということを忘れてしまいそう。
そして,普通の漫画ならともかく,この作品は異種族レビュアーズである。ヴィルチャナは武術ばっかりやっていて童貞だったので,スタンクたちに汚されてしまうのだ・・・。このあたりも爆笑である。

本当に,小説版というのはスタンクというキャラをかなり掘り下げていると思う。主人公でありながら,他のキャラの個性が強すぎて,スタンクってあんまり個性がないんだよね。だいたい,「性欲が強い」というのが個性でもなんでもない世界観がヤバい。
この小説版ではスタンク視点が多いせいか,戦闘にも長けているところだとか。そして,小説版1巻の話だけど,寝取り専門店で細かな台本を作ってプレイするのだけど,シチュエーションプレイに没頭してしまって精神を病んでしまうのだ。こういう馬鹿なところ,本当に好きである。


異種族レビュアーズ まりおねっと・くらいしす【電子書籍】[ 葉原鉄 ]






最終更新日  2020.02.17 10:40:31
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2020.01.06
カテゴリ:ラノベ
18年もの間新刊が出ていなかった十二国記,ついに新刊である『白銀の墟 玄の月』が出た。全4巻とかなり長いのだが,ようやく読み終わったので感想を書いていこう。


白銀の墟 玄の月 第一巻 十二国記 (新潮文庫) [ 小野 不由美 ]

これまでのあらすじだけど,泰国はひどく荒れていた。阿選という将軍がクーデーターを起こし,王である驍宗がは行方不明,泰麒も蓬莱に流されていったからだ。十二国記の世界観だと,王がいないと国は荒れてしまうのである。
物語的には,蓬莱から帰ってきた泰麒を主人公としつつ,泰国の立て直しを図るという内容になっている。

それにしても,長い・・・。全4巻というのはかなり苦しい。
僕が十二国記に出会ったのは高校生のころだったか。1作目,『月の影 影の海』もまた上下巻だったのだけど,陰鬱な状態が続く上巻はひどく読むのに苦労をさせられたような記憶がある。ただ,下巻で一気に面白くなるので新刊である『白銀の墟 玄の月』もそうなるのかなと期待はしたが,それでも4巻は長い。
時間がいくらでもある学生と違って,社会人になると自由に読書を楽しめる時間なんぞせいぜい1日1時間あるかないかだからね。1冊に3日程度かけるとして,半月は余裕で必要だ。

で,内容なのだけど何故こんなに長いのかと言えば,ミステリーじみた仕掛けがされているからだと思う。
もともと,泰国の情勢についてはよく分かっていないところが多かった。たとえば,第1にクーデターを行った阿選の動機は何なのか,第2に泰王の驍宗はどこに行ったのかという点。
さらにこの巻では,泰国の支配者になったはずの阿選が政治に感心を失ってしまっているようで,国政をないがしろにしていることが明かされるが。第3の謎として,なぜクーデターまで起こした阿選が政治をないがしろにしているのか,なんていうのもあるだろう。
作中,登場人物たちは延々とこれら3つの疑問について,議論をしはじめたりする。ああではないか,こうではないかと。
例えば,驍宗の行方について,もう死んでいるのではないか。いや,名乗り出ると殺されるので,どこかに身を潜めているのではないか。いやいや,重傷を負って動けないのではないか。こんな話をかなりやっている。
自分用の備忘録的な意味もあって,次の次の段落ではっきりネタバレをしてしまうので,未読の方は次の段落で引き返した方がいいかも。

さて,色々な謎なのだけど,「もっと短くしてくれんかなぁ」というのはどうしてもある。
様々な謎はあるにせよ,普通に上下巻どころか1冊で終わりそうなところもないではない。
ただ,もったいぶって謎についてキャラクターが議論を繰り広げるシーンを読むことで,読者はより一層謎について考え込むことはできるだろう。また,謎が明かされたときの快感は非常に大きくなると思う。たとえば,第1作『月の影 影の海』なんかは上下巻なのだけど,上巻は読んでいて精神的につらい。主人公は延々と苦しい目にあい続ける。現代日本から十二国記の,謎の世界に飛ばされ,誰からも理解されず,信じた人には裏切られ続ける。このドン底を見たからこそ,下巻で物語が収束していくところの快感は大きくなるのだ。
このあたりは,昨今はやりの「異世界転生もの」と対極にあると思う。異世界転生ものだと,主人公はたいていチート能力というか,人並み外れた能力を持っていて,たいした努力をしなくても誰からも好かれ,誰からもチヤホヤされる。だが,十二国記の世界はそうではない。主人公たちはドン底まで落ちるし,簡単にはチヤホヤされることはないのだ。
しかし,繰り返しになるが,全4巻は長い。正直言って,物語が大きく動き始める3巻から読んでもそんなもんだという思いもあるかな。逆に言えば,陰惨で長い全4巻を出せるあたりが小野不由美の信頼と実績なのかもしれない。

そろそろネタバラしに入るけれど,第1に阿選がクーデターを起こしたのは,まとめづらいが驍宗に対する嫉妬とか羨望とか,そんな負の感情である。そもそも,「阿選」というのは字であって本名は朴高。一方で,驍宗も朴綜。天は続けて同姓の者を王にはしないというから,阿選は驍宗の次に王になることがどうしてもできない。そういうこともあって,クーデターをするのだ。
第2に驍宗の行方だけれど,落盤に巻き込まれて日の届かない穴の中にずっといた。これも何度もミスリードがあり,驍宗っぽい,重傷を負った武人が村で匿われたりとか,色々あった。
第3の,クーデター後の阿選が国政をないがしろにしていたのは,いつ驍宗が帰ってくるかわからんとか,その手の事情によるのだ。
このように箇条書きにしてしまうと,一瞬で終わるのだが,前半で謎を広げ,3巻ころから明かされる。
ちなみに,十二国記は巻末に史書を引用したような記載で締めくくるのだが,全4巻の物語を数行で終わらせていて,なんか史書のあっさりした記述の裏には,色々あるものだという気持ちにさせられる。

その他,ミステリ仕掛け以外にも,見どころは色々ある。
泰麒は黒麒麟であり,慈悲深い性質の麒麟とはかけ離れているように描写されている。策謀も巡らせたりもするし,暴力行為も可能である。嘘だってバンバンとつくし,他人を陥れたりもする。
泰麒はさまざまな策を実行するのだけど,そのうちの大きなものとしては「ツノを切られ,麒麟としての力を失っているフリ」をやっていたところか。結構,びっくりさせられるシーンではあった。

面白かったかどうか,と言われれば面白いのだろう。
ただ,長い。時間のある学生向けだし,社会人的には年末年始にでも読むしかないよ。


白銀の墟 玄の月 第三巻 十二国記 (新潮文庫) [ 小野 不由美 ]






最終更新日  2020.01.06 18:06:49
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2019.12.05
カテゴリ:ラノベ
創竜伝の読み返し、ようやくこの13巻で終了である。長かったような気もするが、十代のころハマったラノベ(当時は伝奇小説という扱い)であるだけに思い入れは深い。


とりあえず、内容を見ていくのだが…。正直言って微妙である。
色々あって、2巻にも及ぶ外伝を終え本編に、もとい日本へ帰ってきた竜堂兄弟だが、年長組は京都を拠点に小早川奈津子らと遭遇し、年少組は騰蛇に乗って偵察中にトカゲ兵に襲われる、という筋書きになってる。

見どころは…なんなのかなと思うが、小早川奈津子が征夷大将軍だとかなんとか名乗り始めるところなのかもしれない。既存の権力構造を打ち壊していくさまは圧巻であるから、小早川奈津子を嫌っている僕ですら多少の爽快感はある。
小早川奈津子が好きだというなら、きにいるのではないかと思う。たぶん、田中芳樹も楽しんで描いている節がある。ただ、嫌いな人は「早く本筋をやれ」となるだろうけれど。

そんな創竜伝の13巻の何が微妙かといえば、繰り返し過去の感想でも描いてきたが、敵が弱いというとこだ。この場合の弱さは、戦闘力的な面でもそうだが、魅力の面でもそうだ。たぶん、創竜伝のキャラで人気投票をしたら、ほぼ敵キャラに票は入るまい。だいたいにおいて、敵キャラが何をしたいのかがいまだによく分からない。
10巻で四人姉妹という、世界を牛耳る財閥組織の大君であるランバード・クラークと、それに憑依していた共工はすでに撃退している。なので、スジとしてはランバードに代わる強敵が出てこなければならないのだが…特にそう言ったことはない。
一応、13巻では謎の「閣下」というキャラが出てくるが、これが14巻で戦うキンピなんだな。そういえば、この謎の閣下の正体って13巻だけ読んで分かるようになってたっけか?
もし、分からないようになっていたとすると、読者は閣下の正体を知るために10年以上待たされたことになるな。

さて、これで僕はだいたい2ヶ月くらいで創竜伝の既刊全巻にあたる14巻を読み切ったことになる。ちょうど今年、銀河英雄伝説を読んだので、どうしても比べてしまうが、やはり創竜伝は銀河英雄伝説には及ばないだろう。
いや、まだ最終巻の出てない創竜伝と一応は完結してる銀河英雄伝説を比べるのはフェアとは言い難いが、創竜伝は時事ネタやら社会評論をやりすぎている。作品としての質はどうしても落ちるのだ。






最終更新日  2019.12.05 19:04:53
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2019.11.24
カテゴリ:ラノベ
創竜伝12巻は一応本編という扱いになっているようだが,これもまた事実上の外伝みたいなものである。11巻に引き続き,2連続で外伝が出ている計算になるが,この時期の田中芳樹は創竜伝の本編を進められない状況だったのかとかなんとか,いろいろ考えさせられる。





基本的に辛口の僕だけど,創竜伝12巻については非常に好意的である。
12巻は田中芳樹が好き勝手書いたんだろうな,と思うような内容だけれど,それが非常に面白い内容になっている。
おおざっぱなあらすじだけれど,赤城王との対決の結果,天界から人界に落ちていき行方不明になった青竜王こと始兄さんを捜索すべく,白竜王が北宋の時代を冒険するという内容だ。
実際の所,青竜王はけっこう簡単に見つかって普通に合流しちゃうので,白竜王たちは人間を食べる妖怪退治をメインに活動していくことになる。
最終的には,紅竜王と黒竜王も地上に降りてきて,4竜王全員で妖怪退治にあたるという,豪華な内容になっているのだ。

そんな妖怪退治の脇道も捨てがたい。ちょうど趙匡胤の弟,趙匡義が王の時代なのだけど,この趙匡胤から趙匡義への皇帝位の移動の裏に陰謀があったではないか,とか趙匡義の後継者問題に関する陰謀だとかいった歴史要素が語られている。
しかも,こういった歴史要素はあくまで本編の邪魔にならない程度に入っていて,ちょうどいい具合である。ちなみに,田中芳樹の時代小説にありがちなのは,主人公そっちのけで歴史描写が延々と続くというのがあるが,それに陥っていないのも好評価だ。

本当に,創竜伝についてこの12巻は非の打ち所がないほど完成された小説になっている。
敵の妖怪に比べて竜王たちが強すぎるという問題は相変わらずあるものの,それが物語の面白さを減殺するということは全くない。
竜王たち以外の登場人物,たとえば白竜王の家来となった五仙なども生き生きと描かれているし,また実在の人物だった趙匡義たちの描きっぷりも見事。
田中芳樹の中国歴史小説全体の中でも,この創竜伝12巻はかなり上位に来ると思う。

あと,最後に1つだけ。
たぶん,僕の中で創竜伝12巻の評価が非常に高いことの理由として,「現代日本に対する社会批判がほとんどない」というところにもあるんだよね。創竜伝やら薬師寺涼子を読んでいると,延々と社会批判が入るのだけど,この12巻はそれがない。
舞台が現代ではなく宋の時代の中国だというのがあるだろう。
また,登場人物の口を使って社会評論をしようにも,白竜王たちに現代の知識がないため,社会評論をする余地もないというのもあるかもしれない。


小説十八史略(6) (講談社文庫) [ 陳舜臣 ]






最終更新日  2019.11.24 15:44:41
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カテゴリ:ラノベ
外伝と本編が明確に区別されている銀河英雄伝説なんかと違って,創竜伝は巻数表示の上では本編と外伝が区別されていない。そのため,唐突に外伝が入るのだが,この11巻もそんな外伝小説である。





内容的には,著者の田中芳樹が見た夢の中で読んだ書籍に「銀月王」という単語があったので,それを膨らませて創竜伝の外伝に仕立て上げたということになっている。・・・いや,別に創竜伝である必要はないよね。
見た夢を小説化するとか,そんな企画が通ったという当時(1997年ころ)の田中芳樹の勢いの良さを感じる・・・。

おおまかなストーリーとしては,亡き祖父の友人(演劇系の学園経営者)の依頼で,竜堂兄弟が学園を救うためにやってくるという流れになる。この流れは5巻と同じであり,あんま特筆すべき所はない。
正直言って,この11巻はかなり微妙な外伝になっている。面白さはあんまない。
読むのが相当苦痛で,「しょせん外伝だから,この巻を飛ばして12巻読もうかな・・・」と思ったりもした。
癒やしどころとしては,始兄さんが合同コンパ,つまり合コンで知り合った女の子のことを忘れていたところ。そもそも始も合コンとか行くんですね・・・。


種明かしをすると,銀月王というのは直径20キロを超える巨大な甲虫のような人間を養分とする生物である。どうやら銀月王は宇宙から来たようだが,長い長い時間眠りについており,人間を操って自分の所に運び込ませて捕食しているという感じ。
宇宙から来た意思疎通のできない怪物というテーマがクトゥルー神話とかクトゥルフ神話を思わせるところである。というか,テーマ性は似ているように思う。
ただ,ネットの海を探してみても,僕以外に銀月王とクトゥルフ神話の類似性を指摘している人は見つけられなかった。ただ,2ちゃんで一時期はやった「最強議論スレ」にどういうわけか銀月王がランク入りしている。
この11巻銀月王伝奇の何がつまらんというと,ホラー的な要素がありながら,竜堂兄弟が強すぎて緊張感が欠片もないといういつものやつである。
たぶん,クトゥルフ神話の世界と相容れないのだろうと思う。

最後にひとつ。
始兄さんは講師を常磐舞台学園で「シェークスピアの史劇とバラ戦争」,「中国・宋の歴史と京劇」という講義をしたことが語られている(新書版137頁)。
個人的には,この講義はすごい受けたいなぁ・・・。


薔薇戦争 イングランド絶対王政を生んだ骨肉の内乱 [ 陶山昇平 ]






最終更新日  2019.11.24 15:24:59
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カテゴリ:ラノベ
中国編も終わり,竜堂兄弟は四人姉妹の大君であるランバート・クラークにカチコミをするべくイギリスに向かう。そんなイギリス編がこの10巻である。





これまでもともと小物っぽかったランバート・クラークも牛頭の化け物になったり,牛種は天帝を拐かすか何かして天界を支配しているっぽいことが語られてはいる。そうなのだが,やはり竜堂兄弟にはどうも緊張感がない・・・。
見所はもちろん,ランバート・クラークと竜堂兄弟との対決になるのだろう。
ランバード以外にも,ペーパーマスターだとか石使いといった超能力者も登場し,前座を盛り上げようとはしてくれる。ただ,どうも前座の超能力者はどれもこれも弱いので,あまり盛り上がらない・・・。
唯一ではないけれど,石使いは「綺麗なお姉さん」だからか最新14巻でも生き残っていたりしていて,このあとどうなるのか,気になるところではある。

そして,そんなバトル展開よりも何よりも盛り上がるのが,竜堂兄弟のイギリス観光パートである。
四人姉妹のボスと対決するためにイギリスに来ているはずなのに,ずいぶん余裕である。
ホームズ記念館だとか,いろいろと竜堂兄弟は観光をするのだけれど,そんな中でもひときわ輝いているのが,大英博物館である。盗品の見本市ではないかという意見もあろうが,始兄さんのテンションはだだ上がり。
1巻感想で,「始兄さんは田中芳樹の投影ではないか」と書いたけれど,この大英博物館での始兄さんの立ち回りは完全にそうじゃないのかな・・・。
あのうざったい小早川奈津子が大英博物館の前で挑んでくるんだけど,展示物に忘我状態の始兄さんが瞬殺するシーンとかは非常にスッキリする。正直,外伝で竜堂兄弟といく歴史観光小説なんかがあれば普通に売れる可能性がある。俺は買う。

色々あって作中,ロンドン橋なんかは破壊している田中芳樹だけれど大英博物館やホームズ記念館だとかは無傷である。
いや,よく考えてみればビックボウル(東京ドーム)やフェアリーランド(ディズニーランド),都庁といった近代的な建造物は破壊させるくせに,史跡は無傷だもん。この辺に,「たとえ小説の中でも史跡は壊せない。でも,都庁とかはムカつくからぶっ壊す」という田中先生の好みが見られるところである。


さて,この10巻でランバート・クラークにとりついていた共工は撃退できた。
第1部が4巻までの日本編としたらば,外伝の5巻を挟んで,6巻から10巻までが世界編というかところか。
ここから11,12巻と外伝が続き,13巻が出てから16年の休みに入るのだ・・・。






最終更新日  2019.11.24 12:41:23
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2019.11.15
カテゴリ:ラノベ
7~9巻の3巻にかけて行われた中国編もいよいよ大詰め。
ここから物語の風呂敷がどんどん広げられていき,「これ,ちゃんと話を終わらせられるんですかね・・・?」という内容になっていく。


あらすじだけど,これはちょっと説明がしがたい。現代の竜堂兄弟の話と,過去の竜王たちの話が重層的に語られていくからだ。
まず,現代の竜堂兄弟たちであるが仙界から香港に帰ってきた。ここから四人姉妹と戦うため,黄老たち華僑と無駄な会議をしたり,なんか色々ある。見所は,竜堂兄弟たちが竜に変身し,月に向かって飛び,牛種の巨大ボス,ユウユウ(悠の下の心を抜いて,上に山をつけた漢字を2回)という,漢字変換ができないのとバトルをする。
いつも地球で戦うと無辜の民がバンバン死ぬところ,戦場が月であるから周辺被害の心配をしなくていいのは気楽だね。

一方で,過去の竜王たちの話。僕的には,本編の現代編よりこちらの方が面白い。
姿を消した玉帝の顔を見ようと侵入した青竜王が,赤城王こと次郎真君と1対1のバトルを繰り広げる。
開戦前の,赤城王がこういうのだ。

「紅竜王の妖剣,白龍王の烈剣,どちらも試みたいところだが,やはり青竜王の豪剣と渡り合ってみたい。如何(いかん)?」

このいかにも中二心をくすぐる台詞は,初見のときの僕をひどく興奮させたものである。
また,現代編だと竜堂兄弟は竜に変身して戦うのだけど,ノリは怪獣映画になるところ,過去編だと竜王たちは普通に剣術なんかで戦っていて,カンフーアクションや京劇みたいなノリになる。
もちろん,ライオン対トラみたいな人間以外の戦いも面白いかもしれないが,やはり人間対人間(仙人だとか神かもしれないが)というか,四肢をもった人間どうしのバトルの燃える。

なお,強さ的なことを考えると,赤城王というのは次郎真君の異名である。封神演義なら楊ゼン。
西遊記では孫悟空を倒したことがあり,また封神演義ではナタクと並ぶ周軍のエースである。この孫悟空もナタクも,いずれも竜王と戦って勝っているという強キャラである。
はっきり言ってしまえば,竜王たちは孫悟空やナタクたちにトラウマの1つや2つ持っていてもいいのではないかと思うのだが・・・。
一応,僕は最新の14巻まで読んでいるが,確か孫悟空もナタクも出てきていないはずだ。

以前から指摘をしているが,創竜伝という小説の問題点として,敵が弱すぎるという点がある。いや,竜堂兄弟が強すぎるのか。
たとえば,ここで特撮を見ていくと,1人で戦う仮面ライダーと比べて,5人で戦う戦隊ものだと,戦隊ものは5人でようやく1人の敵と戦うという物語の展開上,戦闘能力は低めに設定されている傾向がある。おそらく,これは物語を作る上での制約だろうと思う。
「仲間が協力して強い敵を倒す」という図式を作るには,どうしても主人公チームを敵より相対的に弱くしなければならないのだ。
ところが,創竜伝という小説ではそれができないようだ。
竜堂兄弟がボロボロになるまでやられ,そこ4人そろってなんとかして勝つ・・・。そんな図式がない。

どこで読んだかうろ覚えだが,竜王というのは水,川の象徴である。孫悟空だとかナタクだとかが竜王を倒すというのは,人類が川を制するという治水工事を表しているとかなんとか。
なので,竜王というのは決して最強格出なくてもいいのではないかと思うのだ。それでも話は作れたのではないかな・・・。
一応,牛種は事実上天界を支配しているようだし,政治力はすごそうなのだけど。

ところで,「ナタク」ではなくて「ナタ」が正しいという指摘はあるだろうが,僕は安能務や藤崎竜で育っているので,どうしてもナタクといってしまう。すまんな。


封神演義 1【電子書籍】[ 藤崎竜 ]






最終更新日  2019.11.15 17:21:08
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2019.11.11
カテゴリ:ラノベ
7~9巻にかけて行われた中国編だけど,田中芳樹も大好きな中国だからとノリノリで書いているんだろうなぁ。この8巻はそんな中国編の真ん中にあたり,かなり面白い展開になっている。



あらすじだけれど,竜堂兄弟は自分たちのルーツをたどり,竜泉郷にやってきた。
竜泉郷事態にはたいした手がかりはなかったものの,仙女に導かれて仙界にやってくる。
仙界は西王母だとか漢鐘離を始めたとした八仙だとか,著名な仙人が幾人も登場し,また仙人の持つ秘密兵器「宝貝」なんかも登場する。
最終的には,タイムマシンで過去の黄帝と蚩尤の戦いに干渉したりする。

上記のあらすじのとおり,8巻はなんとも見所が多い。特に漢鐘離という仙人は竜堂兄弟に負けず劣らず皮肉屋で,また議論を見ていてもたびたび竜堂兄弟をやり込めており,知的レベルも非常に高い。
創竜伝の世界観において,竜堂兄弟を戦闘力や知的レベルで上回るというキャラは等々に貴重である。
さすがに田中芳樹も八仙である漢鐘離に配慮したのか,単純に漢鐘離が好きなのかもしれない。

また,これまでよく分からなかった牛種であるが,結構すごい奴らであったっぽいことが語られる。
どうやら玉帝とかいう天界の支配者はここ数千年姿を見せていないようだが,どうやら牛種に乗っ取られたか,幽閉されたか,死んでいるかということが示唆されている。
正直,蚩尤が白竜王に瞬殺されたり,これまで牛種に強い描写がほぼなかっただけに,敵の強さアピールは燃えるところである。やはり敵が強くないと話が盛り上がらない。

ところで,封神演義でおなじみのマジックアイテム宝貝がこの巻で登場する。
安能務が封神演義の翻訳,という体裁で独自の小説を完結させたのが1989年。創竜伝の8巻が出たのが1992年だから多少の影響があったのかもしれない。
また,仙人キャラについてこの巻では漢鐘離や西王母が登場するが,西遊記の孫悟空や封神演義のナタクといった竜王を打ち負かしたキャラは登場しない。こういう,竜王を打ち負かしたキャラが出てきてもいい気がするのだが,田中芳樹は竜堂兄弟以上のキャラをあんまり出したくないのだろうか・・・。

なお,そんな孫悟空やナタクに勝るとも劣らない次郎真君こと楊ゼンは次に登場する。これはこの次の話だね。



封神演義(上)【電子書籍】[ 安能務 ]






最終更新日  2019.11.11 22:19:12
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2019.10.28
カテゴリ:ラノベ
創竜伝も6巻から第2部の海外編が始まったのだけど,6巻のアメリカ編に続き,7~9巻にかけて舞台は中国になる。田中芳樹は中国ひいきなところがあるが,このあたりは結構楽しんで書いているようである。




おおざっぱなあらすじだけど,竜堂兄弟は竜泉郷を目指して中国にやってきた。なんでも竜泉郷の場所は黄大人の兄である黄老が知っているというので,まずは政治犯として青海省で投獄されている黄老を助けに向かう,という形になる。
話は全然変わるんだけど竜泉郷って『らんま1/2』の呪泉郷と響きが似ているよね。らんまも創竜伝も1987年スタートなので単なるネタかぶりかもしれない。というか,創竜伝以外で竜泉郷という言葉を見ないので,作者の創作なのか元ネタがあるのだろうか・・・。

この巻の見所としては,黄老の破天荒な人物設定だろう。
初対面の竜堂兄弟の前で,黄忠の66代目の子孫を自称してみたり,皮肉屋で楽しい爺さんである。
かなり衒学的で思想的には全面的に賛成しかねるところもないではないが,これはこれである。
ネタバレすると黄老は14巻であっさり物語から退場してしまうのだけど,色々悲しい。

また,黄老よりも先に触れなければならなかったのが,小早川奈津子の登場である。
もともと敵が弱すぎて緊張感がなかった創竜伝なのだけど,小早川奈津子は本当にもったいないというか,物語をぶち壊してきているキャラだと思う。
もともとの出自を見れば,1巻のラスボスだった「鎌倉の御前」の娘で,竜種の血を体に入れているしか超人的な身体能力を発揮するという,スペックだけなら竜堂兄弟にも匹敵する女性である。ただ「身長は続とほぼ等しいが,体重は二倍以上」(新書版32頁)と記載されている肥満体で,55歳のオバチャンである。とどめに,明らかに頭が悪い。
たぶん,菊地秀行の小説にたまに登場するでぶの戸谷順子あたりをモデルにしたんじゃないかと思われるキャラなのだが,どうも好感が持てない。魅力に欠けるのだ。
せめて小早川奈津子は20代くらいと若く,右翼思想を持っていても頭は切れるというキャラにならなかったものか。言うならば,醜い薬師寺涼子といったところ。
正直,僕は著者の「薬師寺涼子の怪奇事件簿」を読んだとき,「えっ,このキャラ小早川奈津子を若く,美人にして右翼思想を左翼思想に変えただけで本質的には同じじゃん?」と思ったものである。
なお,薬師寺涼子については「ドラキュラもよけて通るドラよけお涼」という異名から『スレイヤーズ』の主人公リナの「ドラゴンもまたいで通るドラまたリナ」と名前が似てたり,その破天荒な性格からリナのコンパチではないかと諸説ある。両者とも「悪人に人権はない」とか言っちゃったりするからな。


新装版 薬師寺涼子の怪奇事件簿(1)魔天楼 (KCデラックス) [ 垣野内 成美 ]

創竜伝という世界の構造的な問題なのだけど,右翼的だったり政府よりな思想を持つ者はそろいもそろって人品は卑く,知能は低く,能力はないが傲慢というキャラになってしまっている。ここで「鎌倉の御前」は数少ない例外で,明確な悪人ではあったが大物感があったし,知能は高く,傲慢であるが能力があった。
こういう,魅力的な悪役というのがほしいんだよね。

あと,ランバート・クラークがいろいろあって牛頭人体のバケモノに変身した。
初見のときはあれだよ,「敵方にパワーアップイベントが来たのか!?」と思ったものだが・・・。
このあたりはまた感想を書いていくことにしよう。






最終更新日  2019.10.28 10:20:36
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