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![]() ミッシェル・ガン・エレファント / チキン・ゾンビーズ(1997年) 今までCDをレビューする時に「生々しい」という表現を何度か使ってきた。山弦のアコースティックギターの音やカーペンターズのカレンのボーカルなどが,まるですぐそばで演奏されているかのような存在感を持ちリアルだと感じたときにそう書いた。 それらはいずれも極めてハイファイ(原音に忠実)な音,と言い換えることができると思う。最高の録音技術を駆使してできるだけ元の音をそのまま取り込もうという姿勢で録られたものだ。オーディオの試聴会などで流されることも多い。 そういった意味では,今回のこのCDは試聴会で聴く機会はまずないだろう(笑)。それらに比べると極めて「ローファイ」な印象を受ける。しかし,古いポップスなどでは予算の関係でやむなくチープな機器で録られることがあったが,そういったものとは明らかに異なる音質だ。 アベフトシの印象的なギターとチバユウスケのがなるボーカルだけでなく,ウエノコウジのうなるようなベースもクハラカズユキの重いドラムもきっちりと聞こえてくる。録音された当時の人気を考えても,あえて「ローファイ」な音にこだわって録られていると考えていいだろう。 イギリスのパブロックに影響されつつも独自の魅力を持つその音楽性については,他の人が色々書いていると思うのでここでは省略。一聴すると音の洪水が襲ってくるかのようなその音は人によっては雑音にしか聞こえないと思うが,よく聴くととてもうまく統制され吟味されたものであることに気づく。特に始終魅力的なリフを叩き出しているアベのギターが素晴らしい。ていうか#1とかやっぱかっこええっす!(結局書いてますが・・・) #4は冒頭のドラムからギターリフまで,いかにも「ローファイ」という印象の薄っぺらい音質なのだが,なぜか痛々しいほどの「生々しさ」を感じる。「ローファイ(原音に忠実でない)なのに生々しい(原音っぽく聞こえる)」というこの矛盾は何なのか?その原因には人間の聴覚の仕組みなど色々あるのだろうが,例えばクラシックとロックのライブの音の違いなども影響しているのかもしれない。 原音に忠実な音を出すことがオーディオの目的だとすると,自宅でライブの音を再現することが最終目標になる。一般的にクラシックのライブ演奏は残響音まで計算されたホールで増幅器を通さず行われるが,ロックのライブ演奏はたいてい狭いライブ会場でアンプで目一杯増幅した大音響でなされる。このように元々の生々しさの到達目標が異なるので,ロックではこういった「ローファイ」な音でもリアルに感じるのかもしれない。そもそもロックのライブでなぜそのような音が好まれるのか,という本質的なところはよく分からないが・・・。 いずれにしても,チキン・ゾンビーズの録音は彼らの音に最適であると感じる。それは,次の傑作ギヤ・ブルーズでも同じ印象だ。音場感など,「チキン・ゾンビーズ」より色々と手を加えられているが,その生々しさは変わらない。しかしカサノバ・スネイク以降の作品は,ローファイではあるがリアルさという点ではこの2作ほどのものは感じられないという印象がある。 バンド解散後,チバらの活動が気にはなりながらもしばらく彼らの音楽からは距離を置いていたのだが,最近チバがクハラらと結成したThe BirthdayのRollers Romantics(2006年発表)を聴き,ドラムなどのその乾いた音質が気に入った。楽曲自体の魅力は個人的には「チキン・ゾンビーズ」などには及ばないが,#9や#11,#12などは好き。楽天ダウンロードのこのページの「無料試聴」から全曲試聴できる。もうすぐ2作目のTEARDROPが発売されるようなので期待。 01 ロシアン・ハスキー 02 ハイ!チャイナ! 03 マングース 04 ゲット・アップ・ルーシー(Album Version) 05 バードメン 06 BOOGIE 07 I've never been you. (Jesus Time) 08 COW 5 09 カルチャー(Album Version) 10 サニー・サイド・リバー 11 ブロンズ・マスター 12 ロマンチック(Broiler Dinner Version) 13 I've never been you. (King Time) ミッシェル・ガン・エレファント / GRATEFUL TRIAD YEARS 1995-1997(CD) ミッシェル・ガン・エレファント / GRATEFUL TRIAD YEARS 1998-2002(CD) 輸入盤豊富な「あめりかん☆ぱい」が9/30までメール便送料無料 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年05月20日 18時09分59秒
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