タケノコmaxのパソコンでオーディオ

地図をもとにその土地の昔の姿を読み解いていくという，鳥瞰図の回やこの間の玉川上水の回などを彷彿とさせるマニアックで地味な方向性に，出演者は伊集院光，山田五郎，向谷実。まんまタモリ倶楽部じゃないか・・・と，番組のCMを見て以来妙な好奇心をかきたてられつつも見逃してしまっていたNHK BSの「JAPANナビゲーション」だが，その第2弾の再放送を何とか見ることができた（ちょうど中国の大地震と重なり地震報道に取って代わられてしまい，次の日に放送されたものも大相撲の延長により時間がずれていて，結局最後まで見れなかったのだが・・・）。　タモリ倶楽部のように始終ゆるめの感じなのかと思っていたら，意外と刺激的な場面も多くかなり楽しめた。ちなみにONTVによると，9月16日（火）午後6:00～BS2で渋谷（の地図）を舞台に「JAPANナビゲーション3」があるようだ。



今回の出演者は今尾恵介，山田五郎，水野裕子，ビビる大木で，取り上げたのは多摩川の地図。まずは現在の地図に昔の多摩川の痕跡を探していく。道端に何気なく残る塀のようなものがかつての土手の名残だったり，住宅，公園，駐車場などと道とのわずかな高低差やちょっとした坂が，かつての多摩川の流れの跡だったりする。その地域の変遷が，年代ごとの地図を読み解くことで明らかになっていく。中には伊能忠敬の地図の次に古い，明治初期の地図まで紹介される。とりあえず応急的に作成されたので「迅速図」と言われているらしい（Google Earthはこの迅速図を表示でき，その方法はこちらのページで詳細に紹介されている）。また，道に埋められ表面だけ顔を出しているレールや，線路の分岐の名残である細い分かれ道，そして荒地に残る踏み切りの名残は，かつてそこに「砂利鉄道」が通っていた痕跡だという。コンクリートの骨材としての需要により，大量の砂利が多摩川から採取され鉄道で運ばれていた時代があったそうだ。

時代とともに急激に移り変わっていく多摩川周辺の様子を地図から想像すると，まさにタイムトラベルしているかのような不思議な気分になった。また，ダイナミックな変遷を経た現在の景色の中にも，古地図に描かれているかつての面影が至る所に残っているところがおもしろい。いくら劇的に変化していても，現在は過去から切り離されているのではなく過去とつながっているのだということを再認識した。多摩川周辺に住んでいる視聴者は，今までの何気ない景色が違って見えてきたことだろう。

私は東京からかけ離れた田舎に住んでいるが，それでもその楽しさは十分感じ取ることができた。取り上げられたのが歴史的に特別な地域などではなく，どこにでもありそうなありふれた場所だったので，私の周辺でもそういった変遷があったのだろうと想像できた。散歩するときに，何気ない景色の中に昔の名残を探してみると，歩きなれた道も新鮮に感じることだろう。そういった意味で，この番組は地図を読み解くおもしろさに加えて散歩を楽しむヒントも与えてくれている。奇しくもタモリ倶楽部の玉川上水の回と場所的にも趣向的にもかなりかぶる部分があったが，一般の通行人との偶発的なやり取りなどが楽しめたオールロケのタモリ倶楽部に対し，JAPANナビはあくまでスタジオの地図を中心に，下手なCGなども使わず視聴者の想像力を刺激するように作られており，他の番組にはあまりないスタイルでおもしろかった。





以下蛇足。日本坂道学会副会長で地図好きでもあるタモリのツボにはまりそうな番組だったが，そういえばNHKでタモリを見かけないなあと思い，出演番組を調べてみた。実際には最近でも単発ものを中心にちょくちょく出ているようだし，1983年には紅白歌合戦の総合司会も務めている（タモリの「紅白歌合戦やってもいいかな?」の呼びかけに客が「いいともー!!」と答える一幕もあったらしい・・・）。ただ，80年代にはNHKとちょっとした確執めいたものもあったようだ。NHKニュースの音源を勝手につなぎ合わせ，ナンセンスなニュースにしたリスナーからのテープをラジオ番組「タモリのオールナイトニッポン」で流したら，NHKからクレームを受けコーナー中止に追い込まれた，ということがあったようだ。「つぎはぎニュース」の傑作選はこちらのページで聞くことができるが，これこそ「MAD」の走りとも言える内容。また，興味深いのがそのページの「◆NHKからの抗議」で聞けるNHKに対するタモリのコメント。子どものたわいない遊びを権力を笠に着た大人が取り上げているようなものだとして，珍しく興奮した口調で嫌悪感を露わにしている。そんなNHKも，かつてMADを発掘したタモリのように今ではネット上の著作権違法コンテンツやMADネタを好意的に扱うようになったのだから，時代も変わったものだ。