ミューズの晩餐:土岐麻子と川井郁子によるEW&Fの「セプテンバー」
土曜の夜にまったりくつろげる音楽番組として,気になるアーティストがゲストの時は時々見ているテレビ東京の「ミューズの晩餐 My Song, My Life」だが,テレビ欄で元シンバルズのボーカリスト,土岐麻子の名前を見つけたので見てみた。以前にも書いたが,シンバルズ解散以降の彼女の活動はあまり追っていなかったこともあり,正直名前もうろ覚えで,もしかしたら別人だろうかとも思っていた。シンバルズの頃からテレビなどへの露出は少ないほうだと思っていたので。番組は寺脇康文,川井郁子とのトークで始まったが,シンバルズの頃のはじけたイメージが印象的だったので,低めの声で話す彼女の落ち着いた様子にはちょっと驚かされた。またもうひとつ驚いたのが,いくつかのCMで知らないうちに彼女の声を聞いていたということ。野村證券のCMで最後に流れる「そ~れ野村に聞~てみよ~う♪」が,まさかシンバルズの土岐麻子だったとは(笑)。スタンダード・アルバムをいくつか出しているためか,車などのCMのバックに彼女の清涼感のあるジャズ・スタンダードが流れていることもあるようだ。そして彼女が川井郁子のヴァイオリンとピアノ・トリオをバックに歌ったのが,意外にもEarth, Wind & Fireの「September」(リンク先で試聴可)。あのノリノリのディスコ・ナンバーが,しっとりと聞かせるジャズ・アレンジで演奏された。彼女自身も認めていたように,彼女の声は過度に自己主張することがない。透明感があるとも言えるが,ジャズ・ボーカルとしては味気ないと感じる人もいるだろう。しかし彼女が前に出てこないお陰で,バックバンドの魅力が引き立っているような印象を持った。川井郁子は気持ち良さそうに弾いていたし,特にピアノ(塩入俊哉だったか?)の繊細ながらツボを押さえたプレイは心地良かった。もしかしたら彼女はシンバルズの頃から,自分よりも周りのメンバーの色を前面に出すような役割を果たしていたのかもしれない。沖井礼二の卓越したメロディセンスも,彼女の声が媒介となることでよりダイレクトに聴き手に伝わる,といった面もあるのだろう。 私には意外だった「September」だが,彼女のアルバムにはすでに2つのバージョンが登場しており,いわば彼女の十八番だったようだ。まずは最初のミニアルバム,STANDARDS ~土岐麻子ジャズを歌う~(写真左)に出てくる。iTunesで視聴してみると,エレピが印象的なボサノバ風アレンジのようだ。一方,写真右のウィークエンド・シャッフルのほうはギターとフルートと壷(笑)によるしっとりとしたアレンジで,どちらかと言えば「ミューズの晩餐」での演奏に近い雰囲気。壷の深い響きが印象に残る。こちらもジャズサックス奏者の父・土岐英史のプロデュースなのか,こだわりが感じられる録音で,オーディオチェックとしても使えそう。これまでにレビューした機器・CD一覧はこちらこのブログ内をGoogleで検索anthology(2003年):Cymbalsベストアルバム,リンク先で全曲試聴可(↓も)EXAMPLE(2008年):沖井礼二初のソロアルバムたちどまればいいさ(2009年):Luxisによる「ミューズの晩餐」エンディング曲