『アブドゥルの冒険』
ビジネスがアドベンチャーなゲーム英語版:Abdul's Adventure/InnerCityGamesDesigns独語版:Abduls Abenteuerliche Reisen/Truant作:ダニエル・ルイス画:アンジー“エース”ベネットプレイ人数:2~6人対象年齢:10歳以上プレイ時間:45分 ドイツに、アメリカの「変なゲーム」の版権ばかりとって、翻訳してディベロップして売るという、これまた変な会社があります。トルアントという名でぼくは大好きなのですが、その発売予定に掲載されていることで、ぼくはこのゲームを知りました。●ゲーム紹介 さいきん微妙に流行っている「砂漠の商人」もので、リスクと資産と時間のマネージメントが重要になってきます。各プレイヤーは、わずかばかりの資金とラクダ2頭を元手に故郷の町を出立し、砂漠の六つの町の間を往復しながら、あたりに名を轟かせる大商人になることを目指します。具体的には、最初に売り上げの累計が100シケルになったプレイヤーが、勝利します(狼に食べられてしまうと、ゲームから脱落します)。 プレイヤーの商人レベルは最初は一律1ですが、売り上げが20シケル以上になると2レベルとなり、以降10シケルごとにレベルが1ずつあがります。70シケル以上で、最高段階の7レベルになります。商人レベルは、名声と個人戦闘力の両方を意味します。 砂漠では喉の渇き、ベドウィン(遊牧民)、狼、砂嵐、謎の遺跡という危険が待ちかまえています(すべてマップ上に図で描かれています)。 喉の渇きに対しては、あらかじめ町で、大量に水を買いこんでおかなくてはなりません。途中でオアシスにたどり着ければ、水の補給ができますが、ぐずぐずしていると他の商人に先を越されます。ラクダは人間の半分の水で済み、また1回だけ水を飲まなくても死にません。護衛は飲まないと死にますが、ルール的には、プレイヤーは飲まなくても死にません。 ベドウィンは[プレイヤーの商人レベル]個のD3の出目の合計数だけ、襲いかかってきます(名声が高くなると、敵も集中して狙って来るということ)。その戦闘力は3~11です。対抗するには、町であらかじめ護衛(戦闘力は0~7で、固有名詞つき!)を雇っている必要があります。護衛よりベドウィンの数が多ければ、そのぶんだけ積荷が盗まれます。また護衛や自分が個人戦闘に負けると、その分だけ追加で盗まれます(護衛や自分の戦闘力に1D6加算し、敵の戦闘力を超えていたら勝ち)。 狼の発生数も同じ計算式ですが、護衛より数が多いと、無条件で1頭だけラクダが殺されて食われます。さらに個人戦闘に負けた護衛も、狼に食われます。その戦闘力は4~9。護衛がまったくいない状態で、個人戦闘に負けたら、プレイヤーが食われてゲームオーバーです。 砂嵐では積荷が1つ失われ、1/3の確率でラクダも1頭失われます。 ラクダは1頭につき積荷を2つ持てるのです(36頭のうち1頭だけ、4つ持てる伝説的なラクダ“フリッツ”がいます)が、ラクダの喪失によって持てなくなった積荷は、その場所に置いておきます。砂嵐の場合は積荷はなくなりますが、狼の場合、次にその場所を訪れて狼との遭遇を終えたプレイヤーが、残された積荷を拾うことができます。 遺跡では護衛が必ず1人死に、1/3の確率で積荷が1つなくなります。しかしその試練を乗り越えると「古代の遺物」が手に入り、町で2~12シケルで売れます。これは、資金が底をついて積荷も買えないプレイヤーへの、救済手段にもなっています。遺物は各プレイヤー2つまで運搬でき、全部で6個しかありません。もし誰も売らず、全プレイヤーでその6個を持ち運んでいる場合、遺跡では何も手に入りません。 手番では、各プレイヤーは以下から2行動できますが(同一行動可)、狼やベドウィンが出ない限り、トントン進みます(狼やベドウィンは、他人の不幸を喜ぶ部分なので、飽きません)。 1:D6を1個振って、その数だけ移動し、移動先のマスの指示にしたがう(方向は自由だが、1回の行動で同じ場所の往復はダメ)。町だけは、移動力が余っても到着できます。 2:町にいるなら1シケルで水を2人日ぶん買う。 3:または2シケルで護衛を1人雇う。 4:または3シケルでラクダを1頭買う。 5:または1種類の積荷をすべて売る。 6:または1種類の積荷を1D6個、仕入れる。 町で護衛やラクダを解雇することと、古代の遺物を売るのは行動に数えず、自由におこなえます。 積荷には青銅、油、ナツメヤシの3種類があり、それぞれ町によって売値/買値が、1または3または5シケルとなります。「1シケルの町で大量に仕入れて、5シケルの町まで旅して売る」のが基本ですが、だいたいその間は、22マスぐらいあります(つまりダイスの平均値で3~4ラウンドかかります)。 問題は1つ。何か積荷が売られると、その町には対応する「売却済み」マーカーが置かれるのです。これが外れるまで、対応する積荷を売ることはできなくなります。別の積荷を売ると前のマーカーが外れて、新しい積荷に対応した「売却済み」マーカーが改めて置かれます(前の種類の積荷が売れるようになります)。同じ場所で積荷を買って、すぐさま売るのは禁止されています。少なくとも次の手番まで待たなくてはなりません。 ルートを通る形式の商売ゲームは、多人数ソロプレイになりがちですが、『アブドゥルの冒険』では…… 1.途中経路に落ちている積荷の横取り 2.積荷の種類のバッティングと、その「売却済み」マーカーによる邪魔 ……の2種類で、プレイヤー間のインターアクションを実現しています。 あとはシステムではなく人間的なことですが、狼やベドウィンを引くのは、本人ではなく別のプレイヤーがやることになっています。 コンポーネントは、A5サイズのジップロックに、4つ折りのボードと、切り取って使うカウンター類が入っています。 他に6面ダイス7個と、点数と金額を記録する手段が何か必要です(今回は、いつも便利で重宝する『カルカソンヌ2』の得点ボードを使用しています)。 あとベドウィン、狼、ラクダ、護衛をランダムに引くために、中の見えないおわんや袋が4つ必要です。●プレイレポート プレイヤー駒に名前がついているのですが、AliとLarryの一騎打ちでは、いろいろな場所で明暗を分ける結果になりました。 Aliは、初期にフリッツ(2倍もてるラクダ)を引いたこともあり、護衛を最小限にし、積荷を奪われた際の再生資金を残して、小規模の商隊で何度か往復する作戦に出ました。これが効を奏し、5個の積荷を売って瞬く間に25シケルを稼ぎ出し、2レベルに成長します。 そのころLarryは、まだノロノロと旅の準備です。ラクダを2頭買い足し、8個の積荷を載せ、護衛を1人雇い、4日分の水を買いこんで、すっからかんになります(失敗すれば後はありません!)。旅の準備を終えたころには、前の旅の資金で2度目の支度を終えたAliも、ほぼ同時に再出発していました。 ふたりの旅は、ベドウィンや狼を追い払いつつ、無事に終わります。この段階でAliは、やはり25シケル稼いで5レベルとなります。Larryも積荷8個を無事売り、一気に40シケル稼いで4レベルと、追いついてきます。 きついのは、ここからでした。次の旅では、Aliもラクダを増やして積荷を10個ていど運んでいたのですが、ダイスの出目が爆発したこともあり、2回の狼の襲撃でラクダを2頭やられ、護衛も削られ、道端に青銅をバタバタと残さねばならない羽目に陥り、10しか儲からない上に6レベルになってしまいます。 Aliは保険として残しておいた再生資金をはたき、もう一度商隊の体裁を整えますが、今度はベドウィンの襲撃で、身ぐるみはがれて積荷は1個だけになってしまいます(2個積荷を盗む、頭目のAbi Labaも出現しました)。 例によってLarryは、その間も黙々と、ラクダ6頭で12個の積荷の、大きなキャラバンを組織します。護衛も3人に増やします。途中、狼とベドウィンにいろいろつまみ食いされ、積荷は7個に減り、護衛も戦闘力5の腹心Dabkaだけになってしまいますが、それでも35シケルになるので最高レベルの7となり、Aliを追い越します。 砂漠で立ち往生していたAliはと言えば、運よく(?)遺跡にぶつかり、護衛を1人失っただけで古代の遺物をゲット。その段階で、Aliも護衛は戦闘力4のKwasiだけになっていました。ところが次の目は6。一気に町に近づけるのですが、別の方向へ行けば、もうひとつの遺跡に着いて、遺物をもう1つ獲得できます。「どうしよう?」と尋ねてくるAliに、Larryは「長年連れ添った腹心の部下じゃないか」と答えます。それでもAliは「だったら、俺のために死ぬ覚悟はいつでもできてるはずだ!」と遺跡に突入。Kwasiの尊い命は砂漠の露と消えました。そのかいあってか、Aliは着いた先の町で26シケルを稼ぎ、総計80オーバーで一気に王手をかけます。 それでもLarryは、あわてず騒がずKwasiの冥福を祈りながら、ラクダ6頭、護衛7人体制をかためます。水も40人日ぶん買えるまで、ゆっくり待ちます。 Aliはやはり、そこそこの規模の商隊でラストアタックをかけますが、Kwasiの呪いでしょう、嵐、狼、ベドウィンに波状攻撃をくらい、あわや砂漠で野たれ死にそうになったところを、オアシスで救われました。 そこでやっとLarryは出発。途中、ベドウィンに積荷を2つ奪われましたが、遺跡にはまって遺物をゲット(護衛ひとりの冥福を祈ります)。オアシスめぐりで水長者になっていたAliを尻目に、Larryは最後に61シケルを稼ぎ出し、堂々の勝利を飾ったのです。 腹心の部下は大事にしましょう。 2人なので、インターアクションがほとんどなかったのですが、旅の手続きが、思うようにいかないところで非常に雰囲気が出ていて、やってて楽しいゲームでした。これを4~6人でやったら、さまざまなところで妨害が出て、もっと楽しいように感じられます。今度チャレンジしてみよう! では、よいゲームを!