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タコ社長,オーストラリア・メルボルンのスローライフな日々

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タコ社長1952

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2013年08月05日
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カテゴリ:タコ生徒・学生期
高校は、昭和55年に都立高校としては史上初の甲子園出場を果たした都立国立高校だった。近くい、後に憧れた同年代の天地真理が卒業して国立音楽高校がある。

「吸いなよ!」国立南口のロータリーを越えて右側の狭い路地を入った所にあった「邪宗門」という喫茶店で、Mがショートホープを私に勧めた。高校3年の春、前年の学園紛争の結果、制服が廃止になり、Mは細長く白い足がしっかり見えるミニスカート姿だった。

私は、勧められたままタバコに火をつけた。皆で「ジャモン」と読んでいたこの喫茶店は、中が狭く入り組んでいてアンバー色の光が鈍く漂う隠れ屋のような空間を与えてくれていた。因みに、このジャモン、マスターが亡くなって閉店した数年前まで営業していたという。因みついでに、私は19歳でタバコを止めた。これは、いい判断だったと今も思っている。

Mは、1年の学園祭でそれまでの腰まで届くほどのおさげ髪を思いっきりボーイッシュにカットしてギターを抱え、「いいじゃないの幸せならば」を歌っていた。私も幸せにあやかりたくなった。2年のクラス替えの発表があり、同じクラスの中にMの名前があったときは、思わず一人で微笑んでしまった。

国立の並木道は有名だ。春は桜並木が見事だ。駅から高校に向かって右側はカップルが、そして左側は団体で歩くように自然になっていた。私は左側が専門だった。2年の2学期頃からMは右側を歩くようになっていた。相手は反体制活動を始めていた前田という同学年の学生だった。長髪でやや猫背気味に歩く、翳のあるニキビ顔の男だった。そして、Mが学園紛争を引っ張るような集団の一人になっていった。私は細いガラスの花瓶のような彼女が、その内脆く壊れてしまうのではないかと心配した。

「私ね、昔は東大に行きたかったのよ。」「それで?」
「馬鹿ね、ヘルメットかぶって昼間からこんな所でタバコ吸ってたりして行ける訳ないじゃん。」
Mと二人っきりになったのは、この邪宗門の時が初めてだった。彼氏とは続いていた。
「タコ君、高橋和巳、読んでる?」
「えっ、巨人の高橋和巳、本書いたの?」
「相変わらず馬鹿言ってるね。『悲の器』『わがこころは石にあらず』いいよ。読んでみて。」
私はおどけて見せたが、高橋の作品を読んでみようと思った。
「どんどん、逃げて逃げて、逃げまくってね、そこできっと何か見つかるんだよ。きっと。」
Mは、私の目を見ずに自分に言い聞かすように言って鼻からタバコの煙を吐いた。

結局私は、強烈に彼女に2年間片思いをしいているだけで彼女との関係は終わった。学生運動にのめり込んでいったMは、それでも現役で学芸大に入り大学生活を初めていた。私は、予備校生活の中でもMのことが心から離れなかった。

これじゃいけないと、7月のある日、思い切って会えないかとMを誘って会うことになった。国分寺の薄汚いそば屋で会った。私は、うどんのカレー南蛮を食べながら、久しぶりに彼女を見つめていた。ところが、学生運動は続けていると言っていたが、紺の半袖のTシャツを着て底抜けに明るく話続けるMを見て、それまで募っていた思いがスーッと霧散していった。あの薄暗い邪宗門で、涙を見せながら独り言を言っていたMは、私の心の中にしか残っていないのを知った。大学で新しい彼氏ができたとも言っていた。

Mは大学卒業後、都内の小学校の教師になった。その後、三多摩地区の小学校の校長になったと聞いた。今、日本に一時帰国するたびにクラス会をやるが、彼女はこの30年近く出てきていない。

毎回、果敢にこの緑の箱をクリックよろしくお願いいたします。
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タコ社長の本業・オーストラリア留学

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Last updated  2013年08月05日 07時49分12秒
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