第2話数日後の夕方、楽器屋のマスターから電話があり、 明日の夜、ベースギターを持って駅前のスタジオに来てくれとの事だった。 (何だ?急に…で、どこだ?駅前のスタジオって…) その夜。 電話で場所をもう一度マスターに確認して、車に乗りこんだ。 途中、車のラジオから「カリフォルニアの青い空」が流れていたのは、その後の展開を暗示していたのか? その時の俺は知るよしもなかった。 場所は駅前っていうより、ちょっと奥場った閑散としたビルの5階にあった。 (ドラキュラ男爵が住んでそう…) なんてな事を思いながら、そのビルの階段(エレベーターがあったかどうかは知らない)をベースギターを持って駆け上がった。 そのスタジオに着くと他のバンドが練習をしていた。 大学生か社会人になりたてのような連中だった。 鼻の下に大きなホクロがある女性がボーカルで、他は全員男だった。 サザンの「ミスブランニューディ」をやっていた。 (珍しいなぁ~サザンを女性のボーカルでやるなんて…) と、思っていると奥の方から丸っこいおっさんが手を招いていた。 マスターだった。 スタジオはかなり広く、小さなライブでもできるほどだった。 大学生達の前を横切ってマスターの前に行くと、 「今夜、スペシャルゲストが来るから、 あんたはベースを弾いてくれ!フアッ!フアッ!フアッ!」 マスターは満面の笑みを浮かべながら言った。 「誰?ゲストってのは…」 なにも段取りを聞いてない俺は怪訝そうな顔をした。 マスターは顎で左の部屋の隅を指した。 そこには先日楽器屋に来ていた大女…いや、外人さんが座っていた。 サザンをやっている彼女らの演奏を聞き入っていた。 「キャシー!」 キャシーって呼ばれた外人さんには マスターの声は届いていないのだろう、返事がない。 ホクロ女の声と演奏が、とにかくバカでかかった。 マスターは何度も叫んでやっとキャシーが気付いた。 と、同時に防音で2重扉になった一枚がゆっくりと開いた。 「おぉ!来た、来た、今夜のスペシャルゲスト登場!」 そこには、俺も大きいが、その俺が見上げるほど大きな白人の大男が立っていた。 演奏がピッタと止んだ。 …つづく。 ジャンル別一覧
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