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でっかい独り言、内緒話に戯言三昧

でっかい独り言、内緒話に戯言三昧

私が死んだ日 その1

 最初は16才になったばかり。誰よりも好きだった父が他界した。その3ヶ月前にはもう手遅れだと聞いていた。学校は自宅から離れていたので寮に入っていた私は、看病をすることもなく、そばにいることも許されず電話におびえて呆然と過ごしていた。父がいれば何もいらなかった。家から遠く離れた学校へ行ったのも、父が「ママの願いを叶えてあげなさい。ママのずっとずっと長い間の願いだったのだから。ママの願いを叶えてあげられるのは、○ちゃんだけなんだよ」
 家から離れたくなかった。母の願いなんてどうでもよかった。だって私の人生なんだもの。母の願いは「自分の娘を学校に入れる」だった。自分が行きたかった学校だ。願書も取り寄せたらしい。が、実際の受験前に祖父が仕事に失敗し、望む学校へ進めなかった。その母の願いは結果として家族を離散させ、取り返しがつかないほど、家族を離ればなれにした。学校も残った家族も、私にはもうどうでもよかった。
 でも、たった一つだけ決意した。父の葬儀での祖母の姿が悲惨だった。決していい祖母とは思わなかった。子供心に母と折り合いが悪いのは分かっていたし、祖母があからさまに父を非難するのも知っていた。その祖母がひとまわりもふたまわりも小さく萎んでしまった。哀れだった。だから決めた「たとえ1秒でもいいから、母より長生きしよう」 この日までの私は死んだ。生きる理由はただ一つ、母より1秒でも長生きすること。なにがあっても。どんなことをしても。


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