京都市民管弦楽団 第99回定期演奏会(賛助出演:2019/5/26)
2018年5月26日、自オケの演奏会の翌週という切羽詰まったスケジュールでしたが、京都市民管さんの演奏会にお邪魔させていただきました。大勢のお客様、大編成による安定の演奏という、老舗市民オケの堂々たる演奏会をステージ上で経験させていただきました。<<京都市民管弦楽団 第99回定期演奏会>>日時 2019年 5月26日(日)開場…13:15 開演時間…14:00 (従来の開場時間から変更されています。)場所 京都コンサートホール 大ホール京都市営地下鉄烏丸線「北山」駅下車曲目 ムソルグスキー 交響詩「聖ヨハネ祭の夜の禿山」(禿山の一夜)ショスタコーヴィチ 交響曲第9番 変ホ長調 作品70ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」 ヘ長調 作品68指揮 粟辻 聡入場料 前売り 1000円 当日1200円(全席自由) 私の演奏位置と使用弓、演奏回数は以下のとおりです。現代曲と古典派という、5弦領域の活躍する曲が並び、エクステンダーも活躍することとなりました。・ムソルグスキー:はげ山の一夜(原典版)(2回目) 3.5Pult中 3pult out 独弓 extender: 未使用・ショスタコーヴィチ:交響曲第9番(初) 3.5Pult中 3pult out 独弓 extender: C・ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」(4回目:Bärenreiter版) 3.5Pult中 3pult out 独弓 extender: C(アンコール)・グレインジャー:デリー地方のアイルランド民謡(6回目) 3.5Pult中 3pult out 仏弓 extender: 未使用 ホールは京都市民管さんの本拠地、京都コンサートホール。関西復帰してもほとんどステージに乗る機会はないかなと思っていましたが、京都市民管さんのおかげで何回も可動ステージを踏ませていただくことが出来ました。感謝です。 最近の京都市民管さんのプログラムは、意欲的な近現代曲と有名人気曲が組み合わされていて、クラシックの初心者からマニアまで楽しめるようなものになっています。今回も冒頭の「はげ山の一夜」は近年になって演奏機会が増えてきた「原典版」(かつてはリムスキー・コルサコフによる編曲版が主流でした)、初演時当局の意向を外した内容で問題となったショスタコーヴィチの交響曲第9番、そして鉄板名曲「田園」という構成。例年よりはかなり気温が高く暑い日でしたが天気もよく、お客様も1500名収容のホールに1346名と、ほぼ満席に近いお客様となりました。事前の読みとの誤差が1名!というものすごい精度の広報宣伝活動、見習うべき所だらけです。次回の第100回の演奏会、どれだけお客様が来られるのか・・・2回公演にした方が安全かも知れません(笑)。 京都市民管さんは、私が知るなかでも最大級のメンバーを擁するアマオケで、14型の弦楽器が自前でほぼフルに揃っています。上から 14-13-13-10-7(人)という並び。弦のエキストラはコントラバス3名とVa1名だけで、他はすべて団員です。(管打も、Fg/Percで5人だけ) 並び方は、以前と変わってヴィオラが客席側という欧州近代スタイル、コントラバスは上手奥。金管楽器はホルンが下手、トランペットが上手の一列で、トロンボーンチューバは一列下がって中央最上段のティンパニと並ぶ形。自オケと同じ配置です。 京都コンサートホールの電動式舞台を利用した、半円のすり鉢状段差がつけられたので、雛壇よりはかなり大きく高低差が付けられて、全体を大変見渡しやすいセッティングでした。 コントラバスは7名。前4-後3の2列編成でした。前回は7名全員団員での演奏を実現されたのですが、その後転勤やら休団、そして私がお邪魔する理由となった団員の方の都合での降り番などで、今回はエキストラが3名お手伝いすることとなりました。元々5弦楽器所有のメンバーがいらっしゃられないことから、エキストラは5弦所有奏者優先になるのですが、今回は急ぎということもあり、「なんちゃって低音拡張」でも「はげ山原典版経験者」の私に矢が刺さったのかな、と推測しています。で、3プルトアウト・・(一番客席寄り)。。(笑) いや、確かに楽譜はOut側が見やすいので、特に初めての演奏だったショスタコーヴィチでは大変助かりました。また楽譜も自分の(譜めくりに細工した物)物を使わせてもらえて、inに座っていただいた団員のTさんには恐縮&大感謝でした。 メンバーはツートップのSさん、Iさん、そして陰の実力者Nさん、ベテランTさんの4名。途中リタイアのUさんが残念でなりません。エキストラの3名は、3月の紫苑響でもご一緒させていただいたお二人(Kさん、Iさん)。もちろん5弦です。 来期は、今回無念の欠場となったUさん、そして昨年登場のMさんも復帰される(かも?)と伺っており、節目の100回は充実したメンバーでの演奏になることと思います。 指揮者の粟辻先生とは、墨染交響楽団(ブラ2他)、けいはんなフィル(真昼の魔女他)以来の3度目のステージ。京都市民管さんとは以前トレーナーとしてお付き合いがあったようで、メンバーとのコミュニケーションもバッチリと感じました。 粟辻先生と言えば、「快速」「溌剌としたリズム」という印象が強く、ショスタコーヴィチでは印象そのまま、という感じでしたが、「田園」やアンコールでは意外にも普通(笑)のテンポ。京コンの響きも考慮しながらでしょうけど、私には京都市民管が自律的にリズム感を維持できるので、ある程度テンポ設定をオケに委ねたように見受けました。オケとの信頼感が感じられ、今後も先生の客演は近いうちにありそうかも、と思えるものでした。 1曲目の「はげ山の一夜」原典版、一年前に所属オケで演奏して大変な目に遭った曲。まさかこんなに早く再演があるとは。 何が大変と言って、理不尽な音型、音量が満載で、弾けなくて嫌になるというか、弾けててもどうよ、というか・・弦楽器全般泣きながら(意味不明すぎて・・)演奏するのは自オケと同じ雰囲気でしたが、粟辻先生のぐいぐい進むリズムとテンポ設定のおかげで、何か爽やか感も若干漂う演奏ではありました。この曲の譜面は自オケの時と同じ出版社の物だったので、譜めくりが難しいもの。私は自オケの時に作った、ページの見開きを1ページずらしてめくりやすくした譜面を再利用しました。ページの左右が変わるので同じプルトに座った団員の方には、戸惑う思いをさせてしまい申し訳なかったです。 2曲目はショスタコーヴィチの交響曲第9番。2曲目近代小交響曲のパターンというと、何回か前の、プロコフィエフ第1交響曲(古典)の名演が思い出されます。メンバーの層が厚く、ベテラン揃いの京都市民管弦楽団ならではの選曲。プロコの時は降り番でしたが、今回は全員(7名)でのステージとなりました。曲自体はショスタコーヴィチが当局から批判を浴びただけあって、いわゆるショスタコ「らしくない」雰囲気(いや、映画音楽とかでは見せているのですが、いわゆるシリアスな交響曲ジャンルでは珍しい)で、聞く分には例えば次の交響曲第10番と比べるとずいぶん聴きやすいものです。もちろん1楽章展開部の迫り来るパワー、2楽章の陰鬱、3楽章の爆速と、ショスタコらしさは健在です。弾く方もショスタコ頻出の変拍子、爆速、複雑な転調、曖昧な調性感の旋律などで、今回がこの曲初めての私にとって、リハーサル回数少ない中大変でした。ひたすら「ついて行きます!」感で曲が終わっていきましたが、良い曲ですね。演奏頻度が(ショスタコの交響曲の中で)比較的高いのも納得でした。演奏全体としても、4楽章の長大なFgソロ始め京都市民管自慢の木管楽器の実力発揮、弦楽器の高性能をまざまざと見せた快演だったと思います。 そしてメイン曲は一転ベートーヴェンの「田園」。ぐっと古典に戻ります。譜面はBärenreiter版ですが、演奏自体は弦楽器もフル編成のロマン的な奏法、解釈の物。演奏する方も聴く方も、一番安心感あるパターンです。(笑)先にも書いたようにテンポ設定も「快速粟辻先生」には珍しくゆったりしたテンポ(嵐はさすがに若干速かった気がしますが)。アマオケだと、1楽章冒頭のチェロによる4度重音のロングトーンですでに腕の巧拙がはっきりわかってしまうのですが、さすが市民管。安定したスタート。途中動き出したところからCbが入るところもオクターブがしっかり決まり、Cb7名という大編成ですが、音程も良く良いスタートが切れました。 2楽章の木管による鳥のさえずりでは、ここでも京都市民管自慢の木管が実力発揮。楽器の音域のせいなのか、この部分どうしてもフルートは下がり気味、オーボエは上がり気味の音程になるのですが、それも最小限に抑えられていたように思います。 さて問題の3楽章以降(笑)。意外と本番で落っこちる事故が起こりやすい3楽章(スケルツォ)も無難に過ぎ、コントラバスにとっては問題の4楽章(嵐)。。まぁ、快速テンポのおかげで、わらわらと過ぎていって助かりました。。指板がちょっと熱くなったり、右手すら追いつかなくなったような気もしますが、嵐が去って終楽章への経過の所も上手く決まりました。まだコントラバスパート全員、意識は確かだったみたい。 これがあっての終楽章。比較的単純な和声と旋律の変奏曲。これが胸に滲みます。大編成のヴァイオリンの力ですね。有無を言わさぬ感動がおそいました。やっぱり田園は名作、素晴らしい曲です。嵐の4楽章のこともあって演奏する分にはやや苦手感のあった曲ですが、先日のシベ2が紫苑さんの名演にご一緒させていただいたことで苦手感無くなった(でも上手く弾けない)のと同様、今回の演奏で田園も苦手感は(全然弾けませんが)なくなったかもしれません。 アンコールはグレインジャー編曲のアイルランド民謡・・というか「ダニーボーイ」とか「ロンドンデリーの歌」と言った方が通りが良いですね。あの旋律を弦楽器が歌う曲です。この曲、コバケン先生の得意曲で、仲間オケでも頻繁に、特に東北の大震災の後にはレクイエム代わりに演奏しました。その時の印象が強烈(まさにコバケンマジック)だっただけに、リハーサルでいつもの調子(笑)で弾いてしまい、「でかすぎ、でかすぎ」とメンバーの方から諫められてしまいました。今日の演奏は、弱音を効かせた柔らかいもので、粟辻先生の新しい一面を拝見したように思いました。 打ち上げは最近定番(たぶん)の近隣イタリア料理屋さんで開催。京コン近所で大人数で(全部で80名くらい?)のパーティーが出来るのは、ここくらいかも知れません。いつものとおりノンアルで参加させていただきました。駐車場の便宜を団で図ってくださっているので、楽器のこと含め安心して参加できます。情報伝達、心配り(特に車関係)の行き届き方はさすが老舗のオーケストラです。このようなエキストラへの心配りとオケの腕はやはり相関関係ありそう、とつくづく思いました。私も自オケのエキストラの皆様へはできるだけストレス無いように対応せねば、と我が身を振り返ることしきりでした。 次回の演奏会は12月8日(日)、いよいよ記念すべき第100回の演奏会となります。交響詩「魔法使いの弟子」、フォーレの「ペリアスとメリザンド」、そしてホルストの「惑星」全曲だそうです。メンバーに皆さんが復帰されることですし、私にお声がかかるかどうかは誠に微妙ですが、フォーレは聴きたいなぁ(実はフォーレ好き)。おっと、その前に7月のPTA感謝の集い(7/6)がありますね。お疲れ様です・・以下が過去の演奏経歴です。(333ステージ目)■ムソルグスキー:はげ山の一夜・(2018/5)八幡市民オーケストラ/森口 真司(原典版)■ショスタコーヴィチ:交響曲第9番・(初)■ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」・(1992/02)BOT交響楽団/草野 保雄・(1997/06)旭富会クラシックコンサート部/緒形 次郎(1楽章のみ)・(2009/06)滋賀医科大学管弦楽団/岩井 一也 ・(2013/02)墨染交響楽団/辰巳 直弘■グレインジャー:デリー地方のアイルランド民謡・(1990/07) 宇治シティフィルハーモニー/脇坂 英夫・(2011/05) コバケンとその仲間たちオーケストラ/小林 研一郎(東京公演)・(2011/08) コバケンとその仲間たちオーケストラ/小林 研一郎 (茅野公演)・(2011/09) コバケンとその仲間たちオーケストラ/小林 研一郎(堺公演)・(2016/07) コバケンとその仲間たちオーケストラ/小林 研一郎 (茅野公演)京都市民管弦楽団さんでの演奏履歴(通算9ステージ目)です。・第30回定期演奏会 1984/6 京都会館第2ホール・第90回定期演奏会 2014/11 京都コンサートホール大ホール・第92回定期演奏会 2015/11 京都コンサートホール大ホール・第93回定期演奏会 2016/5 京都コンサートホール大ホール・第94回定期演奏会 2016/12 ロームシアター京都 メインホール・第95回定期演奏会 2017/5 京都コンサートホール大ホール・京都市学校・幼稚園PTA感謝の集い親子コンサート 2017/7 京都コンサートホール大ホール・第97回定期演奏会 2018/6 京都コンサートホール大ホール