コントラバス演奏記

2019/09/04(水)22:00

大阪大学工業会主催 第20回 音楽会(阪大オペラ)(出演:2019/8/31,9/1)

オペラパーク管弦楽団(6)

昨年に引き続き、オペラパーク管弦楽団さんからお声がけいただき、今年もオペラ演奏に参加させていただきました。昨年に続いて、ヨハン=シュトラウスのオペレッタ(ジプシー男爵)です。シュトラウスがグランドオペラを指向つつあった時期の名作であり、本格的なオーケストレーションに正面から食らいついた、充実したステージでした。 ​​《​大阪大学工業会主催 第20回 音楽会(阪大オペラ)​》​( 入場無料 )主催:一般社団法人 大阪大学工業会共催:大阪大学大学院工学研究科/工学部 日時:2019年8月31日(土) 開場:午後1時 開演:午後2時                9月  1日(日) 開場:午後1時 開演:午後2時 場所:​大阪大学コンベンションセンター​ MOホール( 吹田市山田丘1-1 ) 交通:阪急茨木市駅・JR茨木駅より近鉄バス 阪大本部前行終点下車 徒歩5分千里中央駅より阪急バス「阪大本部前」行 終点下車 徒歩5分大阪モノレールをご利用の場合 阪大病院前下車 徒歩10分 【曲 目】ヨハン・シュトラウスⅡ / 喜歌劇「ツィゴイナー男爵(ジプシー男爵)」全曲 【出 演 者】指揮者/ギオルギ・バブアゼ ディレクター/大川進一郎(大阪大学工業会 理事)総監督(オペラ指導)/布埜 秀昉        演出/布埜 洋子 ホモナイ伯爵/西川良治(Br)     カルネロ伯爵/萬田一樹(Br)    シャンドール・バリンカイ/角地正直(T)    ザッフィー/塩出 律(S)    ツィプラ/奥西真弓(A)     カールマン・ジュパン/大西信太郎(Br)アルゼーナ/山田千尋(S)     ミラベッラ/春田尚美(S)     オットカール/島袋羊太(T)ナレーション/バリトン亭千秋、岩本泰昌     練習ピアノ/新庄桃子      管弦楽/オペラパーク管弦楽団(大川卓也)     同インスペクター(小林 浩)      合唱/関西二期会オペラコーラスシンガーズ(漆葉充彦)            パルフェ ムジーク アカデミー(春田尚美)  阪大オペレッタ合唱隊(河原 敬)合唱指導/細田 隆     背景・映像/岩田倫和      主催/一般社団法人 大阪大学工業会 会長 鈴木胖・事務局長 曽根祥光 《 お問合せ先 》一般社団法人 大阪大学工業会事務局 (TEL:06-6105-6056)曽根祥光 演奏曲目別の私の演奏位置と使用弓、演奏回数は以下のとおりです。 ・J・シュトラウス:喜歌劇「ジプシー男爵」(全曲)  (初)   1.5Pult中2Pult (一人弾き) 独弓、4弦 (Extender 未使用) (カーテンコール曲) ・J・シュトラウス:「ジプシー男爵」からNo.16 行進―合唱付きクープレ(初)   1.5Pult中2Pult (一人弾き)  独弓、4弦 (Extender 未使用)  この「音楽会」は、​大阪大学工業会​(阪大工学部の同窓会)が阪大構内のコンベンションセンターの稼働促進・有効利用、会員の親睦を目的にはじまったとのことなので、大阪大学キャンパス内の​コンベンションセンター​で行われます。座席数が300ちょいの立派なホールですが、「講演用」ですので響きは乾いていて、声が明瞭に届くような響きとなっています。もちろんオーケストラピットや凝った舞台装置はありませんので、今年もオーケストラもステージ上で、その周囲(前と両翼)と一部客席で歌唱と演技が進みます。  この並びだといつもの感覚で臨めましたし、演技もそこそこ観られるのですが、指揮者が独唱陣の様子がわからない(背中向けている)のはかなり大変な様子。声とオケのアンサンブルが要求される部分が意外に多く、その度に指揮者は振り返って歌手を、歌手は客席と反対側の指揮者に目を飛ばして、という形になります。  それでもバブアゼ先生ははっきりと判りやすいタクトを見せてくれ、されにコンマス友永先生がその棒を翻訳してタイミングを作ってくれました。「これで落ちたらTutti奏者が悪い」レベルまでかみ砕いてくれていて、申し訳ないくらいでした。  この音楽会ではずっとオペラを採り上げていることから、通称「阪大オペラ」と言われており、プロの独唱陣、合唱も含めたフルキャスト、オーケストラ伴奏による全曲演奏にもかかわらず入場無料ということから、派手な宣伝をしていないにもかかわらず年々お客様が増え、ついに一昨年は立ち見もできずお引き取り願ったお客様まで出てしまったとのこと。これまでは日曜の公演に、土曜日の通し練習を公開にして対応していましたが、​昨年からは​土曜日も本番公演を行うことになりました。今年も土日2公演です。 しかも連日公演でもキャストは同一なので、ソリストの方の負担は大変かも知れません。。それでも二日間素晴らしいステージを繰り広げる独唱・合唱陣、さすがです。  ​昨年は​ホール収容人数を上回るお客様がお見えになって、日曜などは通路に座って観ていただいたり、という状況でしたが、今年は土日ともほぼ客席数ピタリ(日曜は若干立ち見も出たようです)位の満席状態でした。​昨年の「こうもり」​の盛り上がりから、今年は大きく溢れるかも・・と心配していましたが、秋雨前線による不安定な天気と、演目の知名度の差だったのでしょうか。  というわけで、オーケストラはステージ上の中心に陣取りコンパクトに密集。  弦楽器はVcが外の近代並び。上から(7-5-5-6-3)。コントラバスはもう一人居ても・・・と言うくらいですが、編成上は内声がやや薄いので、ちょうど良いバランスだったかも知れません。管楽器は、ステージ客席寄りを演技用にできるだけ場所を確保する必要があったことから、通常は3列取る管楽器も2列でやや横長に並びました。木管2列を中心に、その外側上手にHn,下手に前列Tp,後列Trb。オペラパーク管ではホルンが上手配置なので、ワルツのリズムを刻むのが合わせやすくて助かります。  コントラバスは3名、Vc/Vaの後ろに横一列です。  曲自体は4弦で十分弾ける音域ですが、5弦が1名。エクステ(自分)1名と4弦、という構成。今回は歌手を際立たせるためにオケ側の照明をかなり落としたことから、譜面台ライトを投入。オケで準備した物が私の手持ちと全く同じものだったため、日を跨いでの整備や撤収時に行方知れずとなり混乱してしまいました。判った時点で識別付けとくべきであった、と反省です・・  メンバーは、グリーン響でもお世話になったNさんと、今回初めてお目にかかったグリーン響の秘蔵っ子Sさん。噂どおりの美貌とコントラバスの腕前でした。  指揮はオーケストラの本拠地・オペラパークの近所にご在住らしい、バブアゼ先生(愛称:ゴギ先生)。場所の制約で、歌手を背中にして(合わせるときは振り向かないといけない)結構無理な姿勢をとりながらの指揮、にもかかわらず色々起こる変化(演出の都合だったり、その時の演技の違いだったり)もタクトできれいに見せてくれて、大変な運動量だったのではないかと思います。  独唱陣や合唱は、昨年同様関西二期会のメンバーを中心にしたプロの皆さんを中心にした、豪華メンバー。昨年と同じメンバーも半分くらいいらっしゃって、安心感がありました。  喜歌劇「ツィゴイナー男爵」、「ジプシー男爵」と言った方が通りが良いと思いますが、近年は差別用語としてジプシーという言葉が忌避されるので、言い換えた物と思われます。シュトラウスの代表作として「こうもり」と並び称される曲であり、さらにシュトラウスの念願であったオペラに向けて周到に計画された、音楽的には「こうもり」を越えた彼のオペレッタの最高傑作とまで評価されているのに、当時の社会情勢を反映した題材のため、現代では公演に当たって色々不利な演目となってしまっています。  例えば背景にある、二つの戦争(​大トルコ戦争​、​スペイン継承戦争​、いずれもオーストリア側の勝利)、​オーストリア・ハンガリー二重帝国​のハンガリー領にすむジプシーという設定・・舞台上では誰も死なない、とはいえ背後の暗い影を引きずってしまうと当事国とかではやりにくそうだな、と思います。 個人的にはこの序曲は過去にも何度か演奏しましたが、「チャルダッシュ」好きなこともあって、「こうもり」序曲よりも気に入っています。今回演奏して、全曲の素晴らしいナンバーを知るにつけても知名度の差は残念なことです。もちろん私は全曲は初めて。まぁ、全曲演奏は多分一生一度、今回のみになりそうです・・  演奏時間と演出の都合(そしてハープがない、という編成の事情もあり)で、オリジナル楽譜とは以下違いがありました。(歌手による音域移調したバージョンはカウントしません) ・第1幕のNo.1(導入曲) 中間部と最後の一部をカット ・第1幕のNo.5a/5b (Sortie) 全体をカット ・第1幕のNo.7(Finale I)一部カット ・第2幕の導入曲(Ent'r acte) 全体をカット ・第2幕のNo.10a (Sortie) 全体をカット ・第2幕のNo.13(Finale II)一部カット ・第3幕のNo.14,14-1/2,15 全体をカット  それ以外に繰り返しの省略、音の変更やスコアとパートのずれ修正などは適宜ありましたが割愛。  こうもりに比べると圧倒的にリソース(演奏音源、映像)も少なく、演出も大きく異なっていて慣用の物かどうかはよくわからなかったりします。ただ、カットした曲は第3幕の2曲(合唱とアルゼーナのアリア)を除くといずれも短いもので、劇の流れとしてはほぼオリジナルにどおり、と言っても良いかと思います。  今年も演奏する「言語」は歌、台詞すべて日本語公演でした。  特に歌唱チームの方は「日本語で内容をお客様に伝える」ことを大きなテーマとして掲げたとのことで、物語の進行は演じながら(どうしても声は聞き取りにくくなる)ではなく、ナレーションでの対応としたり、と字幕無しで筋がすべて終えるための工夫が凝らされておりました。  なので前回に引き続いて来てくれた会社の同僚の皆さんも「昨年以上に内容が聞いてよくわかり、楽しめた」と感想を話してくださいました。  昨年、今年とシュトラウスが続いたわけですが、実は「こうもり」全編の中での「ワルツ」を弾いている時間は意外と少なく(例のワルツと、侯爵様・・あたりか。チクタクポルカ、チャルダッシュ、シャンペンの歌など2拍子や4拍子の名曲が多いような)、却って「宝のワルツ」「イヒヒのワルツ」などジプシー男爵の方がワルツの時間が長かったような気がします。そのため、昨年はあまり気にならなかった「ワルツの頭打ち」が、かなり気になりました。  これまでも演奏会とかでワルツがある度に、頭打ちの音符のスピード感に悩んでいたのですが、今回2管編成を相手に3本で頭打ちをしようとすると、どうしても気ばってしまい、ますます音が鈍重になるという悪循環でスタートしてしまいました。  音の重さはバスメンバー共通で認識された(特に練習録音を聴いた後から)ので、数少ない練習を縫って、メンバー3名で弾き方やらイメージの意見交換をしました。結局「音価どおりに(弓の)毛では弾かない。pizz.の様に、弦を上手く引っ掛けて弾いたら、あとは余韻で音価を確保する」という弾き方にほぼ収束しました。ちょっと音量的に頼りなく感じるのですが、3人が揃ってその弾き方でタイミングと音程が合うと、十分に響くことがわかりました。  さらに個人的には引っ掛けた後の初速を稼ぐために、手首の返しを先に、腕の動きを後にする弾き方をして、音量とスピード感を付けてみました。結局そうやって弾くと、ウィーンフィルのバスパートの弾き方みたいに、肘から先を動かすタイプの動きになってきて、形から発音のプロセスを考えるのも大切だな、と今更のように感じた次第です。  幸い12月にはウィンナワルツ(ウィーン気質)を演奏できる機会がありそうなので、そちらの練習でもこの弾き方を試してみて、有効性を確認したいと思っています。  今回のリハーサル回数は6回。そのうち私は4回の参加でしたが、オケ単独練習2回、合唱やソリストとの総練習が4回。これで初めての曲2時間分だと、オケ単独演奏ならまぁまぁなリハーサル回数ですが、声とのアンサンブルを整えるのには、もっと事前準備して臨まないと行けないな、と反省です。 スケジュールも、ゲネプロ(全員での通し練習)は本番前週となりましたが、当日もホールでの立ち位置、出入り合わせを確認しながら通した後(本番開場30分位前までやってました)本番、二日目はリハなしで本番のみというものでした。ソリストの疲れもみたらこれが限界でしょうから、このペースで仕上げることを考えないといけません。  とにかく小編成で個々人の能力が高いオケ(自分除く)でした。  打ち上げは​同じキャンパス内のレストラン​にて。ディレクター(制作統括)の大川氏はじめ、合唱、独唱、オケ、舞台(演出、照明、背景)の多くの皆さんが集まっての賑やかな物でした。大道具がない替わりに背景のプロジェクションを使い、演奏会形式とフルのオペラとの中間くらいで構成する阪大オペラですが、これだけの多くの方が一つのステージにかかわっておられたんだ、と改めて「総合芸術」たるオペラの大変さに感じ入りました。こりゃオペラのチケットが高くなるわけだ。  そんな中「オペラの普及」を掲げ無料で頑張る阪大オペラは、素晴らしい活動であると思いました。  オケのTutti奏者ということもあり、役の付いた歌手の方、それも主役級の方なんて雲の上。打ち上げでも首脳陣とお話ししていて、自分とはほとんど縁が無いくらいに思っていたのですが、いざ打ち上げとなると歌手の皆さん、本当に気さくで、私のような弦楽器の末席奏者とでもにこやかに接してくださいました。今年は自撮り写真まで撮らしてもらって・・と見ると、阪大オペラに長く出演されている方は、やはりオケ、歌手、合唱メンバー顔見知りとなられているようで、それがこのアットホームで熱い演奏を支えているのかも知れません。  ありがとうございました!  次回第21回記念の音楽会。すでに日程と曲目は決まっていて、恒例(だそうです)の演奏終了後の舞台挨拶で、お披露目がありました。 ・8/29(土)、8/30(日)2公演 ・阪大コンベンションセンター(今年と同じ) ・演目:歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」(女は皆なこうしたもの)全曲  (モーツァルト作曲) 来年は言語(イタリア語)公演になるようなので、字幕が久々登場となるかもしれません。過去の演奏経歴です。通算339/340ステージ目。 ■J・シュトラウス:喜歌劇「ジプシー男爵」(全曲)     ・(初) ■J・シュトラウス:喜歌劇「ジプシー男爵」序曲 ・(1993/2)    BOT交響楽団/草野 保雄 ・(2016/6)    滋賀医科大学管弦楽団/岩井 一也 オペラパーク管弦楽団での演奏履歴(通算5,6ステージ目)です。 ・2017年オペラパーク 年末第九コンサート 2017/12  (第九全曲) ・大阪大学工業会主催 第19回 音楽会 2018/9/1,2 (喜歌劇こうもり全曲、2ステージ)・2018年オペラパーク 年末第九コンサート 2018/12  (第九全曲) ・大阪大学工業会主催 第20回 音楽会 2019/8/31,9/1 (喜歌劇ジプシー男爵全曲、2ステージ

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る