コントラバス演奏記

2019/12/11(水)21:15

奈良女子大学管弦楽団 第49回定期演奏会 (賛助:2019/12/8)

奈良女子大学管弦楽団(5)

​約2年半ぶり、久しぶりにお声がけをいただきました。学生オケの常ではありますがメンバーはほとんどの方が入れ替わってしまい、また新たな気持ちでの取り組みとなりました。編成上低音が薄い中でのワルツ、ウェーバー、ベートーヴェンというタフなプログラムでしたが、「エロイカ」の2楽章(葬送行進曲)のあとで予期せぬ拍手をお客様からいただくなど、印象深いステージとなりました。​​​《​奈良女子大学管弦楽団​ 第49回定期演奏会》​​2019年12月8日(日) 12:30開場 13:30開演 ​橿原文化会館 大ホール​ 入場料:¥500(当日券あり)(近鉄「大和八木」駅より徒歩3分)   ワルツ「ウィーン気質」/J.シュトラウス    オペラ「魔弾の射手」序曲/ウェーバー交響曲第3番「英雄」/ベートーヴェン 指揮:木下 麻由加(客演) 演奏曲目別の私の演奏位置と使用弓、演奏回数は以下のとおりです。 ・J.シュトラウス:「ウィーン気質」 (初)   2Pult中2Pult out 独弓、4弦 extendor未使用 ・ウェーバー:「魔弾の射手」序曲 (8回目)   2Pult中2Pult out 独弓、4弦 extendor-C ・ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」(6回目) Bärenreiter新版譜面   2Pult中2Pult out 独弓、4弦 extendor-C (アンコール) ・ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番(7回目)    2Pult中2Pult out 独弓、4弦 extendor未使用  今回の演奏会場は、​奈良県橿原文化会館​。ちょうどこの日(2019/12/8)は、​「奈良マラソン」の当日​にあたり、奈良市の中心部は朝早くから交通規制が敷かれていました。いつもの冬の演奏会場である​奈良県文化会館​は、まさに奈良市のど真ん中。さすがに音楽イベントは難しかったかと思います。  このホールでの演奏は、​2017年の奈良女オケさんのスプリングコンサート​以来ですが、​大和八木駅の近鉄百貨店​隣、客席数は約1300名という立派なホールです。奈良市内からは車だと24号線と京奈和道(無料区間)を使っても45分くらいかかる距離に、今回も600名余りのお客様がお越し下さいました。この日は​京都市民管弦楽団​の第100回記念演奏会を含め、関西圏では5団体以上の演奏会が同時に開催されたのですが、固定ファンの方が多いのか、多くのお客様に支持いただき、ありがたい限りでした。  奈良女子大学は複数学部のある大学とは言え、全体の学生数は多くないことから慢性的に団員不足気味な状態です。ここ数年はかなりピンチだったとのことですが、幸い今年の春に新入生が大量入団してくれて、かなり陣容は持ち直してきました。それでも弦楽器はエキストラを入れて、上から10-9-7-5-4人(エロイカでの編成)。ドイツ音楽を演奏するには低音が薄くなってしまいましたが、Vcが当初6人だったのが急遽5人となったとのことで、バランス上コントラバスは4人で結果的にはよかったのかも。また前述のようにこの日はアマチュアオケの演奏会がかなり重なったため、エキストラは取り合いになった可能性もあります。  弦楽器の並びはチェロが内側に入った近代配置(下手から1Vn-2Vn-Vc-Va,Vcの後ろにCb)でした。  コントラバスが4人と言うこと、Vcが少なく、さらに内側配置ということで、コントラバスは二人ずつ前後での2列での布陣となりました。雛壇がなくて、後列もベタのり。何とか指揮は見えましたが、雛壇の共鳴も含め、後列は雛壇が欲しかったなぁ、というのが正直なところでした。管や打楽器の横に誰も居ない雛壇スペースがあっただけに、ちょっともったいなかったです。私は後列の客席寄りでの演奏となりました。  メンバーは昨年バスパートに久しぶりに入団してくれた、唯一の団員さんがトップ(在京プロオケのT山さんを輩出した東京のF高弦楽部出身ということもあり、かなり上手)。トップサイドには永年このオケの賛助をされているK先生、そして2Pultで以前​関西グスタフマーラー響​でご一緒させてもらった、若手Cマシーン楽器持ちのTさんと並ぶこととなりました。  Tさんはちょうど私と入れ違いくらいで奈良女大オケに来られるようになった、とのことで、エキストラ陣も私が2~3年前にお邪魔した時とはK先生を除いて総入れ替え、という感じです。  指揮は、これで奈良女大オケは8回目と、すっかりお馴染みとなった木下麻由香先生。私は​初夏のフィロムジカさんでのニールセン​以来となる顔合わせでした。団員達のお姉さん的な雰囲気なので、団員さん達も自然とついて行く感じですが、先生の気をつけながらの細やかな指導を見ていると、ここの学生さん達は幸せだな、と思います。  奏者の方はエキストラメンバーとして、OGさんや私のように招集がかかった(笑)メンバーがそこそこいるわけですが、OGさん以外はかなりメンバー入れ替わった感じです。特に目立ったのが、女性エキストラの増加。女子大だから女性が多い方が当然違和感がないわけですが、今回に至っては弦楽器の男性エキストラは4名だけ。ま、そのうち2名がコントラバスだったりするのですが。  ひょっとしたら私も若手女性コントラバス奏者を紹介した方がいいのだろうか・・とちょっと考え込んだりしました。  冒頭、いきなりおしゃれにウィンナワルツ。シュトラウスの「ウィーン気質」です。  私はワルツ好きなのでワクワクでしたが、この曲、序奏に弦楽器前列での情緒たっぷりのアンサンブルがあります。コントラバスはソロになるので、もちろん団員の方が演奏します。出来るだけいい条件に、ということで団の楽器に付いていた古い弦を、若手イケメンコントラバスエキストラ(長い)T田さんが持っていたスペアの弦を供出したりとか、張り替えは私が練習後にやったりとか、お嬢さん相手だとつい張り切ってしまうのは、若くても歳でも男の性ですな。  ワルツの頭打ちは、​この夏の「ジプシー男爵」​を経て、「掛かりよりスピード」の気持ちで弾いて、でも気づいたら引っかかっていた、という位の感じが少し掴めてきて(松脂がPOPSになって、掛かりが良くなったこともあるかも知れない)、練習前半では固かった音も後半はだいぶ「らしく」なってきたような気がしました。  ただ、ボウイングが弓順を多用したもので、ダウンの時に威力を発揮するウィーンフィル風弾き方(弦に斜めに当てて、横だけでなく縦方向にも振動掛けて柔らかいけどはっきりした立ち上がりにする)が十分には発揮できなかったのが残念です(本番裏切って一人でダウン連発で弾こうと思ったくらい)。  ずっと同じボウイングで練習した団員の皆さんに突然直前にボウイング変更を提案する訳にもいかず、ちょっと残念感が残りました。次の機会があれば、もっと早めにボウイングのディスカッションをしておきたいものです。  2曲目の「魔弾の射手」序曲。もう学生オケでは定番中の定番みたいな曲です。ウェーバーの序曲は編成がTuba無しのトロンボーン入りフル2管編成で、中規模以下の学生オケにはぴったりなのだと思います。  実は私が初めて演奏したのが​奈良女大オケ​(なんと学指揮さんでのステージ)。以来、木管アンサンブル版の物も入れると8回目の演奏になります。  この曲は中間部にコントラEsのロングトーンがあって、そこのためにHipShotレバーを下げるのが、最近個人定番化しています。実際にはその前後にも分散和音の中でコントラEsがあるのですが、テンション弱くて発音が鈍いHipShotでの拡張音域は8分音符にはあまり効果が無いので、そこは捨て置きました。  演奏自体は序奏のホルンアンサンブルがさすがに緊張で大変そうでしたが、全体的にはかなり立派な出来だったと思います。  そして3曲目で取り上げる交響曲は、ベートーヴェンの第3番、エロイカ。個人的には不滅の9曲の中でも最も好きな曲ですので、とても楽しみにしていました。楽譜はベーレンライターの校訂版譜面。チェロ・バスが別のパート譜で、バスには今の通常4弦楽器では出せない低音が随所に書かれているものです。今回は前列二人が4弦楽器ということもあり、楽譜にある拡張域の低音はできるだけ下げて演奏すべく、HipShotのレバー操作タイミングと演奏可能性(E線をC線に下げることになるので、F~Asが第2ポジション以上のところで押さえることになり、ポジション移動が大きくなります)を考えました。さらにブライトコプフの旧版譜面(チェロ・バスが一つの譜面)では時々やっていた、「チェロをなぞって拡張低音に下げる」対応を一部追加してみました。  今回お隣奏者の拡張音域は5弦ではなくCエクステンション、しかも一番高級な、半音タイプで音程をストップできるレバーがついたもの。これで譜例のところ(1楽章の展開部最後のあたり)を弾くと、4小節単位で   ストップ全開(Low-C)→ Des→ D→ Es と順番に半音ずつストップを留めていく形になります。これで最低音は常に開放弦となるから音程も安定するし、見た目もかっこいいですね。この部分はCエクステンションが絶対ハマる、と思いました。 ​​​(譜例:ブライトコプフ旧版のVc/Cbパート譜より)​​ ​  1楽章は新版楽譜に書かれている所以外では、258小節のC-C重音(HipShotとCエクステンションはE線弦が下がるため、VcがよくやるようなA線のCとオクターブでC音を鳴らすことが出来ます)、再現部最後のあたり(543、561小節からのf/ff部分)を追加で下げてみました。他の楽器では、コーダのトランペットはさすがに昔のようには上げていませんでした(昔は譜面を外れて、完全にメロディーを8小節なぞる演奏が多かった)が、上手くバランスとってかっこよく鳴らしていました(ひょっとしたら3小節目は上のB♭吹いたかな?)。  そして2楽章。冒頭からコントラバスとチェロのソリで、足を引きずるかのような(葬送行進曲)音型を奏でる有名部分となります。ここは微妙な楽譜の書き分けがあり、冒頭から3回は装飾音符、それ以降は16分音符や3連符で書き込んだリズムになります。そしてもう一度この歩みの部分が帰ってくる(Maggioreの後)所では、装飾音符が2回と、微妙に違ったりしています。  今回の演奏ではこの記譜の違いをはっきり表現するために、装飾音符は先頭を拍頭に当てる方式(主体となる音符は拍からずれて聞こえる)を採用しました。ところがこれが結構ややこしくて、お手つき(装飾音符を前に出して、リズムに入った形にしてしまうミス)が本番直前になって続いてしまい、心配した指揮者の先生から、1回目と2回目(Maggioreの後)で、切り替わるところを一緒にしましょうか?という提案まで前日にいただいてしまいました。「大丈夫です」と言ったにもかかわらず、また本番午前のリハーサルでミスが出て、さすがに心配となった先生は本番直前にわざわざ上手ソデのベースパートにお見えになって、色々確認をしてくださいました。で、本番は・・一箇所危なかったかな・・録音はもらう予定はないので、記憶にだけ留めておきます。  ただ、全体としてはこの楽章は良い演奏になって、特にフガートを抜けてからの起伏は曲の素晴らしさもあって、周りの空気も若干色が変わったような感じになったかもしれません。それを感じ取ってくださったのか、この楽章が終わったところでお客様からの拍手をいただきました。エロイカ弾くの6回目ですが、弾くのも聞くのも2楽章で拍手をいただいたのは初めてでした。冒頭から色々緊張やらやらかしはありましたが、出来映えをお客様も感じていただけたのかな、と嬉しくなりました。  3楽章はコントラバスのパート譜としては、やや難しい部類のものとなります。テンポが速い上に音程の跳躍も大きく、跳ね弓のままで弦跨いだ移弦もしたりと、右手左手共に技術が必要です。年取ったおかげ?で右手はそれなりに弦を掴めるようになったのですが、すでに左手が上手くまわらず・・上達がちぐはぐになってしまったのが、何とも残念です。  トリオ部分はホルンが活躍する有名な部分ですが、ここのホルンはバッチリ健闘。そしてバックはベートーヴェンのスケルツォ特有の変則フレーズ(1小節1拍として、合いの手が4,8拍単位にならず、ずれた位置に入ったりする)があり、カウント必須(今練習中の7番でも苦労しています)。練習では時々お手つきしたり、入るタイミングを失うパートがあったりしましたが、本番は集中力で乗り切れました。  それにしても、1ヶ月前の時点で、ワルツはどんどん遅くなり、エロイカはどんどん走って行っていたオケが、昨日の練習ではすっかり落ち着いてテンポをキープ出来ている・・若い頃の一ヶ月は、ほんと凄いです。私もこの位のペースで変化(上達)したいものだ、と羨ましくなってしまいました。  4楽章、旧版時代は変奏曲の最初暫く(全員合奏になる前)は弦楽器のpizz.やarco.を色々いじる演奏もしましたが、ベーレンライターの校訂版が出てからはほぼ譜面どおりに落ち着いた感じです。変奏曲なのに大きな起伏とドラマのある素晴らしい楽章ですが、最後の最後に16分音符でsf連発のfがベターッと続くため、疲労度は高いです。  これもHipShotのおかげで譜面に書かれているLow-Esとかをしっかり鳴らすことが出来、低音的には満足でした。ただ、HipShotの最大の副作用は、レバーを倒してE線のテンションを緩めると、その影響で他の弦のチューニングが動くこと。私の楽器では、A線は高くなり、D,G線は低くなります。今ではそれも計算に入れて、A線の音は低めに押さえ、D,G線は高めに押さえて、あとは耳で調整していますが、やはり忙しいところとかになると、そういうわけにもいかず、特に音程の精密さが要求されるところではストレスがかかります。  なので低音拡張できる楽器が多いオケなら、どうしても必要なところ以外は出来るなら使わずに・・としたいところではあります。次回は「未完成」も演奏する、ということですので、ぜひ低音拡張できる楽器(奏者)を呼んできてほしいものです。あ、もちろん私も冒頭は下げますよ!  アンコールは、ブラームスの「ハンガリー舞曲」第1番。アンコール定番曲とは言え、テンポやダイナミックスの振れ幅が大きくて、曲に慣れていないと事故が起こりやすい曲でもあります。先生もコンマス中心のアンサンブルを指示しつつ、判りやすいテンポ設定とアインザッツで、少ないリハーサル回数でしたが無事に演奏を終えることが出来ました。ベートーヴェンよりあと、この辺の時代の曲になると、濃い音色や激しいsfなどかなり思い切りよく落差を付けないといけないのですが、その辺はたおやかなお嬢様方が慣れるまでにはもう少し時間が掛かったようです。出来るだけ応援しようと頑張って、久しぶりにピチカート・ダコを更新しました(幸い血豆にはならず)。 以前の打ち上げは学内の食堂で行われていましたが、今年は趣向を変えて(?)​結婚式場を借りての​立食パーティー形式。初冬の日曜夜、しかも仏滅ということで結婚式場の稼働率も低かったでしょうから、ちょうどいい具合に需要と供給がかみ合った感じでしょうか。メンバーも入れ替わったことから、男子の少なさにビビりながらも参加させてもらいました。学生オケの打ち上げは、卒団(オケ活動の卒業。奈良女は一旦3回生でキリを付けるようです)、運営メンバ交替のセレモニーがお約束。後輩達からのサプライズプロジェクションがあったり、と心温まる打ち上げでした。  と、同時に私と近い世代のOGさん達から要望されていた「現役とOBの橋渡し」ということで、新運営メンバーをたぐって、OGさんのSNS上交流掲示板(私も何故か参加してます)へつなぐことが出来ました。今日一番仕事した、と思える瞬間。 第50回定期演奏会に向けて上手く交流していってほしいものです。  1回生の大量入団で充実へのきっかけをつかんだ奈良女オケ、次は来年5/23にスプリングコンサート。これは新入生へのアピールも兼ねているので、今の流れを確実にするように来年も多くの団員が入団するような充実した演奏になってほしいものです。そしてその先の冬には、いよいよ第50回定期演奏会が控えています。 過去の演奏経歴です。通算345ステージ目。■J.シュトラウス:「ウィーン気質」 (初) ■ウェーバー:「魔弾の射手」序曲 ・(1988/05)    奈良女子大学管弦楽団/葛巻 則子 ・(1988/06)    滋賀医科大学管弦楽団/船曳 圭一郎 ・(1994/03)    ニューシティー・オーケストラ/上野 正博 ・(1998/09)    アンサンブル・ルフト(室内楽版)    ・(2011/05)    八幡市民オーケストラ/中井 章徳 ・(2011/11)    八幡市民オーケストラ/村尾 浩也 ・(2015/06)    滋賀医科大学管弦楽団/岩井 一也 ■ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」 ・(1992/03)    ニューシティー・オーケストラ/上野 正博 ・(1996/07)    富士フィルハーモニー管弦楽団/堤 俊作 ・(1999/06)    いさだホール室内管弦楽団/尾崎 晋也 ・(2017/01)    西陣お弁当オーケストラ/福盛 亮介 ・(2017/11)    大阪工業大学管弦楽団/国沢 晴香 ■ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番 ・(1996/07)    富士フィルハーモニー管弦楽団/堤 俊作 ・(1996/11)    駿河フィルハーモニー交響楽団/関谷 弘志 ・(2001/07)    清水フィルハーモニー管弦楽団/藤崎 凡 ・(2007/05)    八幡市民オーケストラ/三河 正典 ・(2011/06)    滋賀医科大学管弦楽団/岩井 一也 ・(2015/06)    滋賀医科大学管弦楽団/岩井 一也 ​奈良女子大学管弦楽団​さんとの演奏履歴(通算7ステージ目)です。  1983/11    第14回定期演奏会  奈良県文化会館  1984/11    第15回定期演奏会  奈良県文化会館  1988/5    1988スプリングコンサート  奈良女子大学講堂(旧講堂)  1988/11    第19回定期演奏会  奈良県文化会館  2016/12    第46回定期演奏会  奈良県文化会館  2017/4    2017スプリングコンサート 橿原文化会館​

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