民法 20 相続総論・相続人
20 相続総論・相続人 1 相続総論 1 相続の意義 自然人が死亡した場合に、その者が生前に有していた財産上の権利や義務を特定の者 が包括的に承継することを相続という。 この場合の死者を被相続人、承継する者を相続人といい、承継される包括的な財産を 相続財産(遺産)という。 2 相続の開始要件 相続は人の死亡によって当然に開始する(882) なお、失踪宣告を受けた者もの死亡とみなされる(31)。 相続は、被相続人の最後(死亡時)の住所において開始する(883)。 住所以外の場所で死亡しても、相続開始の場所は死亡時の住所であり、これにより 相続に関する訴訟の管轄が定まる。 例。Aが東京都新宿区で死亡、Aの死亡時の住所は横浜市で、相続人はBのみ。 Bが死亡の翌日戸籍の届出をし、Aについての相続は横浜市で開始する。 2 相続人 相続人の範囲と順位 相続人は、配偶者相続人と、被相続人の血族であることから資格が認められる血族相続人 に分類される。 ケース1 (1)配偶者相続人 被相続人に配偶者がいる場合、その配偶者は常に相続人となる(890前段)。 この場合、血族相続人がいる場合は第1順位の同順位で相続人となる(890 後段)。 なお、配偶者がいない場合は、配偶者を除いて次の順位で血族相続人が相続する。 (2)血族相続人 1、第1順位の相続人 被相続人の子は第1順位で相続人となる(887−1)。 第1順位の(血族)相続人がいれば、他の血族(父母等の直系尊属や兄弟姉妹等の 傍系血族)は、相続人とならない。 子が数人いるときは、それらの者が共同して相続人となる。 ケース1のAの相続人は、B,C,D,H である。 2、第2順位の相続人 被相続人に子やその子を代襲すべき直系卑属がいない場合、被相続人の直系尊属が 相続人となる(889−1)。 ただし、被相続人に母と祖母がいるときのように、親等の異なる直系尊属がいる 場合は、被相続人に親等が近い者が優先する(889−1ただし書)。 親等が同じ者がいる場合は、それらの者が共同して相続人となる。 ケース1で被相続人に子がいないCDEFHを除いて考えると、Aの相続人は、BIK である。IKがいない場合は、BとJが相続人となる。 3、第3順位の相続人 被相続人に第1順位の相続人・第2順位の相続人のいずもれいない場合は、 被相続人の兄弟姉妹が相続人となる(889−2)。 兄弟姉妹が数人いればそれらの者が共同して相続人となる。 また全血、半血兄弟姉妹は問わない。 ケース1でCDEFHIJKがいない場合のAの相続人はBとLである。 (3)胎児の相続能力 相続人は、相続開始のときに存在しなければならない。これを同時存在の原則 という。 例外として、胎児は相続に関しては、すでに生まれたものとみなされる(886−1) よって、ケース1の場合、Aの死亡時に妻BがAの子を懐胎していた場合は、その 胎児もAの相続人となる。 ただし、胎児が死体で生まれたとき、すなわち死産であったときは、相続人となる ことができない(886−2)。 *胎児のすでに生まれたものとみなすについては、停止条件説と解除条件説が がある。不法行為における損害賠償請求に関する胎児の権利能力の議論と同様。 2 代襲相続 ケース1でAの死亡よりも前にDが死亡している場合、Dは同時存在の原則により相続人 となれないが、この場合Dの子であるEがDに代わってBCHと相続人になる(887−2)。 このような相続人になるはずの者に死亡等の一定の事由があるため相続人となることが できない場合、その者の子が代わって相続人となることを代襲相続という。 本来の相続人を被代襲者、代わって相続人になる者を代襲相続人という。 (1)要件 1、被代襲者の要件 被代襲者が、被相続人の子又は兄弟姉妹である場合に限る(887−2)。 配偶者相続人や直系尊属には代襲相続は認められない。 2、代襲原因の存在 ア)被相続人の子又は兄弟姉妹が、相続の開始以前に死亡したとき。 これは、被代襲者が被相続人と同時死亡した場合も含む。 なお、同時死亡の推定(32の2)を受ける場合も同様。 イ)被相続人の子又は兄弟姉妹が相続欠格事由に該当するか、廃除によりその相続権 を失ったとき。なお、相続放棄は、代襲原因に含まれない。 3、代襲者(代襲相続人)の要件 代襲者は、被代襲者の子であるとともに、被相続人の直系卑属又は傍系卑属でなけれ ばならない。 (2)再代襲 ケース1で、Eが代襲者となるべき場合において、EがAより先に死亡しているなど、E にも代襲原因が存在するときは、Eの子でかつAの直系卑属であるFがBCHと共に 相続人となる。これを再代襲という(887−3)。 再代襲は、被代襲者が被相続人の子である場合のみ認められるので、被代襲者が 被相続人の兄弟姉妹である場合には、認められない。したがって、ケース1では Mについて代襲原因が存在してもNが再代襲できない。 3 相続欠格 (1)欠格事由(891) 1、被相続人、又は相続につき先順位かどう順位にある者を故意に殺したか、殺そうと したため形に処せられた者。 なお、執行猶予が付された場合は相続欠格とならない(通説)。 また、過失によってなど故意でない場合も該当しない。 2、被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。 ただし、次の場合を除く。 ア)その者に是非の弁別がないとき イ)殺害者が自己の配偶者又は直系血族であったとき(兄弟姉妹は除く) 3、詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、 又は変更することを妨げた者。 4、詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、 取り消させ、又は変更させた者 5、相続に関する被相続人の遺言を偽造・変造・破棄・隠匿した者 (2)効 果 1、当然効 手続きを経なくても当然に相続権を失う(891)。 また、被相続人から遺贈を受けることもできない。 2、相対効 相続欠格の効果は、欠格事由にかかわる特定の被相続人との間で相対的に発生。 他の被相続人との間の相続権は失わない。 3、効果発生時期 欠格事由に該当したのが、相続開始前であればそのときから、また相続開始後で あれば相続開始時にさかのぼって、欠格の効果が発生する。 4 推定相続人の廃除 相続人に自己の財産を相続させたくない事情がある場合、一定の要件のものとで 被相続人の意思により推定相続人に相続させないように家庭裁判所に請求できる。 (1)対象者 廃除の対象となる者は、遺留分を有する推定相続人である(892)。 遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の相続人であり、被相続人の配偶者、 子(代襲相続人を含む)、直系尊属が廃除の対象者となる。 兄弟姉妹には遺留分がないため、兄弟姉妹に相続させたくないときは、他の者に全財産 を遺贈等すれば済む。 (2)廃除事由(892) 1、被相続人に対する虐待 2、被相続人に対する重大な侮辱 3、推定相続人の著しい非行(1、2以外の) (3)方法 生前廃除と遺言廃除があり、被相続人が自ら行う。 1、生前廃除 被相続人が推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求し(892)、審判又は調停により 廃除される。 2、遺言廃除 被相続人が、遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、その遺言が効力を 生じた後、遺言執行者が推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求し(893)、審判等 により廃除される。 (4)効 果 家庭裁判所の審判等により、初めて効果が生じる。 1、相対効 廃除の効果は、廃除をした特定の被相続人との間で相対的に発生する。 2、効果発生時期 生前廃除は、廃除の審判等が確定しときから。 遺言廃除は、相続開始時に遡り発生(893)。 (5)廃除の取消 一旦廃除をしても、被相続人がその者に相続させてもよいと考えたときは、被相続人 からいつでも廃除を取り消すことができる。 なお、この場合の理由は不要である。 1、生前であれば、被相続人が家庭裁判所に請求(894−1) 2、遺言によって行う(遺言執行者が家裁に請求) いずれも家庭裁判所の審判等による。 (6)廃除に関する審判確定前の遺産の管理 廃除の審判等が確定する前に相続が発生したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係 人、又は検察官の請求により、遺産の管理につき必要な処分を命ずることができる。 必要な処分とは、遺産の管理人の選任等がある。 確定しない間に相続財産が処分されると、法的な混乱が生ずるおそれがあり、これを 回避する趣旨である。