おしゃべりたまてばこ~100円ショップこぼれ話~

2008/03/23(日)21:33

みえないものがほんとうのもの。

もうすぐ父の命日がくる。命日に近い日曜日は、法事の節目ではないけど 毎年姉妹が唯一顔をあわせる一年に一度の日である。今年は妹のアビちゃんが関東に住居を構えたばかりで 戻ってこないため、初めて三姉妹が揃わない法要になった。お寺の住職さんは、いつもお経を唱えたあとで ひとことお話をされる。法事というと、子どもの頃は退屈で足がしびれて 痛くなるイメージばかりであまり好きではないのだけど この住職さんのお話はいつもわかりやすい。 「みえないものがほんとうのもの」 そう住職さんがおっしゃる見えないものとは、 仏様のことで、亡くなった人の魂だという。体は消えてしまっても魂は残っている。 教えは残った家族やとりまく人間をきちんと導く。生きているものは気づかないけれど、今日の法事も 亡くなったお父様がいなければこうして姉妹が 顔をあわせる機会はないでしょう。今日、この場にいなければいけない人間が 集まるように導いているんですよ。 そうゆっくり諭すようにおっしゃったあとで、 教本や数珠が入っていた大きなバッグをごそごそと さぐりだした。  ででん。   住職さん、薄型のCDラジカセをバッグから いきなり取り出し、ボタンをあちこちいじる。 かちっ、ぷしっ。 どうも、再生したいようだけどボタンを押しても すぐに押し戻されるようだ。 かちっ、ぷしっ。かちっ、ぷしっ。 「あの。うちのラジカセ持ってきましょうか?」 実母のカヤコさんが、ラジカセを用意しましょうかと 住職さんに声をかけるけど、 「大丈夫ですっ。」 住職さん、そう言うと続けて再生ボタンを押し続ける。 「先立ってしまった大切な人は、今は風となり光となり 声となって呼び続ける、そういうこの歌が私は大好きなんです。」 かちっ。  あ、再生した。 再生されたその曲は、あの名曲であった。 「さぁ、みんなで合唱しましょう。」  そして、なぜか法事の席で今や国民的大流行の名曲を 大合唱する。 「わたしのーー おはかのーーまーーえでーー♪ なかないでくださーいーーーー♪♪」   ***************************************  住職さんをお見送りした後のこと。 「しっかし、今日の法事は歴史に残るんじゃないかね。」「歌ったのは初めてじゃね。」「ミサで賛美歌とは違うような気がする。」「しかもマイラジカセだったし。」「バッグから出したラジカセは防水の風呂場に持ってく ちっちゃいやつじゃね。」  来年はどうなるんだろう。 

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