on the other side of the world

2005/09/05(月)07:02

目撃者 [肆]

埃だらけの洋館(19)

幽霊目撃者1、2、3、4、5、6 [映像・埃だらけの洋館の応接間で幽霊談] いるはずがない女性が狭いお手洗いの流し台に向かっていた。情況を知らない母上は彼女とはち合わせて動揺している。てっきり下宿の友人、D だと思い込んでいる。 ムーミンはちょっと楽しくなってしまったそうだ。その元配膳室のお手洗いに侵入者がいるかどうか見に行くが、勿論誰もいない。家の鍵は帰ってすぐかける癖があるし、第一、古い洋館なので人が歩きまわったりすると少しばかり床が軋む。他に「人」などいないのだ。 (怪猫が肩の筋肉をうねらせて巡邏しても、みしみし軋む。< 現場中継 >この節を書いていたら呼ばれたように、床を軋ませて、書斎に入ってきた。これも「地獄耳」というのだろうか。後足で立ち前足を机にかける。机が、肩の下までしかこない。化け物め。ジャスミン・ティーしかないのを確認して、のしりのしりと去っていく。< /現場中継 >) 一応台所も見回ってきたムーミンは、微笑して聞いた。「それってどういう人だった?」 「どうって、びっくりしてすぐドアをまた閉めたから観察なんかしなかったけど、背が私より低くて、小柄で、髪が長くて茶色くて...」 「『ドアをまた閉めた」って、閉まってた訳?」 日本ではどうだか知らないが、コチラでは(知る限り)「空室です」というシグナルにドアを少し開けておく。 「何言うの、閉まってたらノックするでしょ、少し開いてたのよ、『誰もいないっ』てどういう意味?私が見たのは、じゃあ、誰?頭をぶつけあいそうになったんだからいたのよ、もっと家中探したほうがいいんじゃない?」 たかが四畳の、床も天井も壁も白ずくめの明るい昼間の部屋で見間違えた、ということはあるのだろうか。

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