2010/07/28(水)03:45
北米古城ホテルの怪談・19・暗闇の中
昼間、明るいとまったく怖くないあのエレベーター・ホールだ。
だが消灯後、まっくらな空間で、遺体の話をひそひそされてはたまらない。
イヤな事にまたぴったり言い当てていたらしい。ホテル従業員の E と K の説明によると、ケリーの言う「最近」とは 2001 だった。
その九月、急用でホテルに泊まった若いビジネスマン。あまりにも急な出張のため、家族旅行中だったのだがそれを二日抜け出し、単独でこの田舎町まで飛んできたという。
だが、到着した次の日、あのテロ事件が起きた。
ビジネスマンの家族はちょうどニュー・ヨークの観光中だった。
数時間後、彼の家族は皆亡くなってしまったという訃報が取り次がれた、という。
ここまで説明して「後はその五階を」と K が促す。発見された五階。
まさか。
よりによってあの事件に巻き込まれたなんて。こんなプレーリーのど真ん中のど田舎で。
だから「ここにいるべきじゃなかった」と繰り返しているのだろうか。
でも発見が遅れたって何?
手入れが行き届いたこのホテルで?
「こちらの階段でよろしいですか?」と聞く K の様子がちょっとおかしい気がした。今度はまた違う階段を使うらしい。
イヤな予感がする。
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続く
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