♪たなひろの医食農日記♪

2008/09/03(水)05:40

健診で健康になれるか!?

医療となかま♪(13)

 ブログには食農活動関係ばかりをUPしていますが、私の日常の仕事の大半は、健診センターで健康診断の結果が出た後の相談業務です。  受診者は40~60歳代の方が多いですが、U-40の受診者に多い、気になる事例を紹介します。  36歳女性のSさん。出産経験あり。検査結果はすべてA判定(優良) 私「結果はすべてA判定でしたが、何か健康上気になることはありませんか?」 Sさん「痩せませんね(笑)」 身長150cm、体重52.7kg。出産前は49kgだったとのこと。確かに少し増加しているし、同じ女性として気持ちもわからんでもないですが健康体重で考えると問題なしです。 ただ、A判定をよくよく見てみると、糖尿病の検査として行う糖負荷試験で、ちょっと気になる数値を発見。 糖負荷試験とは? 空腹状態で75gのブドウ糖が入ったジュースを飲んでもらい(激甘ですが、炭酸が利いているので、サイダーと思えば結構いける味)1時間後、2時間後に採血して、血液中の糖分を調べる検査です。 Sさんの場合、空腹時は80mg/dl、1時間値143mg/dl、2時間値126mg/dl。健診の種類によって判定基準も一律ではないですが、厳しい基準で見ても、空腹時100以下は正常だし、2時間値も140を切っていれば判定は正常と出ます。 私「妊娠中に糖尿病に関して何か指摘されたことはありませんか?」 Sさん「そういえば、妊娠中はおしっこに糖が出て、何度か再検査したことがあります。」 おしっこの糖は血糖が170mg/dl以上ないとなかなかでないのです。Sさんの場合、妊娠中は、特別甘いものを食べなくても、普通の食事で170以上を超えていたのだと思われます。  血糖を下げるために働くインスリンは、すい臓から出ていますが、日本人はもともとすい臓の機能があまり強くない人が多いので(もともと農耕民族だし、カロリーの高いものを食べる機会がほとんどなかったから、強いすい臓は必要なかったのでしょう。)血糖値があがりやすいのにくわえて、脂肪が増えるとさらにインスリンの効きを悪くする阻害物質まで出てきます。妊娠中はいわば「肥満負荷試験」をしているようなものです。体脂肪が増加したときに糖が出やすい人は、出産後もそのまま体重が増加したままだと、インスリンの分泌が悪いうえに効きも悪いという状況下に置かれ、すい臓は、弱り目に祟り目、10年、20年後と経過していくうちに疲弊して、インスリンの出がいよいよ悪くなり、糖尿病へと移行していく確率が極めて高くなります。  そういうわけで、Sさんは、健康体重ではありますが、やっぱり体重は少し落としたほうがよいということになります。 「妊娠中のときは糖が出て気になったけど、妊娠中毒症にならなかったからよかったのだとしか思っていなかった。そういうことだったら今から注意しようと思います。」 といわれてSさんは帰られました。  今、特定健診で話題となっているメタボリックシンドローム。内臓脂肪を減らせば改善されると期待されている項目の中に、血糖値も含まれますが、60代以上になると、痩せても血糖はなかなか改善しません。それは長年のすい臓酷使の結果、脂肪がとれて阻害物質が出なくなっても、すい臓自体が弱ってしまっているから。 「もっと早く、自分の体のことを知っておけばよかった。」 健診結果が出た後に、30代や40代の早い段階で、体質や経過も踏まえて体の仕組みまでお話が出来るのはほんの一握りです。大半の方は結果通知が後で送られてきます。「A判定」を見たら間違いなく「私は健康」と思うし、それ以上考えることはないでしょう。  健診をうければ健康になれるわけではありません。健診結果から自分の体のことを知ってどう生かすかまで理解して初めて意味があるものになります。その橋渡しをするのが私たちの役目であり、プロとして期待されるところだと思っています。  最後に糖負荷試験ですが、できれば30~40代のはやい段階で一度はしてほしい検査です。(両親が糖尿病の傾向がある方は特に!)また、HbA1c(ヘモグロビンA1c=糖化ヘモグロビン)という検査項目は最近よく実施されるようになっていますが、これも5.2%以上ある人は早めにすい臓をいたわってあげてくださいね。

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