独白劇場

母方の祖父と叔母一家が関東に住んでいる。
祖父は健康とはいえ耳も遠く、かなりの年である。

たまに会いに行くのだが、ここしばらくは祖父と
正月を過ごしたことがなかった。

ある事情があり、数年来叔母の家からは

『明けましておめでとうございます』

という挨拶が消えた。
多分、これからも消えたままであろう。

とにかく、祖父と共に過ごせる正月は久しぶりだ。
新築の家が建ち、年末に引越したばかりの祖父。
完全にバリアフリー設計で床暖房。

今までのバリアだらけで寒い家とは格段に違う。
暖かい家は心地がよいのか祖父も頬がふっくらして
赤みが差していて幸せそう。
そんな祖父を見ると来てよかったと思った。

叔母夫婦、最近結婚した従妹夫婦、そしてシングルの私で
祖父と一緒にひと時賑やかに過ごした。

祖父も『大勢で食べるのは美味しいんね』と嬉しそう。

数時間賑やかに過ごしたあと、次の朝は仕事の従妹夫婦が
先に帰っていった。

携帯で祖父の写真を撮っていると

『写真が撮れるんかい？』

と楽しそうだった。
携帯で写真を撮られるのは初めてだったようだ。
一緒に写真を撮ってみた。
嬉しそうに写っている。

私が帰る頃。

『もう帰るんかい』

と少し寂しそうな祖父。

賑やかに過ごしたあと、ひとりになるのは寂しいよね。

『今度、近いうちに泊まりにくるから』

と、約束し帰路につく。

空約束にならぬよう、早く泊まりにいこう。