シャンパンの湯
以前から久住高原に気になるカフェがある。天気がいいので、ドライブがてら出かける。瀬の本高原から久住を眺めると、熊本県側は野焼きのため山が坊主で、大分県側は杉が茂っていて、その対照がおもしろい。目指す「Cafe Boi Boi」はログハウスで、暖かいのでデッキ席に座った。はるか遠くまで見渡せて気持ちがいい。柔らかい風を受けながらしばらくぼーっとする。評判のチーズケーキとコーヒーを注文する。チーズケーキはあっさり味で、コーヒーの味も悪くない。店の犬ピースが寄ってきた。人懐っこくておとなしい。本でも読みながら一日中ゆっくりしたくなる、居心地のいいカフェだ。デッキ席と反対側は久住連山が間近に見える。次に老野湧水へ向かう。農村をかなり深く入っていくと、小さな神社があり、その横にひっそりとあった。水を汲む場所も狭く、20リットル容器に水を入れるのに少し苦労する。湧水の割に味は甘みもまろやかさもそれほど感じない。近くの温泉に立ち寄るつもりでいたが、道を間違えて気がつくと長湯温泉まで来てしまった。本当は次回来るつもりでいたのだが、せっかくなので長湯に入っていくことにする。川辺にあの有名なガニ湯を見つけたが、さすがに入る度胸はなかった。この無料の露天風呂には脱衣所などはなく、川の両側の道から丸見えなのだ。湯船に近づき、手を入れてみると湯加減はちょうどいい。ここで温泉マニアなら喜んで湯に入るのだろうが、残念ながら俺はまだその域に達していない。気を取り直し、近くにある名物ラムネ温泉へ。http://www.lamune-onsen.co.jp/昨年施設を建て替えたばかりだそうで、小じゃれた造りになっている。脱衣所からくぐり戸を開けて風呂場に入る。曲線を強調したコンクリート造りの芸術的な内装に少し驚かされる。ガイドブックに載っている旧施設の木造の方が風情があったような気がする。浴槽は3つあり、湯でつながっている。湯は深緑色。炭酸泉なので、口に含むと酸味がある。ちょうどいい湯加減だ。外に出ると、木製プールのようなものがあり、こちらが高濃度低温のラムネ温泉だ。まだ肌寒いので、ビニールハウスで覆われている。湯はぬるい。31度と書かれている。高濃度のためすっかり浸かってしまえば寒さは感じない。すぐに銀色の気泡が全身にびっしりと付いた。まるでシャンパン風呂に入っているみたいだ。このあわあわ感が実に心地いい。のぼせることはないので、いつまでも入っていられる。確かに長湯温泉だ。もう一度内湯に浸かり、体を温めて風呂から上がる。飲泉場に立ち寄る。ドイツ風の素敵な造りだ。温泉水は独特の温泉臭さがあるが、炭酸が含まれているので爽快感がある。ドイツのバーデン・バーデンの温泉を思い出した。ペットボトルにも汲む。帰り道を少し迂回してめ組茶屋へ行く。天然炭酸水が涌き出ていると聞いて興味があった。湧水を飲んでみると、確かに炭酸水だ。すごい。ヨーロッパみたい。水汲み代は20リットル100円だそうだが、俺はペットボトル1本だけだったので無料にしてくれた。ここは水道が整備されている。週末になるとたくさんの人が水汲みにやって来るらしい。すぐ近くにソーダの湯という温泉施設もある。久住高原の夕陽が美しくて車を停め、じっくり眺める。どんどん沈んでゆく。久住高原方面にもっと早く遊びに来ればよかった。また来よう。