カテゴリ:読書
職場のお友達が読書家で、よく本を貸してくれます。
これも、貸していただいた本です。 かなり前の江戸川乱歩賞作品、井沢元彦の「猿丸幻視行」。 主人公は、友達に代々家宝として伝わる額を見せてもらいます。 その額には裏表に歌が書かれています。 その歌に隠された暗号を解き、財宝の隠し場所をを突き止めたいという友達と共に、 主人公は歌に隠されている暗号を探し始めます。 その額に書かれた歌の1つが、 いろはにほへと・・・で始まる「いろは歌」です。 色は匂へど 散りぬるを 我が世誰そ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢みし 酔いもせず 全ての仮名を1字ずつしか使えないという条件の中で、 歌に仏教の基本教理を盛り込んだ素晴らしいもので、 弘法大師作と言われているそうです。 そして、この「いろは歌」には折句(沓冠)という言葉遊びの技法も込められているのだそうです。 いろはにほへと ちりぬるをわが よたれそつねな らむういのおく やまけふこえて あさきゆめみし えいもせす 沓(語尾)の部分を拾って読むと、「咎なくて死す」となり、 「罪を犯さず清らかに死ぬべきだ」という教えが込められているそうです。 しかし、主人公は、これを 「無実のであるにもかかわらず死す」と解釈し (梅原猛氏の著書を参考にしているらしいが)、 「いろは歌」は、持統天皇に無実の罪で処刑された柿本人麻呂の作と考えます。 そして、ここから謎解きが始まります。 さらに、額にはもう1つ、百人一首の有名な歌が書かれています。 奥山に 紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞くときぞ 秋は悲しき この歌の作者、猿丸太夫と人麻呂の関係がストーリーを展開させていきます。 有馬皇子や大津皇子の話などを聞くにつけ、 持統天皇は凄い女性だと思っていましたが、 この本でも、やはり、持統天皇によって抹殺された皇位継承者とその側近の無念が連綿と流れています。 これらの謎を解いていくのが折口信夫。 実在の人物であるので、この小説のどこまでがフィクションでどこまでがノンフィクションなのか分からなくなってしまうのです。 とはいえ、千年以上昔の話、 何が本当なのかなんて、書物の解釈の仕方で大きく変わってしまうのでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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