探偵の愚痴をきいてください

2006/02/03(金)20:37

コマネチ・・・

アイーン、アイーン。 笑っちゃう? 確かに、この話を聞いたほうはそう感じるかもしれない。 私も笑ってしまった。 しかし、その部屋の当事者は、そうはいかなかったのだという。 笑い飛ばせればどんなによかったろうか。 依頼者の表情、声の調子、タイミング、 その部屋の空気が、それを許さなかった。 いろんな感情が、アイーン、アイーン、とこだまする。 あまりにも切なくて、やるせない感情が交錯し、 報告担当は、うつむき、声をかけれなかったという。 『わらっちゃうね、うちのだんな・・・』 『我々の世界では珍しい光景ではありません』 少しでも気を軽くさせるために言ったという。 『そうなの・・・』 担当は、ビデオデッキに向かうと再生を止めた。 『この先はもっとつらいものを見ることになります』 『・・・・・・』 依頼者はうなだれ、やがて立ち上がると担当に背を向けた。 泣いていたのかもしれない。 重苦しい沈黙を打ち破ったのは依頼者だった。 『コマネチって知ってますか』 『・・・コマネチ・・・ですか』 『そう、彼女にだって負けない。 私、体操選手だったの。 県の大会に出たことも』 『・・・』 『今でもたまにやるんですよ。 ちょうど、こんな時に・・・』 そう言って、美しい弧を描いた。 それは、側転だったそうな・・・ 担当は思った。 このひと、側転しちゃったよ!! 何故に側転?? やるならバク転でしょ・・・ 私は、回転する依頼者に出会ったことがない。 その場にいれなかったことを心から悔やんだ(終)

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