婦人科の待合で
昨日、大学病院に行き、受け付けを済ませ、自販機でお茶を買った後に婦人科に行くと、診察の順番を知らす電光掲示板には、すでに私の番号は中待合に入るように表示されていました。中待合の椅子に座って待っている間、入院中の出来事を思い出しました。 それは一昨年7月、治療も全て終わり、血液データの回復を待って、あとは退院するのみというある日のこと。その日は婦人科外来の受診でした。入院中、他の科を受診するときは、診察時間近くになると病棟に連絡が入り、外来に行くわけですが、外来はどこも混んでいるため、結局待合で待つことになります。その日も婦人科はたくさんの女性が待っていましたが、点滴を下げ、パジャマに帽子姿、眉もまつ毛もない私の姿はとても目立っていたと思います。私の隣の席は、皆避けているのかずっと空いたままで、他人の視線が痛く感じた私はずっと下を向いて待っていました。しばらくすると1人の女性が私の横に座ると、私に話しかけてきました。「ここの婦人科にいつも通っているんですか?」「いえ、私は他の科に入院していて、婦人科は2度目なんです。」私がそう言うと、彼女は「私も婦人科は初めて。他はいろいろあるんだけど。」と言いました。私の姿を見て、ガン患者と思ったのでしょう。私より少し年上に見えるその彼女は、その後、自分のことを話してくれました。「私ね、○年前に胃も取っちゃったし、そのあとに○○、その次は××も取っちゃったの。」(○○と××は、たしかすい臓と大腸?だったと思います。)小柄で痩せてはいるものの、花柄の上品なスカートを履いて、きちんとメークし、可愛い声で笑って話す彼女が、とてもそんな大病を何度も繰り返しているとは思えず、驚きました。「お元気そうに見えるのに・・・」と言うと「そうでしょ、みんなに言われるの。でも、私のお腹の中は空っぽなのよ。今度は卵巣も取っちゃうことになるのかな・・・」と、その時だけ少し寂しそうに言いました。なんと声を掛ければわからず「私は長い間、入院していたけれど、やっと退院できそうなんです。」と言うと、「そう、良かったわねー。」と笑顔で言ってくれました。彼女ともっと話がしたい!そう思ったとき、私の名前が呼ばれました。「じゃあ」とお互い軽く会釈し、私は診察室に入り、待合に戻った時には彼女の姿は見えませんでした。 たった数分の出来事だったけど、昨日、待合で、あの日座った椅子を見た時、彼女のことを鮮明に思い出しました。あの彼女、今、どうしているかな・・・どうか彼女が元気に幸せに過ごしていますように。。。