|
テーマ:最近観た映画。(38808)
カテゴリ:映画 ア行
『イースタン・プロミス』を観ました
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のデヴィッド・クローネンバーグ監督と ヴィゴ・モーテンセンが再びタッグを組み、 ロンドンに暗躍するロシアン・マフィアを描いた犯罪バイオレンスです >>『イースタン・プロミス』関連 原題: EASTERN PROMISES ジャンル: サスペンス/犯罪/ドラマ 製作年・製作国: 2007年・イギリス/カナダ/アメリカ 上映時間: 100分 監督・衣装デザイン: デヴィッド・クローネンバーグ 出演: ヴィゴ・モーテンセン ナオミ・ワッツ ヴァンサン・カッセル 【ストーリー】 クリスマスを控えたイギリス、ロンドン。 助産婦のアンナが働く病院に、10代の幼い妊婦が運び込まれる。 少女は、女の子を産んだ直後、息を引き取った。 少女のバッグからロシア語で書かれた日記を見つけ出したアンナは、孤児となった 赤ちゃんのためにと少女の身元を調べ始める。 ロシア語の分からないアンナは、挿まれていたカードを頼りにロシア料理の店を訪ねる。 そしてその店の前で、運転手だという謎めいた男、ニコライと出会うアンナだったが…。 ここから先はネタバレを含みます。ご注意を ここでしか、生きられない。 病院で息を引き取った身元不明の少女の日記を紐解いていくサスペンスとしても、 卑劣なロシアン・マフィアの犯罪行為を描く犯罪映画や社会派映画としても、 そして、ヴィゴ・モーテンセンの渋い男の魅力を出しきったハードボイルド映画としても 主人公と愛する事が出来たかもしれない女性との切ないロマンスとしても 2重にも3重にも楽しませてくれる映画でありました。 ロンドンの裏社会に暗躍するロシアン・マフィアと彼らに目を付けられてしまった助産師アンナ、 マフィアの運転手として働く怪しげな男 ニコライ。 登場人物たちの運命が複雑に絡み合っていく中で、ロンドンの中のロシア文化を美しく魅せ 多文化的なロンドンの側面も描き出しているのも面白い所であります。 マフィアの運転手から組織の一員に抜擢されるどこか陰のある男ニコライは、ヴィゴ・モーテンセン。 ダークスーツでサングラス、髪もオールバックにビシッときめて、 話し方、歩き方、タバコの吸い方までもが観たことないロシアン・マフィア版ヴィゴ・モーテンセンでありました。 アンナや娼婦に見せる優しさ、どこかもの哀しく見える表情も痺れるほどカッコいいのであります。 鍛え上げられた肉体を惜しげもなくさらし、これ以上は無い無防備な姿で大男を相手に戦う 公衆浴場の格闘シーンは必見の価値ありの凄さ。 はまり役であります。 小さな命のために危険世界に踏み込んでいく助産師アンナは、『マルホランド・ドライブ』のナオミ・ワッツ。 ロシア人でありながらロンドンで生まれ育った彼女は、ロシアに対して否定的であるのでありますが、 ニコライと出会い徐々に自らのルーツを引き出され、互いに通じるものを感じていくようになる そんな切ない描写にナオミ・ワッツの美しさと繊細な演技が光ります。 ロシアン・マフィアのボスの息子キリル役には、『クリムゾン・リバー』のヴァンサン・カッセル。 父親に認められたい、偉大すぎる父親を超えられない屈折した思いを抱える 相変わらずのチンピラぶりがめちゃくちゃ似合うのは彼ならではであります。 その父親でマフィアのボスのセミオンには、『天使と悪魔』のアーミン・ミューラー=スタール。 優しい表の顔に残忍な面を隠した徹底したマフィアのボスぶりが恐ろしいのであります。 そんな二面性のある人物を圧倒的な存在感で演じきっていてお見事であります。 デヴィッド・クローネンバーグ監督の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』では 目を逸らしたくなるほどのシーンも多々有り、忘れられない作品となってますが、 今回は、銃を使わず、 スパッといくナイフの鋭さとドクドク流れ落ちる血などで また違った形のバイオレンスを見せてくれました。 ロシアン・マフィアの体中に彫られた繊細なタトゥーの意味などの内部事情や、 売春目的の人身売買という意味を持つらしいタイトルの通りに、 夢や希望に溢れた若き女性たちを食い物にした許せない犯罪行為の衝撃の真実を リアルなまでに描写しているのも緊張感が伝わり目が放せませんでした。 ダークなロンドンの裏社会に、美しく映えるロシアの文化、雰囲気たっぷりでかっこいい音楽、 説明不足にならない程度で想像力をかきたてる人物描写などを100分間に収めた演出もお見事であります。 死んだ少女が日記に残した「死ぬ前から土に埋もれていた」という言葉の意味が 哀しく響く静かなラストも秀逸で文句の付けようがありません。 そんなこんなで、 この手のハードボイルドものが大好物な僕にとっては大満足の一本でありました。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[映画 ア行] カテゴリの最新記事
|