tartaros  ―タルタロス―

2008/05/12(月)21:49

写メ撮っておくべきだった

与太話(102)

学校の非常階段にエクステが一房(この数え方で合ってるのか?)だけ落ちていた。 空き地とか道端とかに、軍手が片方だけ落ちているのはよく見かける。 それはどういう訳かは解らないが、往々にして一種の哀愁を帯びた光景なのだ。 しかし、薄暗い非常階段に(たとえ人工の代物と理解していても)一束の毛の塊が落ちているという状況は、軍手のそれとは違って非常に不気味な印象を受ける。 軍手は「外部から身に付ける」物だが、毛は「もともと内部に在った」物。 それと見てすぐに明らかな作り物と理解できる外見をし、誰でも簡単に入手して身に付ける事が出来る軍手と違い、一見すると本物の髪の毛のなれの果てかと思ってしまうエクステは、その場所にいつか誰かが確かに存在した証、「○○」という人間がその場所に居た痕跡として認識してしまうのかもしれない。 本来的にはその人間に固有の物体である髪の毛が、パブリックなスペースである学校の非常階段にいつまでも鎮座し続けている。 「公」の場に誰とも判らない「個」の残滓がいつまでも残存し続けるというのは、ただそれだけで気持ちの悪い事柄であるのだろうか。 加えて、「個」の空間に他種の「個」の残滓が現れるのは、「公」に「個」が出現する以上の恐怖を感じざるを得ないとも思う。

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