tartaros  ―タルタロス―

2008/06/19(木)22:13

期待が大きかった分、外れだった場合の揺り戻しもまた大きい

読書(160)

来楽零「Xトーク」(電撃文庫)読了。 ――――――― 俺がライトノベルの全てを知っている訳ではないのであんまり大きな事は言えないんだが、どうもラノベにおける「ホラー」というジャンルは、ホラーを基軸にしながらもどこかしらにファンタジックだったりアクションが有ったりという、読者に「受け」そうな要素の多い印象がある。 例えば甲田学人「missing」だが、あれはかなりの部分でホラーとしての責務を果たしているとは思うけれど、それでもやっぱりどこかにファンタジーのような感じがして純然たるホラーとは違う気もする(“幻想”という共通項で結びついているなら問題ない気もするけどさ)。 うん……前言撤回。 「Missing」の方が遥かに面白い。 正直、「Xトーク」は期待外れだった。 題材は面白いんだけど、肝心の内容が…。 「クックロビンの埋葬」とか、せっかく「死体と同居する」という特異なシチュエーションであるにも関わらず、結末はちょい拍子抜け。 ところで、電撃文庫のホラーにおいては、甲田学人「Missing」という偉大なる先達が存在している訳だが、著者の豊富なオカルト及び民俗学の知識に裏打ちされた幻想ホラーといった趣だった「Missing」に比べると、来楽零「Xトーク」は良く言えば“オーソドックス”、悪く言えば“ありきたり”とでも呼ぶべき完成度に終始している感がある。 (否、これはよく考えたらストーリーの方向性の違いとでも解釈すべきなのだろうか。だとしたらこんな感想は的外れもいい所だ)。 それと、本来ならこういった点は作者の個性という事で云々すべきではないのかもしれないけど、文体も妙にあっさりしていて恐怖感が殆ど煽られない。 これは完全に俺の主観的な意見だが、もっと、こう、暗闇の中で無数の蟲が爪先から頭までぞわぞわと這い上って来るかのような、そんなジワリジワリとにじり寄って来るような、逃れ難い恐怖を感じてみたかった。 ラノベにおけるホラーの書き手全員に、甲田学人並の知識だとかレベルの高さを要求しようとはさすがに思わないけれども、「Xトーク」に関しては、もうちょっと捻りのある話が読んでみたかった気がする。 せっかくラノベ界隈では貴重な(?)純然たるホラー作品なんだから。 (この文章はブクログの感想に加筆したものです)

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