811649 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

tartaros  ―タルタロス―

tartaros  ―タルタロス―

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

こうず2608

こうず2608

Favorite Blog

雨で New! せいやんせいやんさん

絵を描ける人、憧れ… saruninkoさん

Japanisch Ahnener… バルザーヤさん
DESTINY アルト・アイゼンさん
あの三島由紀夫・大… sh3042さん

Comments

正体は狐ですなぁ~w@ Re:「仏陀再誕」を観てきたぞ(^q^)/ (※ネタバレ全開)(11/25) 個人的には荒井よりも覚念のほうがヤバイ…
村石太マン@ 宗教研究会(名前検討中 哲学的 心理学的 文章ですね。文系 理…
村石太マン@ 宗教研究会(名前検討中 村石太仮面 で 検索中です 一般の新聞は…
村石太仮面@ アルジェリアと フランス~ フランスの核ミサイル フランス カルト で 検索中です なぜ …
村石太仮面@ アルジェリアと フランス~ フランスの核ミサイル フランス カルト で 検索中です なぜ …

Freepage List

2009.05.03
XML
カテゴリ:読書
 何だかんだでデュルケーム「自殺論」(宮島喬訳:中公文庫)を読み終わってしまった。久々に読み応えのある学術書(社会学)だったと思う。読んでて思ったのは、ただ古い文献と睨めっこしているだけではなく、その時々の社会状況を統計等から類推する必要が多分にある学問だということ。これはマックス・ウェーバー「プロテスタンティズムと資本主義の精神」とはまた違った方向性であるようにも思う。読んだのが去年の秋なのでいくぶん頭の中から内容が薄れているのだが、前者が現代社会(著者にとっての)の状況を統計等から考えた論考だとすると、後者が歴史という時間的経過の中での社会的システムの移り変わりを主眼に置いているものという印象を受ける。
 ともあれ、専門的に勉強している訳ではないのであまり深く突っ込んだことは言えない。






 どんな生物も、その欲求が十分に手段と適合していないかぎり幸福ではありえないし、また生きることもできない。それに反して、もしも欲求が、集団の上で許容されるもの以上を求めたり、あるいはたんにその集団とかかわりのないものを求めたりすれば、欲求は、たえず裏切られ、苦痛なしには機能しえないであろう。ところで、つねにかならず苦痛をともなう行動は、くりかえし行われないのがふつうである。十分に満たされない傾向は委縮するが、生きるという傾向は他の全ての傾向の総体であるから、もし他の諸傾向が弱まれば、生きるという傾向も弱まらざるをえない。

(第二編 社会的原因と社会的タイプ 第五章 アノミー的自殺 p300)


 この辺を読んで、ゲーテの戯曲「ファウスト」を思い出した。
 
 あらゆる学問を極め、人々から称賛の声も鳴り止まぬ八宗兼学の老学者ファウスト。だが彼はどんなに研究を重ねても、いまだ求める“真理”に到達できずに苦悩していた。ある時、神と「ファウストを堕落させ得るや否や」という賭けをした悪魔メフィストフェレスが現れ、「時よ留まれ、お前は美しい」と言えるだけの体験ができたら、その魂は悪魔のものになるという契約を交わす。
 魔女の薬で若返り、悪魔との旅路で快楽の限りを尽くすファウストだが、その心は一向に満たされることが無い。
 結局、彼の心は民衆の為の公共事業に力を尽くす事でようやく満たされ、神の恩寵を受けて天の国に入る。


 悪魔と共に個人的快楽を味わうも満足できぬファウストは、そのある意味で欲求と呼ぶべき心情が裏切られ続ける。結局のところ、社会に寄り添うことで彼の精神は最終的満足を得た訳だ。叶わぬ欲求の中でもなお生を慎重に選び続けていたのはメフィストフェレスとの契約ゆえのことであったのだろうか。そもそも真理に到達できなかった彼は、強い欲求不満状態にあったはずだ。悪魔との旅の中でもそれは持続していたのだろうが(グレートヘンとは死別しちゃったしねえ)、最後の最後で社会における自身の役目というものを自覚した時、もはや彼の欲求は個人性の欲求を超えた社会性の強い欲求へと変性していたのかもしれない。つまり、もう悪魔と結ぶことで選ばれた生ではなく、ある使命を遂行しようとする積極的な生だったのだと思う。

 まあ、神の正当性を示して終わるお話なので最終的には神様の御意志は全て正しいという結論に帰着するのかもしれませんけど。

 しかし作中に登場する「人は努力する限り迷うものだ」という言葉(『天上の序曲』)が示すとおり、個人的欲求を苦悩の果てに社会的欲求にまで昇華させるという結論を導き出したファウストはやはり高潔な人と言えるかもしれない。











gedou.jpg








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.05.03 22:41:09
コメント(0) | コメントを書く
[読書] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.