tartaros  ―タルタロス―

2009/11/25(水)23:54

「仏陀再誕」を観てきたぞ(^q^)/ (※ネタバレ全開)

映画(12)

 観て来ましたよ。「仏陀再誕」。  笑いを押さえるのが困難な映画だった。  とりあえず、劇場でエンディングが始まった瞬間に速攻で帰った親子連れは、信者じゃなかったんだろうなって思った。  詳しいストーリーに関しては、散々あっちこっちでレビューされているのでここでは詳しく述べない。  しかしながら、中盤までは、「唯物論者が霊界で裁判にかけられて地獄に落ちる」などいつも通りの幸福の科学である。再誕した仏陀である聖☆おにいさん空野太陽も登場し、少しずつ盛り上がりを見せてくる。  少なくとも、ストーリー的に破綻をきたしているという訳ではない。    が、敵役である荒井東作なるキャラクターの陰謀が明らかになってから一気に雲行きが怪しくなって来る。  荒井は全世界に信徒を持つ巨大宗教組織「操念会」のトップ。  この世は弱肉強食、自分に従う者だけが生き残れるという。マキャヴェリストに近いと言ったらいいだろうか。大川総裁の絶対的正しさを際立たせるためとはいえ、あまりにも解りやすい「悪役」像ですなあ。  荒井は主人公の弟に悪霊を取り憑かせて死病を患わせる。  しかし大川総裁……もとい空野太陽先生のお力によって悪霊は退散し、弟は助かった。  ここまで観てて思ったが、荒井と空野って方向性が違うだけで、胡散臭さはどっこいどっこいではないのか?   なお主人公の仲間になるキャラクターとして一人の女優さん(CV:三石琴乃)が登場するのだが、彼女は空野が主催する団体の信者だった。    彼女が空野の語る仏法真理に触れて涙する場面は、危ない宗教の怖ろしさをまざまざと見せつけてくれる。本作屈指の名場面である。  そして初めは宗教に懐疑的だった主人公も、空野に感化されていつの間にか信者に。なん…だと…。  どうでもいいが、この映画は空野太陽が登場するとほとんど例外なく仏法についての講釈が始まるため、途端に説教臭くなる。  束の間の平和。  主人公とその彼氏が夏祭りを楽しんでいると、  突如として夜空に無数のUFOが出現!   ビームを放って街を爆撃し始めるという突拍子もない展開に。巨大なビルが屋上にビームを浴びて、最上階から順番に爆発していくという場面は「インデペンデンス・デイ」のオマージュだろうか?  実は、このUFOを操っていたのは荒井だ。  日本国民を宗教によって支配せんと目論む彼は、念力を発してUFOの幻を見せ、それを自分が撃退したように喧伝する事で人々の信仰を得ようと企んだのである。  が、仏陀の加護を得た主人公が不思議なパワーを発するとUFOは消滅してしまう。荒井のマッチポンプ作戦はあっさり瓦解。  作戦が失敗した荒井は、テレビ各局をジャック。  今度は念力で巨大津波の幻を見せ、日本中に「私を信じた者だけが助かる!」と放送する。恐怖に駆られて信心し始める国民の皆さん。   が、またもや主人公と仏陀の力で幻は消え去る。  荒井の目論見は再び失敗した。  度重なる失敗に、操念会の幹部も次々と荒井を見限った。  教団本部で屈辱にのたうつ彼の前に、怪しげな囁きが……。  しばし行方をくらましていた荒井は主人公を誘拐し、5万の観客で埋め尽くされた東京ドームへと空中浮揚する謎のメカに乗って出現。  このメカの原理に付いて、劇中では全く説明されない。  荒井の元には主人公が!  二度とも荒井の陰謀を破った彼女は、マスコミが取り上げたことで謎の美少女として国民のカリスマとなっていた。彼女に「荒井こそ再誕した仏陀」と宣言させることで、今度こそ野望を成就させようともくろむ荒井。  東京ドームの各所に爆弾を仕掛けた、観客の命が押しければ荒井こそが真の仏陀と言え!    荒井はそんな要求を突き付ける……って。えっ? もしかして一人で爆弾を仕掛けたのか?  それとも逃げ出したのは幹部だけで、下部構成員はまだ彼に付き従っていたというのか? その辺が少し不明瞭。  しかし、主人公は「空野先生こそが再誕した仏陀!」と敢然と言い放つ。    おめでとう!   主人公 は 『女子高生』 から 『信者』 に 進化 した!  信仰は人命よりも尊いのだッ!  激怒した荒井、彼女をメカ上から突き落とす。  彼氏が受け止めてことなきを得るが……。  と、そこへ我らが空野太陽先生のご登場である!  ついに勃発する聖☆おにいさん教祖同士の大決戦。  荒井が黒いオーラを放つと、空野は黄金に輝く剣(どこから取り出したのか)を振るって攻撃を次々と切り伏せる。CGをフルに使った大迫力のシーンである。いったいコレは何の映画なんだ?   また上述の通り、空野が登場したのでまたもや説教が始まった。  次第に劣勢なる荒井。  すると、彼の体内から悪魔『覚念』が出現する。  荒井は、この悪魔に操られていたのだ!   とりあえず、デザイン的には「陰陽座の瞬火あたりに僧衣を着せて、思いっきり目つき悪くした」感じだ。ちなみに、中の人は三木眞一郎である。  なおも戦いは続き、覚念は空野によって封印された。  空野は悪魔を断罪するも、荒井本人は「そなたもまた仏の子」と言って赦した。  全てが落着すると、何故かCGで描かれた天使が大量に出現。  空野はついに自らが再誕した仏陀であることを宣言するのであった。  仏法真理を説く映画で天使が登場するというのも解せないが、もっと不可解なのは、この場面のCGがとんでもなく適当なことだと思う。喩えるなら「一昔前のゲーム」。   ついさっきまであんなにバンバン派手なCG使ってたのに、何があったんだろう。  そんなこんなでエンディングだ。  EDテーマは韓国人歌手が歌う「悟りにチャレンジ!」。  曲名の時点で十分過ぎるほどアレである。  案の定、宗教色全開の歌詞なのだが、曲自体はまともなのでそれなりに聴けてしまうのが怖ろしい……。    うーん……何て言うかねえ。    再誕の仏陀=大川総裁の正しさを主張したかったのはよく解る。  だから、極端なまでの勧善懲悪と、敵にも慈悲をかける仏陀の姿が描写されもしたんだと思う。    何かの正しさを見せるためには、勧善懲悪の思考によって物語を彩ることが必要ではあると思うのだけど、この映画では悪役である操念会は無論、唯物論者まで(ささやかながら)攻撃の対象となっている。閉じられた世界観における価値の正しさを構成員が確認するには、外部の敵を徹底的に叩き排除する事が重要だ。  カルト組織の特徴として、「外部の者に対して異常に排他的」という部分が挙げられるという。  本作「仏陀再誕」は、仏法真理だの正義だのと美辞麗句を並べ立てた勧善懲悪ストーリーだが、よくよく観察すると他に対して非常に攻撃的な点が見出せそうでは、ある。  そして、彼らが追求したいのは「幸福の科学の正しさ」「大川総裁の正しさ」である。  少なくとも、外部のものを敵と見なして徹底的に叩き潰そうとするこの映画の思想が信者ではない者への共感を呼びはしないだろうし、ただでさえ現代日本で異物扱いされ、そのうえ寛容さを持たない宗教が永劫の信頼を得ることなど到底不可能だと言わざるを得ない。  だから幸福実現党は一議席も取れなかったんだ。  そんなだからこの映画。  今は野党に甘んじているものの、連立与党として国政に影響を及ぼすまでになった公明党の支持基盤・創価学会の映画でさえそうなんだから、この先ン十年も、ずーっとネタ映画扱いされるんだろうな。  余談。  今回、俺が足を運んだ映画館へ行く道の途中に、リアル幸福の科学の事務所があった。  行きはともかくとして、帰りは相当にヤバかったです。  ずっとニヤニヤしっぱなしなんですものwwwww

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